六十九話 漢と相棒
ソーマは戦地に向かって歩き出す。
双剣を杖代わりにしなくては倒れてしまう。
(……そんなに遠くに行ったわけじゃないのに遠い。)
一歩一歩、確実に前に進んでいる。
ルンタが戦う音もだんだん近づいてくる。
(視界がもう、真っ暗だ……。前に進めてるかもわからない。)
ソーマの額から脂汗が伝う。
(だけど、進まなきゃいけないんだ。)
ソーマはまた、力強く前に進む。
震える手で、双剣を握り直す。
(俺が剣を握る限り……。)
——戦地
——ガキィィ!!
これでも何度目かわからない交差。
(……全然状況が変わらない……。いや?寧ろ相手はずっと何か余裕がある?)
「何を隠してる?」
“……ハァァ、流石だ。バレたか。”
「当たり前だ。」
ルンタは目つきで物語る。
“……わかった。これから本気で……。”
「ま……て!」
白熊の後ろから声がする。
振り向くと双剣を杖にやっとの思いで立っているソーマの姿。
「俺……を……忘れるんじゃねぇ!」
その目には炎がともっていた。
”そうか……悪かった。なら二人まとめて評価する。
白熊は一歩、踏み出す。
”来い。”
その言葉と共に戦場が凍り付く。
先に動いたのはソーマだった。
――影撃。
ソーマは剣を振れない。
ならば――影を振る。
双剣の切っ先から伸びた影が、ソーマの意思に呼応するように地面を走る。
次の瞬間。
――ズバッ!
影の刃が、白熊へ襲いかかった。
——ガキィィ!!
白熊は影の動きを冷静に見定め爪を合わせる。
“いい攻撃……だが、遅い、37点。”
白熊は一瞬でソーマに間合いを詰めなどに爪の振り先を合わせる。
“毒のせいとはいえ……反応が僅かに鈍い4……”
——ザン!!
白熊の腕が宙を舞う。
ソーマはルンタが作った隙を見逃さない。
双剣を巨体の首に食い込ませる。
ソーマは刃先に全てを込める。
(硬い……!氷山を俺は切ろうとしているのか?)
「ゲボッ。」
ソーマの体が悲鳴を上げる。
本来なら立ってることすらできない限界な体。
ソーマに立てる理由はない。
それでも、ソーマは立ち続けている。
——こんなところで終われない。
ただの漢の意地だった。
「まだ、ここが諦めてねぇ!」
ソーマは双剣を握る力をさらに強める。
——メキメキ
何かが壊れる音がした。
構わない。
(……!肋骨が砕けたのにまだも動き続ける精神性……!それにまだ虚勢を張れる意地……!今までに見たことのない人間……!)
白熊の目に賞賛が混じる。
“素晴らしい精神性……骨が折れたのにさらに動き続けられるその胆力!賞賛に値する!120点。”
白熊は冷たく息を吐く。
“だが……俺の首は切れない。”
白熊はソーマの双剣をへし折り投げ飛ばす。
——ゴシャ!!
「ア、アァ゛。」
ソーマの肋骨が腹に突き刺さり痛みが体を走る。
構わな……い!
ソーマは立ちあがろうと双剣を地面に突き刺す。
——グニャ
握る手は地面に倒れ視界に墨が入る。
(……痛い。苦しい。呼吸も……もう……。)
その時だ。墨色の世界に光が見えた気がした。
(なん……だ?)
——……せよ!
遠くから何か聞こえる。
よく聞き取れないが何処か懐かしい声。
——貸せよ。
今度ははっきりと聞こえた。
声の主が笑ったように感じた。
——相棒。
その声が頭に響くと同時に意識を手放した。
「……あ〜ぁ。」
ソーマはゆっくり立ち上がる。
(ソーマ殿の雰囲気が変わった?)
ルンタはソーマに目を向ける。
「ボロ雑巾かよ?この体。まじダルいんだけど。」
ソーマは折れた双剣を地面に突き刺す。
“……剣を捨てるのか。”
白熊は名残惜しそうに首に食い込んだままの刃先を投げ捨てる。
「あぁ。俺はあいつと違って剣はあまり好きじゃないからな。」
白熊の爪がソーマの首筋を狙う。
ソーマは爪に向かって腕を振るう。
——バギィ!!
鋭い音が戦場に響く。
ベアーの爪が、拳に打ち砕かれた。
「これで、お互い様だろ?」
“……そうだな。”
「ソーマ殿平気なのか?」
ルンタは相手を視界に留めながら言う。
「当たり前だろ?ルンチャン?」
(……!?“ルンチャン”!?急にあだ名呼びだと?やはりダメージで頭がおかしくなったのか?)
「……無理してないよな……?」
ルンタは初めてのあだ名呼びにドギマギしながらも体を案ずる。
「大丈夫〜さぁ終わらせようぜ!」
(なんかやりずらい……。)
ルンタはクサナギを構えた。
「ソーマ殿、急にどうした?」
「へぇ〜体の方でも中々うまくやれてるじゃん。」
「どういうことだ?」
「あのクマちゃんを絶対倒す。」
「だから!!お前は——」
「次回!」
「「戦士の未来と勝利の波紋」」
「いったい、お主は誰?」




