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三十七話 部品と軍の中枢

人は部品(パーツ)だ。

一つ一つに意味がある。

壊れていい部品なんて、どこにもない。

だから、拳を握るその瞬間も、涙を流すその瞬間も、全部が生きる証。


焚火の光に照らされ、互いに「生きて帰れ」と誓い合う。

怒りも、悲しみも、尊さも──全部抱えて進む者たちの、ほんの少しの希望の記録。


「エリック、大丈夫、大丈夫だよ。」


何度も拳を地面に打ち付けるエリックを見て、リサは背中をさすりながら静かに声をかける。


埋まらないと分かっている。それでも、触れることしかできなかった。


数分後——


エリックはようやく拳を止め、ゆっくりと立ち上がる。


「すまないな、弱い所見せちゃって。」


「むしろ、ありがたかったぞ、エリック殿。しっかり人間だってことを確認できた。」


「そこかよ。」


エリックは、わずかに笑った。


——無理はしていなかった。


軍のキャンプは質素だった。


白い布の簡易テント。焚火の煙。無造作に置かれた毛布と装備。


どれも“生き延びるため”だけの場所だった。


エリックは焚火の周りにいる軍兵に声をかける。


「こんにちは、FREE(フリー)のエリックだ。」


その瞬間——空気が張り詰めた。


「……え、あの……英雄の……?」


「そうだけど、そんな構えなくていいって。」


エリックは軽く手を振る。


だが、誰一人として肩の力を抜かなかった。


それほどまでに、この場所は張り詰めていた。


(……軽口叩ける空気じゃないな。)


エリックは一瞬で理解する。


「任務は?」


短く問う。


「……瓦礫の撤去、負傷者の救助、魔物の排除……そして」


一人の兵が、喉を鳴らして続ける。


災害の悪魔(カタストロフ)の討伐です。」


焚火の音だけが、わずかに鳴る。


「……それと」


別の兵が、震える声で言った。


「どうか……無茶はしないでください。」


「戦場で散るのは……俺たちだけでいい。」


その言葉に、周囲の兵も黙って頷く。


——覚悟じゃない。諦めに近い何かだった。


「違うな。」


エリックは、静かに否定した。


焚火の火が、その瞳に映る。


「人は部品(パーツ)だ。」


「一つ一つに意味がある。」


「壊れていい部品なんて、どこにもない。」


誰も口を挟めなかった。


「僕たちが生きる意味は——」


一拍。


「幸せに生きることだ。」


「無駄死にすることじゃない。」


焚火の音が、やけに大きく聞こえた。


「だから——」


エリックは兵士をまっすぐ見た。


「お前も、生きて帰れ。」


「……はい!!」


張り詰めていた空気が、少しだけ緩む。


「……すげぇな、あの人。」


「やっぱ英雄って違うんだな……。」


そんな小声が漏れる中——


(……あれ、隣の人めっちゃ可愛くね?)


(え、金髪エルフとか実在したのかよ……。)


じわじわと視線がリサに集まる。


「……?」


リサが首を傾げる。


「私の顔に何かついてますか?」


「「い、いえ何も!!」」


ビシッと背筋を伸ばす軍兵たち。


「ならよかった。」


リサはにこっと微笑む。


——その瞬間


(無理だ、死ぬ。尊い。)


(守る側なのに守られたい……。)


数人の心が静かに折れた。


「おい、何人か戦闘不能になってるぞ。」


エリックが呆れたように言う。


「なんかしました?私?」


リサは首をかしげて軍人たちの方を向く。


「ひとまず休ませてもらおうかな。まだ災害の悪魔(カタストロフ)は上陸していない。」


「コーヒーなら一応……、少佐と中将が戻るまではキャンプでゆっくりしていてください。」


軍兵がインスタントコーヒーを開ける。


コーヒーの香りがテントに広がる。


「あのぉ、皆さんってどんな関係なんですか?」


少し力が抜けて、軍兵がエリックに話しかける。


「まぁ、旅する仲間って感じだよ。特別な関係じゃない。」


「拙者らには楽園(エデン)へ向かう目標もある。」


ルンタは少し誇りをもって言う。


『俺っちは、旦那の相棒!』


「クサナギはいったん黙れ。」


ルンタは即ツッコミを入れる。


「ってあの聖剣草薙の剣(くさなぎのけん)を手中に収めた、あのルンタさん!」


軍兵たちは一斉に土下座。


「七冠β(ベータ)と一戦を交えて生還した剣士さまがここに……!」


空気が一瞬だけ軽くなる。


——サッサッサ


遠くから瓦礫を踏む音。


一つ……二つ……三つ……


来る。


「そろそろ来ます。」


軍人たちは即座に別テントへ移動する。


——軍兵専用テント


「ピピ少佐、ソーマ少佐、ゾム中将が帰還しました。」


「ふぁ~死ぬかと思ったよ~。ねっソーマ君。」


「だからその呼び方やめろ。」


「おいおい、あんま喧嘩するなよ!」


元気な声が響く。


「報告で~す。任務は順調でした~。」


ピピがタオルで汗を拭く。


「大したことはなかった。FREE(フリー)の軍兵が来る前に何とかなりそうだな。」


「……ソーマ少将、FREE(フリー)の隊員もういらっしゃいますよ。」


「……そうだったのか。」


ソーマは軽く頭をかく。


「ゾム中将、FREE(フリー)の隊員が到着しています。」


「わかった。気づけば俺より出世しやがった()鹿()()()に会いに行くとするか。ピピ、ソーマ、行くぞ。」


「「はい!」」


(もしかして……お兄ちゃん来てるかな?)


「どうも〜ピピで〜す。あれ〜?ソーマ君も一緒だ〜!」


「次回予告に来るのは初めてだな、ソーマだ。」


「いよいよ俺たちの初陣だ!覚悟しろよ!」


「ゾム中将うるさい……。」


「ははは!次回予告で爪痕残さないとな!」


「……次回」


「ちょっと〜何終わらせようとしてるの〜♪」  


(クソ……早く終わらせられると思ってたのに……。)


「ソーマ君のほっぺ触り心地いい……。」


「やめろ!」


「そうなのか?じゃあ俺も。」


「ゾム中将もおやめください!」


「あぁざいこ〜とけちゃう〜」 


「ピピ!ガチで溶けるな戻れ!」


「ということで次回……」


「「「見捨てたものとなき苺の香り」」」


——ここから運命は加速する


「ゾムさん早く氷をピピを固体に戻せ!」

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