八十一話 世界政府と抹殺計画
――南アメリカ州、聖地リー。
ここは世界の中心――簡単に言えば世界中が集まる城のようなものだ。
(はぁ。また会議が始まる……。)
ナサトは重い足取りで世界の中心に続く道を歩いていた。
これから、常任理事国によって今後の世界の動きを決める、大事な大事な会議……。
「二ホンの4か月間の情勢をまとめろと言われてもね……。」
ナサトは資料の山で重くなる鞄を地面にいったん置いて、痛くなる手を振って痛みを飛ばす。
(あの男が二ホンで成果をあげすぎて纏めんのが死ぬほど大変だったんだぞ!?)
ナサトはもう一回鞄を持って、世界の中心の門を開いた。
世界の中心の入り口は門をくぐった先にも大きい門がある謎の構造で、ナサトは最近やっと慣れることができた。
二枚目の門には門番のように二人立っている。
「二ホンの常任理事国か?」
二人の胸元には八芒星の形をした宝石の中に盾がある紋様がついていた。
「はい。」
「中に入れ。会議の開始は五分後だ。」
門番はそっけなくナサトを通す。
世界会議室は三階――魔導式エレベーターのボタンの”3”を押す。
ナサトは魔導式エレベーターのなかで今日の資料を確認する。
――エリック一行がハイオークを討伐したこと。
――エリック一行がアーティファクト草薙の剣を入手したこと
――エリック一行が災害の悪魔を討伐したこと
「全部お前らかよ……。」
ナサトは肩を落とす。
二ホンとしては誇らしい一行だ、しかし彼らは違う――
世界を守る者たちでありながら、同時に世界の行く先を決める者たち。
それが、世界政府だ。
世界政府――世界各国を束ね、国同士の争いや魔法犯罪など、世界規模の問題を取り扱う巨大な組織。
その中でも、世界の行く末を決める権限を持つのが――常任理事国。
ナサトがこれから向かうのは、その常任理事国たちが集まる世界会議だった。
――チーン
エレベーターの扉が開く。
ナサトは機械のように決められた道を進み、世界会議室の扉の前へ着いた。
――ゴクリ
――ガッ
ナサトは唾をのんで扉を開いた。
「エリック、あの男は政府をいずれ脅かすぞ?」
開口一番にナサトを怒鳴ったのは、巨人の国代表バルドルだ。
「えっ……あ、はい……。」
ナサトはバルドルに流される。
「さぁ座れ。お前が一番遅いぞ。」
パイプ椅子を乱暴にたたくのは北方諸国代表ウォポーだ。
「あ、あれ?みなさんと椅子が違うような……?」
ナサト以外の椅子は高級そうな椅子だがナサトはパイプ椅子だ。
「ごめんな~一脚足りなくて。」
(嘘だ。)
ナサトは端に避けられた同じ椅子を見るがしぶしぶ座ろうとする。
「ちょっと待ってください。」
パイプ椅子に座ろうとしたナサトを止めたのはイギリス帝国代表チャールズ=ウィーンランドだ。
そしてチャールズは椅子を立つ。
「……そんな粗末な椅子では腰を痛めてしまう……。足りないのなら私が譲りますよ。」
チャールズは平然と言う。
「あ、いえ!大丈夫です!僕はこれで――」
「いいえ。あなたが座るべきです。」
チャールズはウォポーをにらみつけながら言う。
「はぁ……。」
ウォポーはナサトを不満そうににらみつける。
――だが、しぶしぶその提案を受け入れた。
「さて、会議を始める。静粛に。」
議長のモーゼが一喝する。
モーゼの声であれだけ不満をぶつぶつと言っていたウォポーもバルドルも姿勢を正し耳を傾けた。
「今回は、報告もそうだが、今日の本題は、世界のバグの処分についてだ。」
「世界のバグ……?」
チャールズは興味を示す。
「ほんの数日前に突如現れ、その日のうちに皇帝狼を手なずけ、暴力の悪魔を僕においた、通称唯一神……と呼ばれた男だ。」
モーゼは声を低くして言う。
「馬鹿なのか?子供の廚二病ではあるまいし。」
深海帝国代表ポセブルは苦言を呈する。
「その名は……コウ、アバシリ聖騎士団の聖騎士団長をしている……。」
モーゼは資料を取る手が震える。
「知らん名前だな。そんなモブに時間を割いてられるか。」
ウォポーは呆れる。
「ウォポーよ、モーゼ議長が言うことがわからないのか?仮にも悪魔を従えた男だ。いつ政府に牙をむくかわからないぞ?」
「グヌヌ。バルドルの言うことも一理ある……。」
バルドルは勝ち誇ったように自慢げだ。
「そこでだ……ナサトよ。政府からも神星護衛団をだす。だから、エリックをそそのかしてくれないか?」
モーゼは邪悪な顔をしてさらっと言った。
(は?お前らの危惧のために罪のない人間を殺すのを助けろと……?)
「やってくれるか?」
「は、はい……!」
ナサトは流れに負けてしまった。
――神星護衛団本部
「……了解。私がホッカイドウまで向かいます。」
二つ返事で答えるのは神星護衛団超星石エルシィだ。
エルシィは紅茶を一口飲む。
「……熱い。飲めない。」
エルシィはそっとカップを置いた。
「政府に害するものは全て排除する。」
エルシィはカップを冷ましながら冷徹に言った。
「……作者。」
「ん?」
「次回、私がホッカイドウへ行くんですよね。」
「そうそう。ついに出番だよ。」
「……戦闘ですか?」
「うん。かなり重要な戦闘。」
「そうですか。」
「緊張してる?」
「……少し。」
「珍しい。」
「……紅茶が熱かったので。」
「それ戦闘と関係ある?」
「ありません。」
「次回……」
「「もやしと政府の犬」」




