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七十話 戦士の未来と勝利の波紋


——ドッ!


三つの光が空気を蹴り一気に動き出す。


ルンタ。


ソーマ。


そして――白熊(ベアー)


『旦那、熊の魔力が桁違いに上がってるよ!』


「わかってる。向こうには絶対行かせない。」


——溶岩の太刀(ようがんのたち)流梅(ながれうめ)


ルンタはクサナギを荒々しい溶岩のように振るう。


剣先は白熊(ベアー)の左目をかすり、皮膚を溶かす。


白熊(ベアー)は一瞬目元を払う。


「はぃ~隙あり~」


その隙をソーマが白熊(ベアー)の顎を穿つ。


「甘いぜ~クマちゃん~」


ソーマはさらに詰める。


(痛みを忘れている今のうちにたくさん動いとかないとね。)


白熊(ベアー)が再生させた爪でソーマの首をもう一度狙う。


――バキャ!!


ソーマは振り上げた足で爪をまた折る。


(ペースに飲まれている……。)


”いいペースのつかみ方だ140点。”


白熊(ベアー)は両者の猛攻をさばき返しながら評価を続ける。


”そして、侍。美しい剣技だ108点。”


「ソーマ殿より低いな。」


ルンタは笑う。


”いや、この俺の腕を切ったことも加点して148点か……。”


「いやいや~俺の爪二連続破壊も加点対象だろ?」


ソーマは片腕で白熊(ベアー)の猛攻を防ぎながら笑う。


”……初めてだ。こんな愉快な戦いは。”


白熊(ベアー)が魔力を飛散させる。


――バゴ!!


二つの光は吹き飛ばされる。


しかし消えない。


”さぁ、最後の評価だ。がっかりさせるなよ?”


空気が凍りつく。


ルンタは刀を握り直し、ソーマは笑みを浮かべる。


二人の前に立つ白熊ベアーだけが、あまりにも静かだった。


——氷河の大地(おわりのだいち)


その瞬間、戦場が凍った。


「氷を出すだけか?」


ソーマは行先を邪魔する氷塊を手刀で破壊する。


——ガチガチ


氷塊は手刀ごと凍りつく。


ソーマは慌てて手刀を引き抜く。


「あ、あぶね。勝手に右腕が使えなくなるところだったぜ。」


“そうだ。永遠に凍り続け——”


——ドオォォン!!


東の方から轟音。


(東……やったのか?エリチン。)


“……そうか、だから正義に負けるのだ。”


白熊(ベアー)は東の方を見てため息をつく。


“さぁ、評価に戻ろ——”


——パギャ!!


“本当に話の聞かない奴だ。”


(俺の供給元が断たれた…… 氷河の大地(おわりのだいち)を展開しながら撃てる技はあと一回。寂しいものだ。)


白熊(ベアー)の真正面にルンタ。


ルンタはクサナギに全てを込める。


「やれるか?侮辱された思いも里のみんなの思いも刀身(ここ)にこめろ。」


『わかった!』


クサナギは価値のない刀と蔑まれた過去を刀身に乗せる。


(オレッチはこの人についていくから価値があるって!)


「ルンチャンが本気を出すなら……」


ソーマの背後に無数の黒い魔法陣が展開する。


「俺も本気出さないと酷だよね?」


奥義(おうぎ)


——破壊の太刀(はかいのたち)破天狼はてんろう


——幻影の光(メザド)


白熊(ベアー)の周りに黒い魔法陣が浮遊する。


“……ふっ。”


白熊(ベアー)は小さく笑った。


それと同時に大地の氷が全て剣に姿を変える。


——(つるぎ)


——一本。


——また一本


と剣がベアーの背後に集まる。


“ありがとう。”


その言葉と共に時が一斉に動き出す。


言葉では表せない轟音が戦場を包む。


その轟音の中で三人は命を燃やす。


ルンタの義眼に、氷の刃が突き刺さる。


ソーマの身体にも、無数の切り傷が刻まれていく。


それでも――


ルンタはクサナギを下ろさない。


ソーマも、魔法陣を崩さない。


血が流れても。


身体が傷ついても。


二人の構えだけは、微塵も揺らがなかった。


——ドッ!!


突然両者の間に衝撃が走る。


ルンタとソーマは十分に受け身を取れず地面に転げ落ちる。


(水蒸気で全く見えない……。はは。俺の方もやばいかも……。)


「……ソーマ殿。生きてるか?」


「あ……ぁ、ギリギリな。」


ソーマは無理して笑う。


——その視界の奥に


段々と水蒸気が晴れると木を背もたれにグッタリする白熊(ベアー)の姿があった。


“……素晴らしい剣技、魔法だ。評価するに値しない……。”


白熊(ベアー)の目の焦点はルンタ達を向いていない。


それに誰に話かけているのかわからない。


“初め会った時……正直、評価するに値しない寒い者だと思っていた……。”


“——しかし”


白熊(ベアー)の声がうわずる。


“戦いを進めていくうちに、俺をどんどん超えていこうとした。今までの剣士は、俺の強さに簡単に折れた。お前達は特別だった……。”


白熊(ベアー)の話に二人の剣士は飲まれる。


“……だから、未来の剣士よ、簡単に折れるな、そして、俺以外に絶対負けるな……。いいな?”


「当たり前だわ!誰にも負けねぇよ。」


“はは。……いつの間に生意気になった?”


白熊(ベアー)は初めて笑う。


“あぁ。次はもっと主に恵まれたかった……。”


「……そうだな。」


ルンタはそして倒れた姿勢から手を出す。


「……最後に握手をしよう。認めてもらった証にな。」


“……体勢が良くない……3点だ。”


白熊(ベアー)も虚空に手を出す。


ソーマも釣られて出す。


三人の手は届くことはない。


——それでも


手を下ろすものはなかった。


——そして、白熊(ベアー)がこの後二度と評価をすることはなかった……。


——アバシリ騎士団教会


「コウ様!コウ様!」


聖騎士団長室に慌てた様子でアイリ副騎士団長が入る。


「……なんだ?」


コウはひどく落ち着いた様子でコーヒーを飲む。


「フクオカで、英雄エリックが災害の悪魔(カタストロフ)を討伐したとの報告が!」


「……ふっ。」


コウは不敵に笑う。


「試験で会うらしいな、アイリ?」


「は、ハイ♡」


何故かアイリの顔は赤い。


「楽しみじゃねえか。強者とやれるなんて。」


「やっと全部の戦いが終わったなソーマ殿。」


「ルンチャン。いやぁ痛い。」


「……そういえば突き刺さってたな骨。」


「機械の体だから痛くないだろうなぁ?ガソリン飲めば復活しそう。」


「するわけない。」


「さて、そろそろあいつにも話してやらないとな。俺のこと……」


「次回」


「「魂と祭り前夜」」


——祭りじゃあ!


※ここまでお読みいただきありがとうございました!

もし、「ヤベェ、おもろすぎる!」と思ってくださったならぜひ最初のページからエリックたちの物語を見守ってください!

一気読み大歓迎です!

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