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三十三話 エリックの味とカザンの味

——戦いの後、張り詰めた空気がまだ残る避難所。


「そのためにも、まずは飯だな。」

のんきに麻婆豆腐のレシピを開くエリック。


(……料理できたっけ?)

リサは疑いの目を向け、聖剣たちも少しずつ集まる。

包丁も火も魔法で代用し、戦場の空気はみるみるほどけていく。


——ふと思い出す、数十年前の里のこと。


一本の桜のない枯れ木に、彼は魔力を込めて淡く花を咲かせた。

「これは俺が開発した、“木を一年中咲く桜に変える魔法”だ。」

便利な魔法じゃない、無駄に見える魔法。けれど、心を映す魔法——


(似てる……。)

リサは原初の魔法使いの笑顔を思い出す。


今日もまた、エリックの自由さが、世界をほんの少し温かくするのだった。

「そのためにも、まずは飯だな。」


エリックはのんきに麻婆豆腐のレシピを開く。


(エリックって……料理できたっけ)


リサは疑いの目を向けるが、豆腐を魔法で均等に切り分ける。


『働かざる者は食うべからず。母からの教えです。手伝います』


『あぁ。このまま見てるだけじゃ“他人任せ”のままだ』


聖剣たちが少しずつ動き出す。


包丁の代わりに魔力で刻み、

火の代わりに魔法で熱を操る。


さっきまでの空気が、少しずつほどけていく。


「……で、次どうすんだ?」


エリックが手を止める。


『は?お前作れるんじゃねぇのか』


「いや、レシピ見てるだけ」


一瞬の沈黙。


『お前が言い出したんだろ!』


——笑いが漏れる。


『ほら、こうやって炒めるんだよ』


『ほんと放っておけねぇな』


空気がやっと“日常”に戻る。


(エリックって……不思議だ)


リサはふと、昔見た劇を思い出す。


——原初の魔法使い。


戦いながら笑っていた男。


(似てる……)


「おいリサ、手止まってるぞ。“働かざる者は食うべからず”だ」


振り向くと、エリックは鍋の前ではなく漫画を読んでいた。


(こいつ……)


リサはため息をつきつつ、少しだけ笑う。


「それにしても、この里って一年中桜が咲いてるんだな」


エリックはようやく調理台に立つ。


もちろん食材には触れない。


『昔な、桜が好きなバカが来たんだ』


——⬛︎⬛︎⬛︎


「へぇ、こんなところに里があるのか」


数十年前。


一人のエルフが現れた。


青い瞳。


軽い足取り。


『どうやって入った?』


「うわっ剣が喋った!」


尻餅をつくほどの驚き。


だがその一方で、聖剣たちも動揺していた。


(結界を抜けてきた?)


「いやぁ迷ってさ。魔法でトーチ作ってたら見つかって。泊めてくれるんでしょ?ラッキー」


『おい、名前は』


「⬛︎⬛︎⬛︎だよ」


——その名前だけが、妙に霞む。


『……入れ。今夜だけだ』


「サンキュー」


彼は当たり前のように里へ入る。


『この里は“剣が剣士を選ぶ”。お前は魔法軍の人間だな』


「まぁね。少将やってる」


『自分で天才って言う奴は信用できんがな』


——パチパチ。


焚き火が鳴る。


「今日の飯は?」


『釜飯だ』


湯気が立つ。


米の匂い。


完全に“日常”の空気。


「いい炎だな。俺も炎系の魔法なんだ」


『見せてみろ』


「ほい」


——炎が揺れる。


だが赤くない。


燃やさない炎。


静かに熱を奪う光。


『赤くない……?』


「燃やせない炎だ。魔法使い殺しの炎ってやつ」


『面白いな、お前』


彼は笑う。


「お礼に一つ頼み聞くぞ」


『じゃあ、この里を綺麗にしてくれ』


「OK」


——枯れ木に魔力が流れる。


桜が咲く。


一面に広がる花。


夜を淡く染める光。


「一年中咲く桜の魔法だ。全部の木にかけた」


『実用性がないな』


「違うんだよ」


         ⬛︎⬛︎⬛︎


『便利な魔法は結果を出す。無駄な魔法は心を映す』


『あの人はそう言ってました』


聖剣の声が静かに落ちる。


麻婆豆腐はもう完成していた。


「ふふ」


『どうしたんですか』


「あぁ、親友に似てたんだよ」


『あれ……カザン様の魔力が……』


空気が一瞬揺れる。


「じゃ、ちょっと見てくる」


エリックは立ち上がる。


軽く手を振って、走り出した。


——舞台は戻る。

「あれ?これファンタジーだよね?なんでグルメが二つも出てるの?」


「リサ殿その反応は正しいぞ。作者食いしん坊なのか?」


(ルンタ、多分違うと思う。)


「はー、やっと書き終わった!」


「あ、作者だ。」


「皆さん、キャラの質問コーナー待ってるぜ。」


「急に入ってきて、関係ないこと言ってきた!」


「ここで一つすっごく優しいので⬛︎⬛︎⬛︎さんについてヒントを出しましょう。そいつの炎は公用魔法の炎とは鏡写しです。」


『わかんねぇ!答え教えろ!』


「そーだそーだ。」


「……次回」


「「「余韻と散り桜」」」


「答えは常にこの作品の中に……。」


「えっ?」


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