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五十一話 追い求めてた強者と強者の怠惰

空はまだ裂けたまま、風は形を持ち、炎は意味を失う。


理屈の通じない領域で、それでも人は“勝ち筋”を探す。


それは技でも、才能でもない。


ただ一つ――「折れない意志」だけが武器になる戦場。


――風はまだ止まらない。

――内陸部


(炎が効いてない……? いや、分解されたのか?)


エリックは表情を崩さない。


だが、内心では焦りが走っていた。


「魔法が効かないのか、貴様。」


”ん~? まぁ、わかんね☆”


「分かってねぇのかよ……。」


エリックの頬がひくつく。


”ケケケ! 戦いに理屈なんていらねぇだろ? 感じろ感じろ!”


鳳凰(ホウオウ)が翼を振るう。


風が刃となって襲い掛かった。


マチルダが防御魔法で受け止める。


その隙間から、エリックの無属性魔法が走った。


――ズドン!!


光が翼を貫く。


だが。


傷は一瞬で塞がった。


”うーん。悪くねぇ。”


鳳凰(ホウオウ)は退屈そうに欠伸をする。


”でも、つまんねぇ。”


次の瞬間。


巨大な竜巻が地面を抉りながら発生した。


木々を薙ぎ倒し、土を巻き上げる。


エリックは竜巻を見据える。


(この規模……普通なら止められねぇ。)


だが。


(俺たちなら話は別だ。)


「マチルダ。」


エリックがニヤリと笑う。


マチルダも即座に口角を上げた。


「まったく。バカの考えそうなことだ。」


――大氷結(ニヴルヘイム)


両腕。


両足。


二人から同時に冷気が放たれる。


――ガギギギギ!!


空気ごと凍らせる冷気が竜巻へぶつかった。


暴風が、青氷へ変わっていく。


”……ケケ。”


鳳凰(ホウオウ)が笑う。


”いいじゃねぇか!!”


その目が初めて獲物を見る色になる。


”前言撤回だ! もっと楽しませろ!”


――風の牢獄ハリケーン・おりんじぇる


世界が、歪んだ。


音が消える。


景色が裂ける。


「っ!? マチルダ!!」


エリックの周囲を風壁が囲む。


(探知が乱れる……位置が掴めねぇ!)


”ケケケ! この風は魔力も遮断する! もう連携できねぇぜ?”


一方――


「チッ……!」


マチルダも別空間へ閉じ込められていた。


鉄鬼脚(てっききゃく)!」


――ズガン!!


蹴りが風壁へ叩き込まれる。


だが砕けない。


(硬ぇ……。)


額の汗を拭う。


その時。


「……いや。」


マチルダの目が細まる。


「止まってない。」


風が循環している。


つまり。


“魔力が流れ続けている”


その瞬間。


別空間のエリックも、同じ答えへ辿り着いていた。


(壊せないなら――)


(止めればいい。)


互いの姿は見えない。


声も届かない。


それでも。


“考えだけは一致した”


――パキ。


エリックが風を凍らせる。


――鉄鬼脚(てっききゃく)


――バギィィィッ!!


次の瞬間。


マチルダの蹴りが牢獄を粉砕した。


氷片が吹き飛ぶ。


「連携ってのはな――」


「感じるもんだろ。」


二人の声が、完全に重なる。


”……ケケ。”


鳳凰(ホウオウ)の空気が変わった。


軽薄な笑みが消える。


風が鋭さを増す。


”やっと準備運動終わったか。”


「本気か。」


エリックが魔力を練る。


”お陰様でなァ!!”


翼が振るわれる。


無数の風刃。


エリックは火球と水球を同時展開し迎撃した。


激突。


爆音。


視界が白く染まる。


その裏。


マチルダが一直線に駆ける。


(まだ魔力が尽きてねぇ……!)


なら。


今、決める。


マチルダは高く跳んだ。


雲を背負う黒い影。


落下と共に、足へ鉄が集束する。


――ギギギギ。


鉄塊が、脚を覆う。


          ■■■


――退院から三日後。


「師匠……お見舞い行けなくて、ごめんなさい。」


弟子のアヤが涙を堪えながら頭を下げる。


「顔を上げろ。」


義手を嵌めたマチルダの声は、わざと冷たい。


「俺は気にしてない。それより、自分の魔法を磨け。」


義手で、そっと頭を撫でた。


「今はハサミ程度でもいい。」


「努力すれば、いずれ岩だって断ち切れる。」


アヤが涙を拭う。


「……本当に?」


「あぁ。」


マチルダは笑う。


「たとえ利き手がなくなっても――俺には足がある。」


虚空へ蹴りを放つ。


「お前も考えろ。“何を失ったか”じゃない。“何が残ってるか”をな。」


          ■■■


(弟子に言ったくせに――)


(自分ができねぇのかよ。)


マチルダは吼える。


龍凱轍虎蹴(マチルダキック)!!」


「おいなんだよ。こいつらの技名。」


「ははは!エリック。俺の龍凱轍虎蹴(マチルダキック)がかっこよすぎて震えてるだろ!」


”ケケケェ!オレサマの風の牢獄ハリケーン・おりんじぇるだろぉ?”


「どっちもダサすぎる。」


(バカ、僕が黙ってたこと作者が言いやがった。)


「”あぁん?今なんて言った?”」


「だからダサ……」


――ドゴ

――グシャ


「……次回」


「「人としての何かと観察者」」


※読者の皆様へ

この作品は至って真面目なバトル作品です(大嘘)


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