八十七話 ジェットと危険な著書
——試験会場北部
(あ〜ぁ、始まっちゃったよ。一時間も経っちゃったよ。)
コウは投げやりに考える。
(てか、馬に乗って試験に参加してたの、僕だけだよ? 僕だけだよ!?)
コウは白馬にまたがり、その横をアイリたちが目を光らせながら守る。
ついでに皇帝狼も飢えた猛獣のように目を光らせる。
——まさに歩く要塞そのものだ。
「もやし様を護衛するのはこのアイリにお任せください♡」
「は? コウ様をお守りするのは私だし? あんたみたいな“ヤンデレ”はコウ様には暑苦しいの。わかる?」
セリが鼻を鳴らす。
「コウ様には——」
セリはピトッとコウにくっつく。
コウとの距離感はアイリと同じくらいか……それよりも近い。
「これくらいの距離感がいいんだよね、コウ様♡」
「う、うん。そ……そうだネ〜。」
コウは冷や汗をかきながら答える。
(変なこと言ったらここが墓場になるよぉ。)
『俺的には乗っ取って世界征服——』
「あら? セリ、死にたいようね?」
アイリは怖い笑みを浮かべながらセリを見る。
「この試験なら合法で殺害できるし、事故死であなたのようなメスガキを始末するのは、簡単なことよ?」
ウフフ、とアイリはさらっと言うが、結局は殺害予告だ。
「ちょうどいい。あなたを倒して私が副聖騎士団長になってコウ様にもっと愛してもら——」
「ウフフ。よく言ったわね。このクソガキが、ここがあなたの墓場よ。」
セリとアイリはコウの真横で争いを始めた。
(あ、いつものようにじゃれ——)
『もやし、感覚がバグってきてるが立派な殺し合いだぞ……。』
暴力の悪魔はこの光景に慣れつつあることにドン引きする。
——横では殺し合い。
——僕に乗ってるこの男は悪魔をツッコミ役にしてるし……。僕が暴れたら絶対首が飛びそう……。
白馬も白目を剥いて絶望しつつ前に進む。
——試験会場南部
「あんがいちょろいじゃねぇか。受験者もあいつよりはまったく強くない。」
ジュラルは鉄骨を肩に担ぐ。
「油断するな、ラノベの噛ませ犬みたいになるぞ。」
オーロはジュラルの兜の緒を締め直す。
「小生も“ラノベ”とやらを書いてみたいな。」
「どんなの?」
ホイップが興味津々に尋ねる。
「たとえば……【転生しても妹が可愛すぎた件——」
「シスコンは黙っててください。」
興味を失ったホイップは冷たくあしらう。
「まったく、これだからサザメキは……私がお手本を見せてあげよう。【強盗したら手が滑っちゃった件〜一人逝っちゃったけどお金ガッポリだしいいよね〜】はどうだい?」
ホイップはドヤ顔で物騒すぎるタイトルを口にする。
「やめろよ? 出版するなよ?」
「なんで?」
「犯罪の教科書みたいなタイトルだよ!?」
オーロはホイップの危険な著書が売れて高笑いする姿が浮かんでは消した。
「……てか、一応試験中だからな?兜の緒を締め直せ。オレのイケメン度が薄れる。」
ジュラルは鉄骨を担ぎ直した。
——誰もイケメンであることについては触れなかった。
「丁度いい受験者がいるじゃないか。」
高貴な服を着てジュラル達をあからさまに見下す貴族……ぽいパーティが現れる。
「この試験に合格して暴力で——」
「お前の話めんどくせ。俺の最強イケメン道にとっちゃお前はただのモブなんだよ。貴族A」
ジュラルは貴族Aの言葉を遮る。
「モブ?貴族A?貴族のふりをしてるだけだが許るさーん!かかれ!B、C、D!」
(お前も仲間をモブ扱いかよ。)
「サザメキ、オーロ、ホイップ。お前らの出る枠ないな。」
——ドガ!
ジュラルは鉄骨を軽々振り上げ頭に当たるその瞬間だけ重くする。
貴族もどき達はペシャンコになって目を回していた。
——重さの変換
——手に触れたものの重さを自由自在に変える魔法。
鉄骨を軽々持っているのは筋肉ではなくその魔法の力である。
「ったく。モブなんて言って悪かったよ。モブなんていないもんな。この世界に。」
ジュラルはサイン置き手紙をそっと置いて去っていった。
「ったく。アイツには散々言われたなぁ“モブ”ってな……。」
ジュラルは物思いに耽る。
「貴殿らが一回も勝てなかった因縁の相手……。」
「適当なところでくたばってたら承知しないけどな。」
——ゴォォォオオ!!
真後ろからエンジンの音……。
——何か来る!
ジュラルは咄嗟に振り向き迫り来る物体を体で受け止めた。
「久しぶりじゃねぇか?まだ、あの夢追ってるのか?」
ニヤッと笑うのは——因縁の相手……ジェットだ。
「ジェット!何故ここにいる?」
ジュラルは敵意を剥き出しにして問う。
「何故って?俺もな試験を受けにきたんだよ。お前らの夢を壊しにな。」
ジェットは不気味に笑った。
ジェットの後ろからバラバラのスピードで仲間がおってくる。
「お前らぁ少し走れ!」
ジェットが一括すると全力ダッシュでジェットの元に行く。
——一名を除いて。
「俺の夢の踏み台になるお前らに仲間を紹介してやる。」
「ミーの名はマリオ。平坦な土地つまらン」
マリオは……どこかでみたことのあるような帽子を深く被る。
「まじぃ女の子に走らせるとかマジ男としてやばいと思うんだよ。あ、私の名前?佐藤ヒバリ。」
(ヒバリ=サトウ……?苗字持ち貴族か?)
「もう一人は、おい、アゼル!いつになったら来るんだ!」
アゼルは不気味に笑っていた。
ジュラルはジェットの顔を見て苦々しい記憶を思い出した……。
「ジェットだ!1日目の連続投稿見てくれてありがとな!」
「まじ、作者張り切りすぎ。脳内どうなってるの?」
——作者の脳内
「食」「書く」「書く」「書く」「遊ぶ」
「食」「寝る」「寝る」「寝る」「寝る」
「寝る」————「寝る」
「見ない方が幸せだったかも」
「次回」
「「「スペイントと有理化」」」
※明日も連続投稿します!この作品が面白いと思ってくださったらブックマークや評価をして待っていてください!




