三十二話 救いと本当の気持ち
かつて、力こそ全てとされる世界があった。
強者は讃えられ、弱者は切り捨てられる——そんな場所で、聖剣たちは己の価値を求めて戦い続けていた。
だが、強さだけでは世界は回らない。
友情、信頼、そして誰かを想う気持ち——その小さな火が、時には全てを変える。
今回の舞台では、普段はどこか抜けているエリックが珍しくキレ、
「お前ら、他人任せにすんな!」と喝を入れる。
彼の怒声は、緊張と混乱を巻き起こすが、同時に場を和ませる奇妙な力も持っていた。
遠くで戦う者たち、見守る者たち、そして想いを抱える者たち——
その小さな心のぶつかり合いが、物語を動かす。
これは、力だけでは計れない正義と、
笑いと涙が入り混じった一幕の物語である。
——時は遡る。
「リサ、ルンタの言う通りだ。早く逃げるぞ。」
エリックはルンタに背中を預けたまま、振り返らずに言った。
「……でも、あの人……」
リサは一瞬だけ振り返る。
遠くで向かい合う二つの影——ルンタとカザン。
その間に流れる空気は、ただの戦いではなかった。
「大丈夫だ。あいつは、ああいう顔をしてる時は負けない。」
エリックは言い切る。
だが胸の奥に、小さな違和感が残った。
——
『カザン様……どうして……』
避難した聖剣たちがざわめく。
里はすでに避難体制に入っていた。
しかし安全圏に入った瞬間、空気は変わる。
『あれがカザンか?』
『思ったより大したことないな』
『鈍らに従っていたのか?』
一斉に広がる罵声。
最初は小さく、やがて避難所全体を覆っていく。
——その時。
『違います!』
一振りの聖剣が声を上げた。
『違います!』
空気が止まる。
記憶が蘇る。
——
『弱い剣に価値なんてねぇよ』
かつての言葉。
その中で、彼女は震えていた。
「やめろ。」
低い声が割り込む。
『……は?』
「同じだろ。」
カザンは静かに言った。
「こいつにも意思がある。」
その一言だけが、やけに温かかった。
——
『私は……カザン様を裏切った』
聖剣の声が震える。
——あの時。
『何してんだ?』
カザンは立ち尽くしていた。
目の前では、別の聖剣が傷ついていた。
その周囲で笑う影。
『説明しなくていい』
カザンは低く言った。
『お前が嫌々やってたことくらい、分かってる』
一瞬だけ視線が逸れる。
『……だから、やめろ』
その声は確かに優しかった。
——だが記憶は途切れる。
胸がひりつく。
『だから……本人のいないところで、言わないでください』
——
「人も聖剣も、変わらないな。」
エリックは吐き捨てるように言った。
——ドンッ。
遠くで爆音。
焦げた匂いが風に混じる。
リサが肩を跳ねさせる。
「ちょ、エリック何言ってるの!」
だがエリックは止まらない。
「あいつが前に立ってる時は何も言わなかったくせに、今になって好き勝手言うのかよ。」
一息。
「勘違いすんな。あいつがクズなのは変わらねぇ。でも、それとお前らが何もしない理由は別だろ。」
聖剣たちは黙る。
「あいつに全部押し付けて、都合悪くなったら切り捨てる。それを他人任せって言ってんだよ。」
リサは驚いていた。
(こんなエリック、初めて見る)
普段はふざけている男が、今は真っ直ぐ怒っている。
『黙れ!部外者が!』
一本の聖剣が叫ぶ。
「部外者だよ。」
エリックは一歩進む。
「でもな、だからこそ見えてる。」
空気が張り詰める。
「壊すのは簡単だ。でも、それで終わりにすんなよ。」
沈黙。
誰も動かない。
そして——
「……でさ。」
場違いな声。
「飯、ねぇの?」
空気が止まる。
『は?』
『は??』
一斉に困惑。
「いや腹減ったんだけど。昨日からまともに食ってねぇし。」
エリックは頭をかいた。
「このまま終わる方が気持ち悪いだろ。」
「ちょっと!?今の流れでご飯!?」
リサが叫ぶ。
「でも私もちょっと空いてる……」
いつの間にかエリックはエプロンをつけていた。
(どこから出した)
聖剣たちの思考が一致する。
食材はすでに並べられていた。
豆腐、ひき肉、ネギ、ニンニク、豆板醤。
「よし、麻婆豆腐だな。」
「勝手に進めるな!」
リサがツッコむ。
だがその時——
『……それ』
一振りの聖剣が震える。
『カザン様の……好物です』
声が震えていた。
『あの人も……悩んでたんです。強さだけの世界が嫌で……』
沈黙。
『だから……変えよう』
小さな声。
『今までの里を……変えよう』
空気が、少しだけ動いた。
「エリック今回どうしたの?」
「エリック殿、熱でも出ているのか?」
『エリックらしくないぞ!』
「そんな心配しなくても、今日僕、かっこよかったよな。」
「女性ファン増えるかな?」
「「「それのためかよ!」」」
『モテるのは俺っちだからな。なぁ姐さん。』
「……少なくともこの人たちはモテるわけないね。」
「次回……」
「「「エリックの味とカザンの味」」」
「みんな!感想と評価待ってますよ!(特に……)」
「そのあとは言わせません。」




