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八十四話 原初と旅立ち

※今回は少し長めです(四章最終話なんで……)


——数日前


七冠達に主君から招集がかかった。


「また、招集?最近ホンマに多いなぁ。」


1番最初に招集されたδ(デルタ)はテーブルの上で足を組む。


「さっきまで溜まってたアニメを消化しとってんになぁ。」


「仕方ないだろ?Aøさまに逆らいたいならご自由に。」


Ω(オメガ)はいつの間にかδ(デルタ)の隣に座っていた。


「あんたなぁ?気配が薄すぎるんや。ワイもびっくりしてもうやろ?」


「すまない。」


Ω(オメガ)はコンビニのコーヒを飲む。


「なんでよー!!」


二人が視線を向けるとε(イプシロン)が顔を真っ赤にして席に座っている。


「折角いいところだったのに……。」


「どうせ、天使の拷問だろ?」


Ω(オメガ)はため息をつく。


「そう!で、そのクライマックスで強制召喚よ。まぁAøさまの招集だから大歓迎けど、あんた達ならぶった斬ってたわよ。」


ε(イプシロン)は大剣を背中にしまう。


その間にも続々と七冠が集まる。


「すまないな。お前達。急に招集をかけてしまって。」


Aøは一人の軍服を着た女性を連れて現れる。


七冠達は一斉に膝をつき頭を下げる。


「滅相も御座いません。例えどんな時でも貴方様のご期待に応えられればそれでいいのです!」


β(ベータ)がAøをまっすぐ見る。


「私も同様です。私達が自由に活動できるのも魔王Ø(スラッシュ)様の意思を受け継いだ貴方様のおかげ。」


π(パイ)は珍しく感情が現れる。


「ありがとう。顔を上げてくれ。」


その声と共に一斉に顔を上げ席についた。


「で、Aø様?その女誰や?」


δ(デルタ)は女性を指差す。


「これ!人を指差すな……。すまんのぅ、若造はこれだから……。」


α(アルファ)がδ(デルタ)を睨む。


「紹介が遅れた。彼女はフクオカでの戦いで心が壊れた——」


「カオリです。」


カオリははっきりと口にした。


カオリは笑顔を見せるが、目が死んでいる。


「彼女には七冠候補として控えてもらう。」


「「「……!?」」」


七冠は驚いた。


今まで七冠候補になるためには相当の強さが必要だ。


ぽっとでのカオリがいきなり七冠の候補になることは異常だ。


「ちょっと待つっす!」


γ(ガンマ)が待ったをかける。


「幾らAø様といえどそこら辺の女を魔族にしたところで我等と同格になる訳ない。もう少しお考えになられたらどうですか?」


γ(ガンマ)は口調は丁寧だが、カオリをゴミを見るように見る。


「そうや、γ(ガンマ)の言う通り、もう少し慎重になったらどうや?最近物騒になってきてるで?噂だと世界政府(パンナグラフ)が動き出したやって。」


δ(デルタ)は声を潜めて言う。


「ならちょうどいい。彼女は魔法軍の人間。いわば元政府の犬だ。」


Aøはカオリの肩にそっと手を置く。


「つまり、政府の行動は筒抜けってわけか?」


Ω(オメガ)はカオリを怪しげに見る。


「どうやら……アバシリ聖騎士教会のコウを抹殺しようとしているようですよ。神星護衛団(アストラルナイツ)も動いた……。」


カオリは喋る人形のように抑揚のない声で話す。


「さらに彼女は人を殺せば殺すほど強くなる。」


「どういう意味ですか?ぜひ手合わせを願いたい。」


β(ベータ)は目を輝かせて言う。


「どんだけ戦闘好きなのよあんたは。」


ε(イプシロン)は呆れる。


「私の固有魔法は、故人の思いがこもったものを握っている間……その人を救える。私気づいちゃったんだよね。人って大切な人が目の前で理不尽に奪われてしまった時に初めて救われる。」


