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三十六話 FREEと合流

世界は、壊れるためにあるのかもしれない。

崩れた街、叫ぶ人々、何もかもがぐちゃぐちゃでも、誰かの——お帰り!の声が聞こえる気がする。


——ただいま、と返すこともできず、拳を握りしめる。

泣き、怒り、笑い、そして立ち向かう。

その瞬間こそ、僕らが生きている証だ。


この章は、壊れた世界の隅で「おかえり」と声を交わすために戦う者たちの、ほんの少しの希望の記録である。


――聖剣の里を去ったエリック


「エリックの出身ってフクオカなんだね。」


「まぁな。僕が魔法軍の軍兵として育った場所でもあるしな。」


エリックが魔法を準備しながら言う。


「今回はゆっくり景色を楽しんでる場合じゃない。転移魔法を使うよ。」


三人と一本は黙って頷く。


「じゃ行くか。」


エリックは魔法陣に思いを乗せ、足を踏み入れた。


視界がグワンと揺れ、収まるまで少し時間がかかる。


次にエリックたちが雨音で目を覚ますと、THE()森という場所に出ていた。


「参ったな~。ちょっと座標をミスったな。」


エリックは頭をかき、すぐに地図魔法を展開する。


市街地までは、少しどころかかなり距離がある。


「飛行魔法で移動するよ。クサナギ、ルンタをよろしく。」


『あいよ!』


エリック達は魔力を込めるとフワッと浮き、そのまま上空へ上がる。


「ヒヤッホー、拙者が宙に浮いてる!」


『旦那、興奮しすぎだぞ。』


ルンタが珍しくテンションマックスで義眼を輝かせる。


「サイボーグなのに飛べないの?」


「リサ殿、サイボーグだからといってジェット噴射が必ず付いていると思うな。」


空から見ると、崩壊した市街地がよく見えた。


(あんなに町が……災害の悪魔(カタストロフ)、僕の思い出を!)


エリックは昔、母と妹と笑い合ったフクオカを思い出し、無意識に拳を握りしめていた。


「……ック」


「エリック?」


リサが心配そうに顔を覗き込む。


初めて話しかけられていることに気づき、エリックは我に返った。


「ごめん、何?」


「マチルダさんはどうして昨日の時点でエリックに伝えられたんだろう?あの壊滅状態だと通信もまともに機能してなさそうだけど?」


「あぁ、そのことね。マチルダは軍に所属してるからね。」


「あれ?アサクサ魔法協会の警備部長じゃなかった?」


そう、マチルダの職業は日本最大級の魔法都市のひとつ、アサクサ魔法協会の警備部長だ。


「まぁそれもそうだけど、FREE(フリー)って知ってる?」


FREE(フリー)?」


リサは首をかしげる。


「どこかで聞いたことあるような……?」


「魔法軍の中でもエリート中のエリートが所属できる、上官の命令を受けず自由に行動できる集団さ。僕とマチルダも所属してる。」


「……え?」


「だ・か・ら、僕とマチルダも所属してんの。」


(日本ってホント平気なの?)


リサはエリックとマチルダというバカ二人に、治安が保たれている日本を少し心配した。


「てか、そんな大事なこと、なんで言わないの!」


「あれ?言ってなかったけ?」


エリックはケロッとしている。


FREE(フリー)まで招集が来るってことは相当な強敵だ。今なら引き返せるぞ。」


「誰が引き返すのだ?」


「もう逃げないって決めたんだよ。」


『何度も言わせんなよ!絶対ぶっ飛ばそうぜ!』


みんなは笑って言う。


「そうだよな、ありがとうみんな。」


それから数十分後、フクオカの市街地に到着する。


エリックが降り立ち、周囲を確認する。


瓦礫が散乱し、軍人たちが必死に撤去や救助を行っている。


ブルーシートに横たわる人々の姿が、この町の崩壊を物語っていた。


エリックたちはブルーシートの前で祈りを捧げる。


さらに奥へ進むと、エリックのつま先に缶コーラが当たり、わずかに濡れる。


その先には、腕をこちらへ伸ばしたまま倒れている少女がいた。


エリックたちは、一歩も動けなかった。


「……エリック、見ての通りだ。酷いだろ。」


声のする方を見ると、冷たい声と震える肩を持つマチルダが立っていた。


「なぁマチルダ、これをやったのは災害の悪魔(カタストロフ)なのか?」


「あぁ、昨日のうちにすべて奪われた。ただ情報では、災害の悪魔(カタストロフ)は一歩も動いていない。ミミズのような使い魔が暴れ、その振動で大地震が起きて壊滅した。」


マチルダは腕を組み、唇をわずかに噛む。

淡々とした声の奥に、強い怒りが滲んでいた。


「マチルダ殿、拙者らも手伝わせてくれぬか?」


「危険な任務だ。覚悟はあるのか?」


「僕が何度も確認しましたが、こいつらは行くって聞かなかったんだ。」


エリックは頭をかく。


「ならいい。今日は仮設キャンプが軍で設置されている。そこで合流しろ。」


「……わかった。」


エリックの返事には、力がなかった。


――ガラガラ


キャンプへ向かう道は荒れ果てていた。

地面は割れ、液状化し、ぐちゃぐちゃになっている。


エリックは一軒の家で足を止める。


誰の家かは分からない。

だが、きっとここには日常があった。


――お帰り■■今日はどんな日だった?


――ただいま!■■ねぇ聞いて今日はね。


そんな声が、エリックの耳に幻のように響いた気がした。


エリックは耐えきれず、涙を流し地面に膝をつく。

そして何度も拳を叩きつけた。


――遅かった、気づくのも、向かうのも。


「絶対、僕が駆逐してや゛る」


エリックは海へ向かって叫んだ。


リサたちは、その姿をただ見つめることしかできなかった。


「作者いきなり重い展開やめろ。」


「だから言っただろエリック、作者の好みで激重展開があるって、ぶっちゃけこれ以上の重い章はそうそうないかもしれない。」


「こんな序盤なのに読者離れさせる気なの?」


「リサ殿の言うとおりだ。ドSなのか貴様は?」


「みんなはこうは言いますが一つ豆知識、この話の途中、俺の大好きの某ロックバンドの歌詞からインスピレーションを手に入れました。まじで尊敬してます。」


「じゃあ重い展開はどうにかならないのか?」


「頑張って乗り越えてエリック。」


災害の悪魔(カタストロフ)よりやばいよ絶対)


「次回——」


「「「部品と軍の中枢」」」


※今回の章ではこのように鬱展開がずっと続きます、もしきつくなった場合はすぐに離脱してください。

(救いはちゃんとします)by邪神

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