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勇者「そろそろ出勤か」  作者: 小鳥遊 佑鷹


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勇者「そろそろ出勤か」3章7話

朝から空はどんよりと曇っていた


森の木々は風に揺れ、小鳥の鳴き声もどこか遠い


風が少し冷たくなってきた


リリアは空を見上げる


「今日は雨になりそうですね」


骸骨戦士は一度だけ空を見た


返事はない


二人はそのまま山道を歩き続けた


雲が濃くなって、色も黒へと変わっていく


しばらくすると、小さな雨粒が頬へ落ちる


ポツ……ポツ……


やがて雨は勢いを増し、木々を激しく叩き始めた


「わっ!」


あっという間にリリアの全身が濡れていく


骸骨戦士は辺りを見回し、小さな洞窟を見つけた


静かに中に入っていった


リリアも慌てて続いた


洞窟の中は思ったより広かった


雨音だけが入口から響いている


骸骨戦士は濡れた枝を避け、乾いた薪を拾い集める


火打石を打つ


何度か火花が散り、小さな炎が生まれた


焚き火へ手をかざしても、リリアの指先の震えはなかなか止まらなかった


「ふぅ、あったかい……」


服の裾を軽く絞る


ぽたぽたと水滴が落ちた


しばらくすると笑顔を見せる


「本当に何でもできますね」


返事はない


リリアは少し笑った


「喋らないのも、もう慣れちゃいました」


焚き火だけが静かに揺れていた


外では雨が降り続いている


夕方になっても止む気配はない


簡単な食事を終えると、リリアは壁にもたれた


「今日はここで泊まりになりそうですね」


骸骨戦士は小さく頷いた


夜


焚き火だけが洞窟を照らしている


リリアが小さく咳をした


「……こほっ」


骸骨戦士は視線だけ向ける


リリアは笑ってみせた


「なんでもないですよ」


そう言って目を閉じた


しばらくして


また咳が聞こえる


今度は少し苦しそうだった


骸骨戦士は薪を一本、焚き火へ入れる


炎が少し大きくなる


夜は静かに更けていった


どれぐらい経っただろうか


時折リリアは苦しそうに寝返りを打つ


小さく肩が震えていた


骸骨戦士は荷物の中から毛布を取り出す


静かに掛ける


少しして


毛布がずれている


また掛け直す


焚き火を見る


薪を一本足す


炎が揺れる


リリアを見る


苦しそうだった


もう一度毛布を整える


……それしか出来なかった


雨は止まない


時間だけが過ぎていく


夜中


リリアがゆっくりと目を開けた


ぼんやりと焚き火を見る


その向こうには骸骨戦士が座っていた


ずっと同じ場所で


リリアは焚き火の向こうに座る骸骨戦士を見つけると、小さく笑った


「……寝てないんですか」


骸骨戦士は何も言わない


毛布の端を少しだけ直す


リリアは安心したように目を閉じた


洞窟には再び雨音だけが残る


朝


雨は止んでいた


森には霧が立ち込めている


リリアは目を覚まさない


肩へ静かに手を添えるが、反応はなかった


呼吸は浅く、額には熱がこもっている


とても自分の足で歩ける状態ではなかった


骸骨戦士はしばらく立ち尽くす


何をすればいいのか分からない


それでも、このままではいけないことだけは分かった


静かに荷物をまとめる


毛布ごとリリアを背負った


軽かった


昨日まで笑いながら歩いていたとは思えないほどに


洞窟を出る


朝日が雲の隙間から森を照らし始める


骸骨戦士は一度だけ空を見上げた


そして迷うことなく歩き出す


一刻も早く、人のいる場所へ辿り着くために

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