ダンジョン攻略 中編
ダンジョンへ潜って2日目。
昨日はトラブルもあったけれど何とか40階層の休息所へとたどり着きそこで一晩を明かした。
「でも流石は上級者パーティだよね。戦い方を調整してからは一度も呪いを受けてないんだから」
「そうだな。近くで見ていたが全員怯えることなくしっかりと対策を立てていた。あの判断力は本当に流石だとしかいいようがない」
「今日からは更に階層が深くなりますから注意が必要ですね」
今日も私達は前線から一歩引いた立ち位置でついて行く。
昨日の時点で前衛の受け持ちは一周したので今日はまた1班が先頭を進んでいる。
後ろから見ている限りじゃガゼンの率いる1班が一番安定感があるように見えるのは、やはり彼の統率力がなせる業なのだろうかと感心してしまう。
「オーレンさん、今日でここ攻略できるかな?」
「どうだろうな……長大型ダンジョンだからそこまで深くはないと思うが。まぁ急いても仕方がない事だしな」
「そっか。……そういえば結局昨日は誰も追いついてこなかったね」
「そうだな。こうなると少し妙だ。実は昨晩の会議でもその事を気にしてる奴がいたが、後ろの事がわからない以上は判断できないからな」
「誰が気にしてたの?」
「ガゼンだ」
「へぇ。意外と細かいんだね」
「まぁな」
枝分かれする道がなく階段まではほぼ一本道、そんな状況でいくらこのパーティが戦力的に優秀だとしてもそこまで差がつくだろうか?
後ろのパーティが何かトラブルに巻き込まれていないといいけれど……。
「さくら……あまり考えないようにしてください」
「あー……言っちゃったね」
「どうした?」
「ううん、なんでもない」
そうこう言っている間に1班がモンスターと戦闘を開始する。
そういえば今朝オーレンから指示があったけれど、このモンスターを仮称で『呪詛の獣』と呼ぶことになった。
ディザードとは、その昔呪いを振りまいて世界を渡り歩いたという《呪詛吐く呪いの影》の名前だそうだ。
一説にはダンジョンから溢れたモンスターだとも呪いの魔法に手を出して変異してしまった人間だとも色々と言われているけど詳しくはわからないらしい。
何もそんな不穏な名前を付けなくてもいいのにね。
「よし! 進むぞ!」
何事もなくディザードを倒し終えるとパーティはまた階下を目指して進む。
「怪我した人いませんかー? 喉は乾いてない? お腹減ってませんかー?」
出発してから3時間、私達は今51階層へと続く階段の前に到着していた。
あれからも多くのディザードと戦ったけれど、何の問題もなく先に進むことができた。
流石に浅い階層よりも敵の数が増えたからか全員顔に疲れの色が見え隠れしているけど、取りあえず甘い差し入れを配って疲労を軽減しておく。
「なんだこれ、うめぇ……!」
「甘いようなさっぱりしてるような不思議な味だな」
「おいおい商人、これはなんだ?」
「それは私が趣味で作ってるミックスジュースっていうジュースですよ。キッツ、アメロン、ダリアの実、バンゴの乳なんかを混ぜて作ってるんです。うちのお店で売ってるんで良かったら買いに来てね!」
ここでも人気、さくら商店のミックスジュース。
さくら商店で1杯50リムで絶賛販売中! なんて宣伝してみたり。
「よし、そろそろ先に進むぞ。敵がポップしても面倒だからな! 隊列入れ替え! 準備急げ!」
1班と2班が入れ替わる準備をしている。
ふと壁際の隅っこにガゼンの姿が見えた。
どうやらミックスジュースが気に入ったらしく飲み足りなさそうに何度も瓶を傾けている。
私と視線が合うとバツが悪そうに目を逸らし後方へと下がっていく。
「ふふ、熊みたい」
「何か言いましたか?」
「なーんでも」
ガゼンにはまた後でミックスジュースを差し入れしてあげよう。
「よし! 準備はいいか!? 51階層からはどんなダンジョンでも敵の強さが数段あがる事はわかっているな! 進むぞ!」
索敵班と前衛を務める2班が階段を少しずつ降りていく。
長大型ダンジョンとはいっても階段自体は10人程が入るといっぱいになってしまう。
そこで索敵に長けた魔法使いと警護の戦士が先頭になり、少し離れて前衛班が降っていくような形になっている。
「待って!」
階段の先から索敵班の女性がストップをかける。
何かを感じ取ったのだろう、声に緊張した雰囲気が混ざっている。
「……階下、大きな反応がありますね」
「アリス、わかるの?」
「はい。これだけ大きな魔力反応は見逃せません。ディザードの凡そ10倍……かなりの魔力量です」
「10倍……って凄いの?」
「つまりディザードの10倍手ごわいと考えられます」
「あ、わかった。つまりヤバイって事ね」
「その通りです」
「どうやら51階層が最終階層のようだ。索敵班、2班を階段で待機させてくれ。各班長は集合、作戦会議を開く」
オーレン達が話し合いを始める。
階層主の討伐に関する事だろうけど、姿も見ずにできる話し合いには限りがあると思う。
ただそれでも行動をある程度選択し臨機応変に動けるのが彼ら上級冒険者なのだろう。
ここまで来るのにアイテムは殆どと言っていいほど使っていないから、本気で戦うなら今が一番だというのもあるだろうけどね。
「決まったな。それじゃあ作戦を伝える。先行部隊の2班が敵の注意を引く。その隙に1班、3班が展開、スイッチする形で2班の援護に入る。2班には上位職の盾騎士が数名いるから問題なく耐えられるだろう。さくら達商店組は遊撃隊を頼めるか? アイテムを配りながらヤバそうなところへ手を貸してやってくれ」
「わかった」
「よし! 最終決戦だ! 各自油断するなよ! 生きて栄誉を!」
その場にいた全員が力強く頷く。
私達は全員が突入したタイミングで後ろから状況を確認して戦う事にする。
「敵がどんなスキルを使うかわからないからね! ちゃんと状況を確認しながら動こう! アークはアリスの護衛を、私は状況を見て走り回るから」
「わかりました。さくら、どうか怪我をしないように……」
「アリスの事は任せてくれ。さくらは他のメンバーを頼む」
「うん、お願いねアーク」
よし、それじゃあ……作戦開始だ!




