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八十九話 幼き牙と現在地


――ザッザッ!


ジュラルは必死に背後の怪物から逃げる。


「食べはしないがおもちゃにはなってもらうぞ!ヌララララ!!」


√(ルート)は蛇のように体をくねらせてジュラルを追う。


(なんで、ママとパパは居眠りしたままなの?こんな怪物におそわれてるのに……。)


ジュラルは無知の怒りを抱く。


ジュラルは細い路地に入る……。


「邪魔だなこの建物。」


――除法(ディヴィジョン)


――ズドドド!!


建物が一斉に真っ二つに割れ、路地一帯が更地へと変わる。


「きれいになった。クソ。このガキなかなかすばしっこいな。」


ジュラルは行き止まりにぶつかる。


「あ……。」


そこにはジュラルよりも少し幼い子供たちが体を寄せ合って身を隠していた。


「ヌラララ!!ついてるぜぇ!ガキ四人も見つけるなんてなぁ。」


√(ルート)は四本の剣をジュラルたちに向ける。


「震えるのもいまのうちだぜぇ……まずは手足から切り落としてそれから……。」


「……。」


ジュラルは体が震えるだけで動くことができない。


(動いてよ……オレの体。あの子たちをどうにかしなきゃ……。)


(でもどうやって?)


ジュラルは立ち尽くす。


後ろの子供たちはもう自分の運命を受け入れていた顔をしていた。


「ヌラララ!!情けねぇなぁ?後ろのガキは次の人生に期待してるらしいぜ?お前も……。」


「だまれ。」


ジュラルの体は誰かに操られたように自然に動いた。


「あ?」


「ママから”幸せになって”って言われた。」


「そうか、知ったこっちゃねぇなぁ。」


√(ルート)は興味のなさそうに言う。


ジュラルは赤い液体が滴る拳を握る。


「オレは、”幸せ”ってのがまだわからない……だからこれから見つけるんだよ!!!」


ジュラルは声の限り叫ぶ。


「この子たちだって同じだ!まだ何も知らない! これから幸せを見つけるんだ!お前に……その邪魔はさせねぇ!!」


二人の間に冷たい風が吹く。


――そして


「ヌラララ!!待て待て。ヌラララ!!こんなガキ初めて見たぜぇ!!」


√(ルート)は腹を抱えて笑う。


そしてジュラルののど元に剣先を付ける。


「よくも大口叩いてくれたな?ぶち殺すぞぉ?」


√(ルート)は一瞬で剣を振った。


ジュラルは生存本能で四本の剣をギリギリでかわした。


「よくよけたな。まぁ一本だけだけどな。」


√(ルート)はジュラルが避けた先に剣を振る。


避けられない……。



——ジャァ!!


√(ルート)が振った剣が頭上で止まる。


(……?)


ジュラルは何が起きているかわからない。


(なるほど……魔力で中和したか……。)


√(ルート)は迷わず足を狙う。


ジュラルはすかさず剣の側面に乗って大きくジャンプする。


(……!?ガキの身体能力じゃない……!?)


√(ルート)は初めて“ガキ”に間合いを詰められた。


「なんかわかんねぇけど!イケメンパンチ!」


——ドン!


ジュラルのパンチは綺麗に√(ルート)の顔面にヒットする。


ジュラルは前につんのめりながらも着地する。


「ヌラ……ヌララララ!!せっかく遊んでやってたよなよぉ。もう、いいわ。」


——微分(ディファレンシャル)


√(ルート)が四本の剣を交差する。


——ドドドド!


√(ルート)が振り下ろすと周りの街並みが一瞬で細切れになる。


それはどんどんジュラル達に迫る。


ジュラルは何かを決意して一歩も動けない子供達の前に立つ。


「切るなら俺にしろ。お前らは……」


ジュラルは子供達に向けてニッと笑う。


「幸せって何か見つけてきて。」


——ズザザ……ガギギ!


ジュラルに痛みが来ない……。


恐る恐る目を開けると白髪の男が防御魔法を展開している。


「……バカだな……。邪魔だからさっさと逃げてくれない?」


白髪の男は冷たく言い放つ。


「気を使ってる余裕なんてないんだよ。」


「ヌララ……誰だお前?」


√(ルート)は剣を構えなおして言う。


「……雑魚に名乗る名はねぇが……特別に教えてやる――エリックだ。」


エリックは√(ルート)を取り囲むように、無数の魔法陣を展開する。


(ヌラ……ご丁寧に攻撃位置を見せてくれるのか……。)


「ねぇ……見てないでさっさと逃げてよ?まとめて殺すよ?」


エリックはジュラルをにらみつける。


ジュラルは慌てて年下の子たちを連れてその場を逃げる。


「一般公用魔法(マサーシュ)」


――グアアアア!!!


去っていく背中から√(ルート)の断末魔が聞こえる。


「あ、そうだ……。どうせ孤児でしょ?魔法陣展開しとくから真っすぐ進んで。」


ジュラルは一瞬だけ振り返る。


エリックは、もうこちらを見ていなかった。


――数十年後


「ジェット、昔からそうだな。」


ジュラルは拳を握る。


「あ?」


「いつもお前はずっとオレを異物のように見る。」


ジェットの眉間がピクッと動く。


「だからお前は昔から嫌いだ。幸せが何なのかもわかんなくなってくる。」


ジュラルはニッと笑う。


「白黒つけようぜ。どっちの夢を壊すか。」


――ドッ!!


拳を握る音が、静寂を打ち砕いた。


あの日、幸せを知らなかった少年は。


今、自分の夢を守るために――牙を剥く。


――幼き牙は、もう折れない。


「ここのネタがねぇ(;^_^A」


「じゃあ今日はこのジュラルとエリックの雑談としましょう。」


「え?こんなことあったけ?」


「エリックさん!?」


「いやぁあの闇落ち期のこと一切覚えてなくて……。まじか”ねぇ……見てないでさっさと逃げてよ?まとめて殺すよ?”とか六歳に言ってたの……?女子受け――」


「なんでこんなに下心満載なの?昔の方がかっこよかった説」


「次回……」


「「「「ラッキーマンとコウ」」」


――バイバイ ラッキーマン


※夜も投稿します!もし面白いと思っていただけましたらブックマークや評価をして待っていてください!


(なお、この回とは違って次回はすごく頭悪いです笑)

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