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四十四話 壊れた少女と一時の勝利?

終わりは、いつだって突然やってくる。

そして同じくらい、あっさりと裏切られる。


倒したはずの敵。

限界の体。

それでも、戦場はまだ息をしている。


何度砕かれても、何度奪われても——


「……まだ、終わってない」


その一言が、すべてを引き戻す。


これは、“終われない者たち”が何度でも立ち上がる物語


「……して。」


ピピは、消え入りそうな声で呟いた。


「どうしましたか、ピピ少佐?痛みますか?」


担架を運ぶ隊員たちが顔を覗き込む。


「……降ろして。」


「まだ処置が――これ以上動けば危険です!」


「降ろしてよ!!」


ピピの声が弾けた。

その目は、もう“戦場”を見ていた。


「私は……まだ動ける。まだ……終わってない。」


ピピは担架から無理やり身を起こす。


足元が揺れる。それでも、止まらない。


「“あいつ”を――細胞一つ残さず消すまで、休めない。」


その背中は、もう小さな少女じゃない。


”復讐”そのものだった。


隊員たちは、ただ足を引きずりながら戦地へ戻るピピを見送ることしかできなかった。


――時を少し戻し


――ドンッ!!


エリックの体が吹き飛ぶ。


雑木林を突き破り、地面を削りながら転がった。


「ッ……!」


(今の……直撃か)


エリックの肩口から血が溢れる。

だが、骨は折れていない。


(防御を張ってなきゃ、終わってたな……)


エリックは立ち上がる。


すぐに、魔力を探る。


(東に……ルンタ、マチルダ、クサナギ。南にリサ……)


バラバラだ。


最悪の配置……。


(合流は無理だな)


エリックは視線を上げる。


(なら――)


ギルド方向。


あそこに、全部ある。


(ピピ……待ってろ)


転移陣が足元に展開される。


「一人には、させねぇ。」


――戦地、ギルド


(しまった……!)


ソーマの手が震える。


(ゾムさんが……あの直撃を――)


視界の奥、光が弾ける。


“終わった”と、脳が判断しかける。


――その時。


「ぬるいねぇ!!どうしたァ!!」


声が、割り込んだ。


煙の中に仁王立ちの影が見える


“……は?”


焼け焦げた服。


裂けた皮膚。


それでも――立っている。


「まだ……終わりじゃねぇだろうがァ!!」


ゾムは笑っていた。


”……魔力が足りぬ。維持するだけで限界だ……”


ピラリスの体が、崩れ始める。


ボロボロと、砂のように。


(……いける)


ソーマの目が変わる。


(あと一撃――それで終わる)


影が、再び蠢いた。


「ソーマ!終わらせるぞ!」


ソーマは静かにうなずく。


――ズズズズ


ソーマの影が双剣へ集束する。

黒い影はやがて巨大な(あぎと)へと変貌した。


邪刑の顎(じゃけいのあぎと)!」


ソーマが双剣を縦に振り蚯蚓(ピラリス)の崩壊する頭部をさらに破壊する。


黒い斬撃が地面ごと蚯蚓(ピラリス)を叩き割る。


”はぁ、はぁ、やっやめろぉ!”


蚯蚓(ピラリス)は激しく息を切らす。

必死に消えかかっている自分の体をつなぎとめようとする。


「滑稽だな。今さっきまで人を平然と殺していたやつには到底見えないな。」


ソーマは蚯蚓(ピラリス)を冷たい目で見下す。


「そうですよね。」


ソーマは上を見上げる。

空に浮かぶ月に重なるのは高く飛びあがったゾムの影だ。


(一撃にすべてを!)


蚯蚓(ピラリス)はソーマばかりに注目して

天空から勢いよく振ってくるゾムの姿に気づいていない。


「ゾムさん。」


(しまった。上!)


――ゴンッ


蚯蚓(ピラリス)の判断はまたも遅かった。


今度は頭だけでなく全身すべてを地中に沈めた。


”ば……かな……。われが……人間風情に……!”


身体はどんどん地中に沈んでいく。


力も魔力も入らない。


完全に”詰み”


地中に沈む激しい音だけが戦場に響く。


音もない。

動かない。

――再生も、ない。


「やっと。終わったのか?」


ソーマは安心するとフラッと体がふらつく。


耳鳴りがうるさい。

ソーマの視界がかすむ。


(体の限界か……。)


ソーマはふらつく体を双剣を杖にして何とか支える。


ゾムも肩で息をしながら、メイスを地面へ落とす。


もう握っている力すら残っていなかった。


「ったく。手間かけさせやがって。」


――その時だった。


――ゴゴゴ


地面の奥で”何か”が脈打つ。


ソーマは深く息を吐く。


(なんだ……?)


背中を突っ切る寒気。


勝利の余韻を、内から食い破るような感覚がソーマ達を襲う。


ゾムも顔をしかめる。


「……まだ、残ってやがるのか?」


――ドクン


地面を揺らす鼓動。


((有り得ない!))


さっきまで”完全に止まっていたはずのもの”の動く音。


(……違う。いままでのやつじゃない。)


もっと奥


もっと巨大な“何か”。


「魔力が地面に流れている。」


ソーマは違和感の正体を辿る。


魔力の流れの“源”。


そこにあるのは——


形ではない。


意志でもない。


ただ、“世界そのものが歪む感覚”だった。


その瞬間。


――バキ


地面に黒い亀裂が走る。


亀裂は蜘蛛の巣のように広がり、戦場全体を覆っていく。



生き物ではない。


――もっと現象に近い何か。


ゾムが舌打ちをする。


「チッ……終わりじゃねぇのかよ。」


ソーマは地面に突き刺したままの双剣を引き抜く。


手は震え、体のところどころに痛々しい傷がある。


それでも、目は死んでいない。

死ぬわけにいかない。


「何度でも来い。」


ソーマは黒い亀裂を睨む。


「諦めるまで、付き合ってやる。」


――その背後


転移の光が、静かにともる。


遅れて風が鳴った。


「ねぇ。全部ぶっ壊していいよね?」


「開幕から怖いぞピピちゃん。」


「マチルダさん、あいつをぶっ壊さない限り死ねないの。」


――カット


「ふぅ~今日の編集終わった~。それにしてもピピちゃんすごい狂演だったね……。」


「そうでしたかぁ?みんなはもっとぶちぎれてるところだと思うけど、私はまだおとなしい方だよね?」


(いや、あんたの方が十分怖いよ。普通に暴れられるよりもよっぽどな。)


「――次回」


「「せーの」」


「「細胞破壊と戻ってきて」」

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