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六十一話 戦闘機と泥臭さ

人は時々、理解できないものに出会う。


命を懸ける理由。

敵を救おうとする理由。

壊れながら前へ出る理由。


合理だけで生きるなら、

きっと世界はもっと簡単だった。


痛いなら逃げればいい。

苦しいなら諦めればいい。

敵なら憎めばいい。


でも、人間はそうできない。


だから厄介で、

だから愚かで、

だから――美しい。


風に逆らえば、折れる。


ならどうする?


折れない奴は、

風に乗ってでも前へ進む。


たとえ、

腹が裂けようとも。


鳳凰(ホウオウ)とマチルダの間に冷たい空気が流れる。


“一つ聞いてもいいですか?”


「なんだ?」


マチルダは警戒を怠らない。


”なぜそんなに躍起になるのですか?別に過去の人格故にあなたの敵でしょう?”


その言葉と共に空気が凍る。


――一瞬、世界が止まる。


「簡単だよ。お前の言う過去の人格が最後に助けを求めた。それ以外に理由もねぇよ。」


マチルダはぶっきらぼうに言い放つ。


「たとえ敵であったとしても、助けを求めたやつには本気で向き合う。それが俺のポリシーだからな。」


”意味が分かりません。敵ならば憎めばいいのに。”


鳳凰(ホウオウ)は呆れたように溜息を吐く。


「意味わからないだろ?俺もだよ。」


その言葉と共にマチルダは鳳凰(ホウオウ)に間合いを詰める。


鉄が足に荒々しく集まる。


その間にも暴風は吹き荒れる。


マチルダは正面から吹き付けてくる木を蹴り砕き、さらに鳳凰(ホウオウ)へ詰める。


間合いが近くなればなるほど、飛んでくる木の本数が増える。


マチルダは蹴りで道を切り開く。


(厄介ですね、全く止まらない。)


――風神の刃(ウィンドクローズ)


鳳凰(ホウオウ)は荒れ狂う嵐を巨大な刃にしてマチルダに飛ばす。


魔力はぐちゃぐちゃに絡まり、灰色の太い線となって荒れ狂う。


灰色の刃はあっという間にマチルダの眼前に迫る。


(しまった……避けられ……)


と思った時、あることがマチルダの脳裏を焼いた。


                 ■■■


――夏のある日


その日は暴風と雨が強い日だった。


「やべぇ!早く帰らないと、ずぶ濡れの情けない師匠が爆誕してしまう。」


天気予報では雨が降るとのことだったが、まさかこんなに降るとは……。


「ったく、残業させやがって。アサクサでの魔物被害多すぎだろ……」


アサクサの街を守る警備部長は、とにかく忙しい。


マチルダはアサクサ魔法協会の玄関でうじうじとしている。


(一応、隣接した売店でビニール傘を買ったが……どれほど役に立つか?)


――ビュウウ


風は怒り狂うように強く吹く。


(ここでうじうじしても仕方ない。腹をくくって行くぞ!)


マチルダは傘を開き、一歩踏み出した。


――その瞬間


――ビュラッ


傘が風に吹かれ、一瞬で裏返る。


マチルダがすぐに直すが、マチルダをあざ笑うようにまた裏返る。


その行動をN回繰り返したとき、マチルダは諦めてずぶ濡れになって帰った。


                   ■■■


そのあとアヤに何と言われたかは想像がつくだろう。


刃は時が遅くなったようにゆっくりマチルダに迫る。


(傘が裏返ったとき……俺はなにをした?)


(風に逆らったから裏返った。つまり……)


――風に乗ればいい


マチルダは風の刃に向かって体を前に倒す。


”無謀ですね、あなた死にますよ?”


鳳凰(ホウオウ)は風の刃を維持したまま、視線だけを向ける。


風の刃はマチルダの体を切り裂いた……。


――刃は切り裂けていない


マチルダは風の中心に体を入り込ませてダメージを最小限に抑える。


全身に浅い裂傷が走る。


浅い傷のはずなのに、動けば内側から崩れそうだった。


”最小限には抑えられたようですが、腹の傷は致命傷ですね。少し動けば内臓が出るでしょう。”


鳳凰(ホウオウ)は淡々と事実を言う。


マチルダは荒く肩で呼吸する。


(避けられた……けど、傷が酷い。動けば終わりか。)


この状況でもマチルダは笑っていた。

血を吐きながら、それでも視線だけは真っ直ぐ前を見ている。


「かかってこいやぁ゛。人間様を舐めんなよ?」


マチルダは腹の傷から血が溢れるのも気にせず叫んだ。


(この人間、なぜここまで……?)


今の鳳凰(ホウオウ)には、その意味が届かない。


鳳凰(ホウオウ)は静かに一歩踏み出す。


地面に降り立つと同時に、風が密度を増した。


”理解不能です。合理性を外れている。だが──肉体だけが戦いを選んでいる。”


鳳凰(ホウオウ)は翼の先に灰色の爪を作る。


”本能がお前との真剣勝負を望んでいる……?”


鳳凰(ホウオウ)は自分でもわからないまま体を最適化する。


――暴風を操る使い魔から暴力の神へ


(そうだ。戦いに言葉もいらない、必要ないんだ。)


鳳凰(ホウオウ)が羽を勢いよく横に振ると木々が消える。


「やっとお前らしくなったじゃねぇか。最後に相手してやる。」


マチルダは腹を引き絞り外に出てしまいそうな内臓を押し込む。


鳳凰(ホウオウ)の周りの空気が揺らぐ。


その瞬間鳳凰(ホウオウ)の姿がマチルダの視界から消える。


次に見えた時には鋭い羽がマチルダの首を飛ばそうと狙っていた。


マチルダは鉄をはさみ一撃を防ぐ。


――鳳凰(ホウオウ)は自分がどんなものだったかわからない


「テストやべェ〜」


「あっ英語の50もわからなかった作者だ。」


「それは演出だわ!わかるわ!リサ!」


「メタイわ!」


「お前ら仲良いな。」


「まぁな、エリック、俺がFatherだしな。」


「うざいしうるさい。」


「——次回」


「「「自由な部下と繋がる部下」」」


——カクヨム版も読んでみてください!

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