九十一話 綻びと残された仲間
——エリックが置いていった仲間達。
「どういうことなの!ムラホシ!」
リサはムラホシをグワングワン揺さぶって尋問する。
「政府のことだからいえな——」
「言ってよ!!」
リサは涙目で怒鳴る。
「あんなエリック見たことないよ……心配だよ……。」
(女の子泣かせるとかほんとどうしようもない兄さんだな……。)
ムラホシはため息をついて言葉を続ける。
「兄さんは今、政府に言われてコウという男の暗殺任務に出ている。」
「……暗殺、FREEの隊員は政府の命令を受けないのじゃないのか?」
ルンタはゴツゴツとした岩場に安座する。
——さながら修行僧である。
「基本はな、だけどこれは……いわば緊急命令……なんだけど……。」
ムラホシはバツが悪そうに言葉を濁す。
「ちょっと、調べてみたんだけど政府の言う大量虐殺とか悪魔を使って暴れてる……って情報がなくて……。」
ムラホシは少し言葉を選ぶ。
「これは完全俺の考察だけど……政府はここ数ヶ月で名声を上げたコウさんを危惧しているだけだと思う……。」
——ザァア
一瞬の静寂に風が吹き抜ける。
「ハァアアア!!!」
リサが急にブチギレる。
「政府むっかつく!!ほら行くよ!」
リサは金色の髪を靡かせてエリックの行ってしまった方を向く。
「どこへ行く?」
ルンタは岩場から降りて聞く。
「あったり前でしょ?政府に騙されたお馬鹿さんを取り戻しにね。ルンタ、迷うんじゃないわよ。」
「……善処する。」
『迷ったときはオレッチが帰します……。』
クサナギはため息を吐いた。
——一人で先に行ってしまっても一人になるわけじゃない。
——それがエリックの財産だ
——別の場所
「うぅん〜雑魚ばかりでつまらないねェ〜。」
ナタールは歩きながら体を伸ばす。
「神星護衛団に入るためにこの程度で苦戦しているわけにはいかない。」
サザンは返り血がついた手を持ってきた水で洗う。
——ガチガチ
地面に垂れた水が一瞬で凍りつく。
「今日はァ〜少し機嫌が悪いのかいィ〜話なら聞いてやるよォ〜?」
ナタールはサングラスを少しずらす。
「じゃあ遠慮なく、こんな気色悪い奴と仕事しないといけないことに怒ってる。イケメンが良かった。」
「結構ゥ〜痛いねェ〜。」
ナタールの口振は余裕そうだがサングラスを掛け直す手は震えていた。
「お、丁度いい雑魚が一人走ってるぞ。」
サザンが指差す少年——エリックは猪突猛進で走る。
「ここはァ〜アッシが仕留めとくよォ〜要望通り離れられるしねェ〜。」
「了。私は別を狩ります。」
サザンはさっさと行ってしまった。
(冷たいねェ〜。気遣いってもんはァ〜ないのかいィ〜?)
ナタールは体を煙にしてエリックに近づいていった。
——ハァハァ。
エリックは息を荒くする。
——足を一歩も止めたいない。
「どこだ、コウ……僕がどんな思いで災害の悪魔を倒したと思ってるんだ?」
——あの日の人の叫び
——あの日の虚しさ
——あの日——
「悪魔と人間が共存できる世界なんてないんだよ。どんなに天地が変わっても……。」
「ブツブツ何言ってるんだいィ〜坊やァ〜?一人で行動しちゃっていいのかィ?」
「……。」
エリックはナタールを無視して走り続ける。
「無視はァ〜よくないねェ〜生き残ることにィ〜必死なのかねェ〜?」
「……。」
ナタールのだる絡みにエリックの眉間がピクッと動く。
「そんな険しい顔してさァ〜……ヒーローごっこでも気取ってるのかいィ〜? 痛々しくて見てられないねェ〜」
「……!」
エリックは後ろを振り向く。
「……黙れ、モブが。」
——ズガガガ!
エリックは煙になっているナタールに容赦なく魔法を放つ。
「二度と話しかけるな。」
エリックは地面に転がるナタールをゴミのように見下した。
(な、何ィ〜あの男……アッシのォ〜煙化を貫通してェ〜魔法をぶつけたァ〜?間引く立場なのにィ〜モブ?)
ナタールは恐怖で息が上がる。
(あの目……まさか……!?)
「坊やァ〜名前はァ〜?」
ナタールは過ぎ去る背中に名前を聞く。
「……エリック。」
エリックは振り返らず吐き捨てるように言った。
——試験本部
「今年も質が悪い。今年も合格者“0”か?」
試験官シワワーは資料を扇子代わりに使う。
「本当にそうかな?」
ビターが新しい資料を持って来る。
「……!?英雄エリック!」
試験官イナミがコーヒーカップを落としかける。
「今年の受験者の質は過去最高かもしれん……あ〜ぁそうなるとめんどくさいよなぁ〜認証とかさぁ〜0の方が仕事ゼロで給料貰えるし——」
ビターはなりふり構わず本音を吐き散らかす。
「……ビター君。その気持ちはわかるけど、合格を願うのが私たちの使命じゃないの?」
イナミはビターの頬を萌え袖でペシっと叩く。
「……おい、結界が壊れてるぞ?」
シワワーはモニターに映る景色がそのまま破り取られたような一点を指し示す。
ビターはあくびをしながらモニターを見つめる。
「いい、いい。今すぐ直さなくて。」
「でも、この結界滅多に——」
「いいの、イナミちゃん。この結界直すのに30分かかるしここから会場の端まで行くのめんどくさいし。」
ビターは資料をめくりながら言う。
「……まぁそうね。こんな試験に魔族が来ても対してメリットないし……。」
イナミは青のマニキュアを塗り出した。
——この判断が後に人生を大きく狂わせるとはまだビター達は知らない。
「次回……。」
「おい!何勝手に終わらせようとしてんだ!ビター!」
「えぇ〜早く終わった方がいいじゃん?ほら作者だって長引いていいことはないよ?」
「グムム。確かにビターの言う通り——だが!」
「一個空きがあるとA型の血が騒ぐんだよォオオオ!!」
「……次回(ドン引き)」
「魔族革命軍と捨て駒」
「ねぇせめて一緒にタイトル言ってよ。」
「やだ、サボりたい。」




