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五十九話 エルフと牙を向く毒

――“優しさ”ほど、壊れた時に醜いものはない。


遊びたい。

話したい。

繋がりたい。


その言葉が本物であるほど、

狂気は、人の形をして近づいてくる。


だから厄介だった。


悪意だけなら斬れる。

憎しみだけなら壊せる。


だが、“理解したい”という感情は、

時に殺意より深く人を壊す。


そして今――


少女の中へ、

静かに“死”が入り込んでいた。


――沿岸部


”あれぇ~今回は~おもちゃが少な~い”


海月(デルキア)は不気味に笑う。


「悪かったな。今日は忙しいんだ。」


ゾムがメイスを担ぐ。


”遊ぶ前に少しお話しよ~”


海月(デルキア)はウキウキした声で言う。


――顔は笑っていない。


「お話?もうあなたに話すことはない。」


リサが拒絶する。


”ねぇ?なんで~?いつもあなたは私に冷たいの~?”


声はフワフワしていたが殺意に近い圧があった。


”私はただ遊びたいだけ~今回は~前回できなかったとっておきのおもちゃを持ってきたからね~。”


海月(デルキア)は触手を楽しそうに上げる。


”そうだ~一つ聞いておこ。”


海月(デルキア)は思い出したように言う。


”あなた~エルフでしょ~?なんで奴隷にされてないの~?”


”そっか!もう誰かの奴隷なんだね~可哀想~私がすぐに楽にしてあげるからね~”


「黙れ。」


リサが空気を突き破って言う。


「私がエリックの奴隷?私はあの人に本気でついていくって決めたの。奴隷なんかじゃない!」


”心配してあげたのに~殺すよ?”


海月(デルキア)は水球を浮かべた。


水球から水が照射される。


(前回と同じスピード。飛び方。)


二人は冷静に、水を避ける。


――が


避けられたはずの水はゾムの右頬とリサの脇腹を掠る。


”学習しないと思った~?私は~あの双剣君と違って~ここが生きてるんだ~”


海月(デルキア)はあの時と同じように触手で頭を叩く。


海月(デルキア)の声だけが、不気味に戦場へ響く。


(あれ~怒らないんだ~双剣君は見捨てられたんだ~)


”……グスン。”


海月(デルキア)は急に涙ぐむ。


”君達が~あまりにも薄情で~泣けて来ちゃったよ~。”


海月(デルキア)の目に涙は出ていない。


”双剣君のためにも私全力で頑張るねっ!うんうん~”


――赤い糸(あかいいと)


赤い水球が海月(デルキア)の周りに浮遊する。


その赤は生き生きとした赤ではなくドロドロとした黒い赤だ。


”双剣君かっこよかったな~私、彼の脇腹をぶっ刺したとき一番心がキューってなったの~”


海月(デルキア)はまるで初恋の乙女のようにテンションを上げて話す。


”きっと。私は~この人に会うためにここに来たんだわ~”


赤い水球から一斉に水が放たれる。


「魔力の形状が違う。ゾムさん気を付けて!」


リサが防御魔法を展開する。


赤い水は防御魔法の壁に阻まれ地面に染み込む。


海月(デルキア)はニヤッと笑った。


”守ったつもり~?水は染み込むんだよ~”


一瞬で正面の赤い水が消えうせる。


(どこへ消えた?)


地面が赤い水に染まる。


地面一帯が、血のような赤に染まる。


赤い月が水面に揺れていた。


(避けられない……!)


――ドドドド


下から大量の赤い水が押し寄せる。


(呼吸ができない……。)


リサは赤い視界のなか空気を探す。


(苦しい。)


”苦しいでしょ~大丈夫!すぐに楽になるよ~”


海月(デルキア)の声は遠くで滲む。


(まずい意識が……。)


――落ちる


そう思われた時だった。


急に赤い世界に光が戻った。


「ゲホゲホ。」


リサは地面に蹲り肺に残った水を吐き出す。


「平気か?」


ゾムが蹲るリサの背中を優しくさすりながら言う。


「ありがとうございます……どうやって突破したんですか?」


リサはふらつきながら立ち上がる


「そりゃ勘さ。」


「ふふふ。どこかの侍と同じこと言ってますね。」


リサは肩を震わせて息をする。


”えへへ~大丈夫だよ~もうちゃんと入ってるから~”


海月(デルキア)の言葉には含みがあるように感じた。


――一期一会(いちごいちえ)発動


”これで~繋がれる~私とあなた達そして~双剣君も!”


海月(デルキア)は天真爛漫にその場で回る。


触手が揺れる。


炎の直線(レクトゥス)


リサは海月(デルキア)に向かって業火を放つ。


ダンジョン研修の時よりもさらに練度があがった炎。


炎はあっという間に海月(デルキア)の触手を焼き払う。


”熱っ~やけどしちゃうよ~料理には~火加減が大事でしょ~”


海月(デルキア)の声と共に水の落ちる音が混じる。


――ポチャン


(あ……れ?)


リサの視界が霞む。


身体が震えうまく動かせない。


水の音はさらに大きくなる。


リサは右腕を抑えながら地面に崩れる。


”来たぁ~とっておきのおもちゃが動いたぞ~”


海月(デルキア)の声は場違いに明るかった。


――ゴフ


リサはとっさに口を押える。


恐る恐る震える手を見れば手に生々しく血が地面に滴る。


「リサァァ!」


ゾムの声さえも、湖の底に沈んだように遠い。


自分の心臓の声だけがリサの耳に響いていた。


「おいmyワイフのリサ様に何してんだァァァア!」


「作者初手からうるさい!てかあんたのワイフになった覚えはない!」


”仕方ないじゃん~監督(作者)の指示だも~ん。”


「グヌヌ……物語を面白くするためには仕方ないが……やっぱ許さん」


”めっちゃ我儘言ってない~?”


「――次回」


「「”鉄人と半神(フォールン)”」


※雑談ですが作者は某国民的三人組ロックバンドの曲を聴きながら執筆を進めているとたまに歌っちゃいます(笑)

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