カオリは恍惚とした顔を浮かべる。


「Aø様の配下になってもっと人を救うわ。この手で。」


「ホンマに軍の人間か?頭のネジがぶっとびすぎやろ……やけど――」


δ(デルタ)はカオリに手を伸ばす。


「合格や。あんたは立派な魔族や。ほな、祝福や。新たな仲間の誕生や。」


七冠とAøそしてカオリは拳を合わせた。


――カオリはこの日から”人間”を捨てた。


――試験前夜ホッカイドウメルマ家裏手


「ママ?何この石?」


エリック達はメルマに誘われて家の裏にある石碑に向かう。


「ただの石じゃないよ?これはゲンショの石碑。」


メルマは石碑の前に座る。


釣られてエリック達も石碑の前に座る。


——昨日の雨で地面が濡れている


「石碑に何か書いてあるぞ?」


ルンタは石碑の汚れを手で取る。


「どうやら、魔法がなかった時代から魔法がある時代へ移り変わろうとしている時に書かれたんだって!」


メルマは目を輝かせて言う。


「す、すっげぇええ!!」


男のロマンに弱いエリックも目を輝かせる。


「読むよ。」


——人は何故夢を見るのだろう?

世界は七人の賢者によって大きく変わった

夢を知り、夢を恐れ、夢を争う

原初の夢はもう消えただろう


人は何故夢を見るのだろう?

そのうち夢が叶った者、夢を恐れる者が現れる

夢は現実となったのに

ゲンショの願いはもう途絶えただろう


人は悲しみの果てに何を見るのだろう?

やがて世界は統一され今のものは塵となる

しかし、まだ人は夢を見続けられる

そうすれば光の時代は来る

人は何故夢を見るのだろう?


「……。」


リサ達は石碑に書いてあることの意味がわからず頭の中に?が増える。


——この男は違った。


「すっげぇえええ!」


エリックは石碑に今にも飛びかかりそうなくらい興奮していた。


「意味は全然わかんないけど、なんかカッケェ!!」


エリックは石碑の言葉を紙に勢いで記す。


「兄さんは、本当ガキがそのまま大きくなったようだね。ちょっと羨ましいよ。」


ムラホシはエリックの輝きを羨ましがる。


「明日の試験に絶対受かるように石碑に願っておいたから、きっと大丈夫。さぁ支度しな——」


「ムラホシ、どっちが先につけるか勝負だ。」


「おう!!」


「本当ガキだ……。」


リサ達は家の方向に走り去っていくエリック達をただ見つめていた。


——試験当日朝


「うわぁ緊張する……。」


エリックは震える手を抑えながら荷物をまとめる。


「大丈夫よ……?やっぱり心配かも、遊びすぎた〜。」


リサは頭を抱える。


——エリック、ムラホシ、日本政府のナサトだ。


荷物をまとめていたエリックは手を止め、昼寝をしていたムラホシはガバッと起きる。


——ホッカイドウ海外渡航政府認定試験を受けるんだってな?


ナサトは最大限威厳を見せる……が。


(あぁごめんよ。エリック、ムラホシ。今から僕は君達に人殺しをさせる。)


ナサトは罪悪感に押しつぶされそうになっていた。


——そこに“コウ”という男が参加する。


「参加するだけならいいじゃないですか?僕達は試験の準備で忙し——」


——悪魔を使って大量虐殺をした。


「は?」


エリックの目が座る。


——言葉の通りだ、政府からの抹殺命令が出ている。神星護衛団(アストラルナイト)と協力して——


「いや、僕一人で殺します。」


——エリック君?


ナサトは冷や汗をかく。


エリックがこれほどにも騙されやすいとは……。


——あ、えっと〜神星護衛団(アストラルナイト)と……。


「いや、僕が必ず悪は断ちます。」


ナサトはエリックの覇気に圧倒されオロオロとする。


「政府なんてどうでもいい。ただ、悪魔と共生できる世界なんてどこにもない。」


エリックは硬く拳を握って魔導通話を切った。


「じゃあ行くね。ママ、お世話になった。」


エリックは無理矢理明るい声を絞り出す。


「あと、試験は四人パーティだからムラホシを借りるね。」


エリックはムラホシの肩をバシバシ叩く。


「モヒカンは母さんとお留守番しておいて、敵が来たらぶっ飛ばしていいよ。」


ムラホシはサラッとエグいことを言う。


「師匠!生きて帰ってきてください。」


モヒカンはムラホシと握手を交わす。


「また、いつでも帰ってきてね〜!みんな!」


——エリックは答えなかった。

「早いですが四章も終わり!」


「作者一ついいか?」


「なに?エルシィ」


「試験にいろいろ盛りすぎてはないか?」


「なんで、このもやしをめぐってぇ、政府とか魔族が動くんだよぉぉおおお!!」


「僕ももやし討伐に行く訳だしね♪」


「「ノリノリで言うなエリック!!」」


「ってことで次回」


「「「借金と試験へ」」」」


——四章閉幕

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