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七十一話 魂と祭り前夜


戦いの知らせは世界中に知れ渡る。


——東京魔法学校


ダンジョン課の講師アユミはあくびを噛み殺しながら明日の授業の用意をする。


(あーぁ。眠い。目を覚ませる出来事はないだろうか……?)


魔導パソコンの画面と睨めっこし続けて三時間……目も精神もギリギリだった。


その時だ


——ピコン!


頭の中に通知が入る。


アユミはニュース記事に目を見開く。


腹を抱え、その場にしゃがみ込む。


あまりにも笑いすぎて立っていられない。


「アーハハハ!そうか!あの馬鹿は、本当に英雄しやがるぜ。」


アユミはその後二時間笑い続け教師達に引かれたのは別の話だ。


——α(アルファ)


「そうか、災害の悪魔(カタストロフ)が死んだか……」


α(アルファ)は横でちょこんと座るリルルを愛でながらため息をつく。


「え〜わたしのメイドさんいなくなっちゃったの?」


リルルがつぶらな瞳をα(アルファ)に向ける。


「大丈夫だよ。新しいメイドさんはすぐに用意するからね。」


リルルは小さい体をめいいっぱい使って喜ぶ。


(エリック……Aø様が最も危険視する男。そろそろケイタやリルルの出番か?)


α(アルファ)はワインをゆっくり口に含ませた。


——アサクサのとある場所


「……っ!」


——ビリビリ!


アヤは新聞を引き裂く。


その記事には“英雄エリック災害の悪魔(カタストロフ)討伐!”の見出しが見えた。


(何をしているだ!)


アヤは机を乱暴に叩きつける。


(力を持っていながら、何も成し遂げられないのか?)


指先に力が入る。


(何一つ、成し遂げられないまま……)


新聞がさらに皺になる。


「……それに」


アヤは小さく呟いた。


「どうして、あいつばかり……」


その声には、怒りとも苛立ちともつかない感情が混じっていた。


(地図の破片すら見つけられずに終わるなんて……)


アヤは新聞を握り潰す。


「……本当に、使えない」


その視線の先にあるのは、エリックの名前。


果たしてアヤが苛立っているのは――


誰の失敗なのだろう。


——それから二ヶ月経ったフクオカ


ソーマが目を覚ますと一面の星空に地面に薄く水が張った不思議なところにいた。


——お、起きたか。相棒。


「誰だお前は?」


ソーマに話しかけてくる影はソーマの姿形がそっくりだった。


——うーん?俺はお前としかいえないなぁ。


「……は?」


——お前、好きな食べ物は?


影は急に話題を振る。


ソーマはその態度に少しイラつく。


「カニだ。」


——俺もだ。


影はニッと笑う。


影はいつのまにかソーマに近づく。


そして胸を突く。


——お前好きな人いるだろ?


影はニヤニヤしながら頬を突き続ける。


「……いない。」


——嘘言うなよ〜記憶は全部共有されてるから逃げられないぜ〜?


「……。」


ソーマは影の言うことを無視することにした。


そうしなければ黒歴史が全部公開されてしまう。


——で、ピピのどこが好きなんだ?


「……。」


——図星だな。


ソーマは影のペースに完全に乗せられてしまった。


その時ソーマの右手に雫が落ちる感覚がする。


——ほら、お前が二ヶ月も寝てるから大好きな人泣いちゃったぜ?これで三日目だ。


少しすると今度はソーマの手のひらに優しい温もりを感じた。


——お、手まで繋いでるじゃん、激アツ演出だな。


影はゲスく笑う。


「……お前は誰の味方だ?」


ソーマはため息をついて返す。


——ヘイヘイ。わかってるよ。あんまり長く話してると大事な人が本当に死んでしまう。もう丸三日何も飲み食いしてないからな。


魂は光が差す方を指差す。


——さぁ、早く行け、俺はずっと見てるからな。

いい報告を期待してるぞ相棒。


——相棒


——棒……。



影の声が遠くなっていくと共にソーマの視界に光が包む。


それと共にふわっと花の香りが鼻を優しく包む。


(……。白い天井……病院か……。)


ソーマはまだぼやける視界の中あたりを見渡す。


横のテーブルにちょこんとカステラが二切れ置いてある。


ソーマはカステラを取ろうと右腕を動かす。


——その時だ。


「ソーマ君!」


泣き疲れてウトウトしていたピピがガバッと起きる。


——ポチャン


そしてその目にまた涙が伝う。



——今度は、悲しみなんかじゃない。


「……俺の服びしょびしょじゃねぇか。」


ソーマの入院服の右腕の一点だけ雨が通り過ぎたように濡れていた。


そしてピピはまた濡らす。


「……何日寝てるのよ!」


「二ヶ——」


「そういうことじゃない!」


ピピはソーマの体に覆い被さる。


「どれだけ、心配したと思ってるの?二度と目覚めないと思ったじゃない!」


ピピはソーマにさらに近づく。


「そのカステラ、三日前に私の分ってくれた分ソーマ君がカステラ好きなの知ってるから食べずに待ってたの……。」


そして、ピピはカステラの皿を持ってくる。


「さっ、食べよ。」


ピピがフォークに一切れカステラを刺す。


「はい、あーん♡」


ピピはニヤッと笑ってフォークをソーマの口に差し出す。


(……っ!行くのか?俺……うわぁ……行けぇ!)


ソーマはついに一口入れようとした。


——が。


「祭りじゃ!祭りじゃあ!ヒャッホー!!」


直前の雰囲気をエリックが粉々に破壊する。


エリックは何故かはっぴを着ていて一人だけ浮いている。


——どちらの意味でも


「あれ?お取り込み——」


——ドゴ!


エリックはリサの手刀でノックアウト。


あまりの痛みで虚無になる。


「ごめんなさいね〜うちの子が本当に。」


リサがエリックをえりを持つ。


「あははははっ! お兄ちゃん、またやられた!」


ピピは腹を抱えて笑う


「……お……い指差すな。」


——プシュー


頭からこの音が本当に聞こえるとは思わなかった。


(よかったな。守れて。)


「……ふふ。」


ソーマは久しぶりに笑うことができた。


——祭りはもう直ぐだ。


「うわぁ!」


「なんだ急に俺はリサにボコられて不機嫌なんだ。」


「洗濯物取り込んでたらセミ飛んでキタァ!」


「……で?」


「で?じゃねぇよ、ビビるだろ?」


「作者洗濯できたんだ」


——ドゴ。


「次回」


「「討伐祭とノイズ」」


——三章最終回!

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