六十六話 焼き鳥とジブンの答え
静寂を先に切ったのはマチルダだ。
砕けた義手の代わりに氷を纏う。
マチルダは低い姿勢から足を伸ばす。
(低い……。かわせないほどではない……!?)
マチルダは踏み込んだ姿勢のまま拳を上に振り上げる。
(足技主体の攻撃からずらして拳……。)
「うぁイッテェ!硬すぎるだろお前の体。」
しかし、マチルダは攻撃の手を緩めない。
——横凪
鳳凰は翼を硬くして横に振るう。
マチルダは首だけで避ける。
鳳凰は避けられても、前にさらに踏み込みマチルダを逃さない。
“逃すわけねぇ!”
鳳凰の口調が荒くなる。
(すっげぇ猛攻……、必死だ。)
ニヤリとマチルダは笑う。
「必死なのはお前だけじゃない!ギア上げてくぞ!」
その瞬間鳳凰の視界からマチルダが消えた。
(消え……た!正面……!)
鳳凰の正面に突然現れるマチルダ。
——鉄鬼脚
マチルダは鳳凰の正面を捉える。
——ヒュカ!
鉄と硬い物がぶつかる音。
直前で鳳凰は硬い羽を蹴りの間に回し守る。
——台風衝撃
鳳凰は至近距離から激しく拳を振るう。
マチルダの体に次々と痣が浮かぶ。
「ガハッ!」
マチルダの口から血が舞う。
——それでも
「ゴフッ……。ハハァ。まだ立てるぞぉ?お前はこんなもんか?」
マチルダは威勢を張る。
だが、足は氷で固定しなければ立てない。
傷も鉄で塞がなければ、血は止まらない。
──そんなこと、一番分かっているのは自分だった。
(理解できない……いや……わかるぞ。この気持ち。)
鳳凰は、何も言わない。
ただ、さらに魔力を込めた。
マチルダの視界から鳳凰が消える。
——ドシュ!!
鳳凰は傷を止めていた鉄の塊に向かって鋭い拳を振るう。
マチルダは気を失いそうになったが、倒れない。
「ハハァ……温いなぁ!」
これはただの暴力ではない。
——戦士の誇りだ。
「来ィィ!」
マチルダは全てを足に乗せて連続で蹴る。
“ハァァァア!!”
鳳凰もマチルダの蹴りよりも更に早く拳を振るう。
両者の体から血がしぶく、しかし一歩も引かない。
——引くわけがない
マチルダはさらに速度を上げる。
——ドドドド!
鳳凰もニヤリと笑い、遂に拳が消えた。
——もっと
——もっと
——もっと!!
両者は戦士の誇りだけを胸に、命を振るう。
お互いに遠くへ吹き飛ばされ、体勢を立て直す。
(やれても、もう次が最後……アイツに失礼のないように……)
マチルダは覚悟を決めて鳳凰をギラリと見つめる。
「悪いが、次はもうない……次で決める!」
“……来い!戦友。”
鳳凰は短く答える。
その言葉と共に世界が一瞬静まる。
地面が割れる。
風が止まる。
「奥義!」
“……奥義”
戦士たちは命全てを賭ける。
“——鳳凰”
鳳凰は風を集め一つの拳に乗せる。
マチルダは鉄で硬化させた足を振り上げる。
互いに間合いに踏み込む。
振り上げに合わせて、時間が遅くなる。
拳と蹴りが一つに交わる。
——轟音
鎖骨が砕ける。
体に蹴りがめり込む。
——ゴゴゴ
戦場に衝撃が走り強風が吹く。
それと共に土埃が立ちマチルダの視界を奪う。
(アイツなら姑息なことはしない。)
マチルダはゆっくり前に歩き出す。
腹からまた血が滴る。
(は、はは。マジで失血しすぎだろ……。)
マチルダが歩くたびに土煙が晴れてゆく。
視界が開けた時、辛うじて残っていた木を背もたれにしてぐったりとする鳳凰がいた。
“……オレサマが……姑息なことは……しないぜ?……”
鳳凰は笑いながら言う。
そこに迷いはない。
「ふっ、やっと戻ってきたか。自分を無くすんじゃねぇ。」
マチルダは近くの切り株に腰をかける。
“……力よりも……”
うっすらと暗くなってきた空を見上げる。
“オレサマを認めてくれる存在か……ケッなんて皮肉だ。”
鳳凰は寂しく笑う。
「な〜に言ってんだ。」
マチルダは拳で鳳凰を優しく殴る。
「俺がいるだろうが。まぁお前が今まで何をしてきたかは知らねぇが……」
マチルダは殴った手で優しく鳳凰を撫でる。
「お前はおバカな立派な戦士だった。」
“……バカは余計だろうが……”
鳳凰は羽を一つ振り落とす。
それと共にまぶたが落ちていく。
“ケッ………、焼き鳥にしてでも……く……え……。”
そして鳳凰は動くことはなかった。
「……食えるわけねぇだろうが……。」
マチルダの声が孤独に響いた。
マチルダは壊れかけた腕時計を見る
「……終わった。」
マチルダは地面に転がった。
「グハハハ!神回爆誕だ!」
“ケケッそう言うの作者が言わないんじゃないの……”
「まぁ俺も認める神回だ。俺がかっこよすぎる。」
「だよなぁマチルダ!イェーイ!!」
(ナルシスト集団?)
“次回”
“「「ブレる照準と理不尽の憤怒」」”
「三章長くね?」
「“あんたのせいだわ!作者!”」
「……反省はしてる。」
「してねぇだろ。」




