二十八話 あちら側とこちら側
聖剣は、選ぶ。
持ち主を。
強さを。
——価値を。
だがもし、その選別そのものが歪んでいたとしたら?
選ばれることが正義で、選ばれないものは価値がない。
そんな思想が、もし“当たり前”として根付いた場所があるとしたら——。
これは、そんな里の話だ。
そして。
かつてその場所から追放された一本の剣と、
そこに足を踏み入れることになった一人の剣士の物語。
軽い剣と、重い価値。
そのどちらが正しいのかは——まだ誰も知らない。
——ザッ、ザッ、ザッ。
老人がなぜか先頭を歩き、エリック達を導いていた。
「ここで少し里の成り立ちを——」
「興味ないからいいや。」
エリックは即答で切った。
「そこは聞いてくださいよ!」
リサが目を輝かせる。
富士山周辺の魔物は多い。
だが今の彼らには、足止めにもならなかった。
やがて老人は立ち止まる。
「ここだ。」
「え?」
リサが首を傾げるのも無理はない。
——何もない。
ただ森が広がり、風が葉を揺らしているだけ。
エリックはニヤリと笑い、手をかざす。
「なるほど。強い隠蔽結界だな。」
「そうだ。“聖剣を持つ者のみ”通れる」
老人はそう言って、そのまま結界へ入る。
「は?あの爺さん普通に入ったぞ。」
(……そんな話、してなかったよな?)
エリックは眉をひそめる。
「隠してるってことは、後ろめたいってことだろ。」
三人も続き、結界を越えた。
——
世界が変わる。
空気が重く、音が遠い。
桜が舞い、巨大な鳥居が立つ。
そして——剣が浮いていた。
無数の剣が、まるで生きているように。
『おい、見ろ。上物が来たぞ』
『あの剣士、今までで一番だ』
聖剣たちがざわめく。
視線がルンタに集まる。
『なぁ、俺と組まねぇか?あんなボロ刀より上だぞ』
「必要ない。」
ルンタは即答した。
「拙者には、もう愛刀がある。」
『は?どんな雑魚剣だよ』
ルンタは静かに抜く。
クサナギ。
——その瞬間。
沈黙。
『……おい、なんで出てくる』
聖剣の声が止まる。
空気が変わる。
『……お前ら、騒ぎすぎだろ』
低く、クサナギが呟いた。
ざわり、と聖剣達が一斉に引く。
『なんでここにいる』
『いや、ありえないだろ』
遠くから、別格の気配が現れる。
——ザッ。
空気を切り裂くように一振りの剣。
『キャー、カザン様!』
『来た……!』
カザンはゆっくりと前に出た。
そしてクサナギを見下ろす。
『クサナギ』
『まだ“軽い剣”を持ってるのか』
空気が歪む。
『捨てろよ、それ』
『恥だ』
声が重なる。
クサナギの刃が震えた。
(またかよ……)
カザンはルンタへ視線を移す。
『お前ほどの剣士が、そんなガラクタで満足か?』
「……」
『俺と契約しろ』
『この里の頂点まで連れて行ってやる』
「断る。」
即答。
空気が凍る。
「拙者は、もう選んでいる。」
『は?』
「それ以上の理由がいるか。」
——ピキッ。
何かが軋む音。
『面白い』
カザンは笑った。
だが目は笑っていない。
『なら証明してみろ』
『その“軽い剣”に価値があるのか』
「必要ない。」
老人が割って入る。
『黙れジジイ!』
空気が一気に殺気へ傾く。
老人は一度息を吐いた。
「……悪いな、隠していた」
その体が変質する。
剣へと変わる。
『元里長、ロウだ』
『そしてカザンは、私の息子だ』
空気が止まる。
『ジジイも追放したくせに……まだ来るのか!』
カザンの殺気が膨れ上がる。
桜が止まる。
風が死ぬ。
ロウは静かに続ける。
『それと——』
『お主ほど“軽い剣”はないな』
——ドンッ。
大地が唸る。
溶岩が地面から噴き上がる。
『二度と口をきけぬようにしてやる』
『ふっ、早速次回予告に参加できたぜ、カザンだ!』
『あのさぁ、前回の次回予告、俺っちあんだけカッコつけたんだから、今回突然仲良く来ないで!』
「それはそうだ。今回ここに呼ばれたのは、拙者とカザンとクサナギだけらしいな。」
『少しは作者の悪口言えるぜ。』
『なんで、俺をクズキャラにしたぁぁぁあ!このクズ作者ぁああああ!』
『いやこのクズっぷりは逆になんか人気出ると思うよ。』
「こんちは、今なんかクズって聞こえたけど気のせい?」
「『『気のせいですよ、ほんと毎回イケメンですよね。』』」
「そっか♪じゃあ次回——」
「『『カザンと親子喧嘩』』」
『バレなかったぁ。』
「知ってるよ全部。」
※ この言葉が、最後の余裕になるとは——まだ誰も知らない




