二十二話 武士の誉れと強くなる理由
世の中には、勝てると思った相手に限って勝てないことがある。
そして、勝てないと思った相手に限って、死ぬほど強い化け物が待っていることもある。
さて、彼の刀は半分になってしまった。
だが、心の太刀は折れていない。いや、折れるわけがない。刀は命。命を賭ける覚悟がある限り、刀は折れない——
「待っていた……?拙者を知っているのか?」
「シャークとの戦い全て見させてもらった。素晴らしいものだった。」
βは拍手をする。
(こいつ魔族なのに拙者を褒める?)
ルンタは警戒を強める。
「まぁまぁ、構えをとけ、殺すつもりはない。」
「いいのか?魔族はなりふり構わず殺すものだと思っていた。」
ルンタは構えをとくが心の太刀は構えたままだ。
「やはり素晴らしい。刀を“命”と言ったな。その覚悟の差で負けたのだ。」
βは呆れでため息をつく。そして目には深い憐れみがあった。
「貴様も心に太刀を持っている、私と同じだ。それで一つ提案がある。」
βはルンタに手を差し伸べる。
「私の元に来ないか?私ならきっともっと強い剣士に育てられる。」
——間が空く。
そして決意した目でβを見つめる。
「いいだろう——と過去の拙者は言っただろう。」
ルンタは目を伏せ、唇をわずかに噛む。心の中では迷いと警戒が交錯している。
——しかしその拳は自然と緩み、心の太刀はまだ構えたままだ。
「しかし、今は帰る場所がある。そこから離れられぬ。もう少し出会っていたのが早ければな。」
「そうか……残念だ。なら、せめて私の経験の糧となれ。」
βは鞘から静かに刀を抜いた。
(……なんて素晴らしい構え……戦国の世でも見たことのない。)
ルンタが驚くことにも無理はなかった、βの構えには一切の隙がなく、無駄もない。
構えだけで強さは大体わかる、ルンタは恐怖で体がすくむのを防ぐために息を深く吐く。
「構えも素晴らしいではないか。ルンタ!」
「何故名を知っている。」
「強者の名はすぐに調べるものだ。」
βは剣先をルンタの喉元につけた。
——来る!
そう思った時には刀が眼前に迫っていた。
ルンタはギリギリ半分の刀身になってしまった愛刀で受ける。
(まだ戦える、死ぬまで喰らいついてやる。)
「抜きの太刀・抜刀」
ルンタはβの刀を受けたまま体で押して、βの体勢を崩して次を狙う。
「いい動きだ。ただ……。」
βは驚異的な体幹で耐える。
「私にはその手は通じない!」
βはルンタの首を狙う刀を振る。
ルンタはバク転で後ろに回避する。
——ジャ
βが後を狙うとそこからは激しい刀の競り合いだった。
βが狙うところを勘で刀を合わせ時折赤い火花見える。
「私相手にここまでついてくる剣士を拝むのは久しぶり?いや初めてだ!」
βは刀を丁寧に返しながら言う。
「“ついてきている”と言ったら嘘になるな。拙者は——刀が折れぬ限り、折れぬだけだ。」
(この一撃に全部賭ける。)
——フゥー
ルンタは息を深く吐く。
(拙者も拙者で楽しんでしまったな。)
——奥義・命炎
ルンタは全部の力を刀に使う。その太刀には炎が映っていた。
ルンタはβの右肩に刀をつける。
——ウォォオオ
(腕だけじゃない体全部使え!)
そしてついにβの右肩を切断した。
「次は……はぁ……首だ!」
ルンタはまだ立つ、死ぬまで立ち続けるのだ。
「あっぱれだ。私の右肩を切りまだ立ち続けるのか。私の技をまだ見せていなかったな。失礼した。」
——瞬断
振った刀は見えなかった。
勘で刀で受けたが刀が木っ端微塵に破壊されてしまった。
——ビュ!
音が遅れてくる。
——コツコツ
βがゆっくりルンタに向かって歩く。
ルンタが切り落とした右肩は再生させられていた。
「安心しろ、刀を持たないものは殺さぬ。」
βはルンタの首に刀をつける。
「今日の試合楽しかったぞ。ただ……次強くなっていなかったらその時は殺す。」
βから戦場全てを覆う殺意が漏れる。
ルンタは音に背筋が凍る……だが、まだ立つ、死ぬまで立つ。
「安心しろ、お前はもう入りかけている」
——コツコツ
ルンタにアドバイスを残してβは去った。
(さっきの太刀音を置いてきぼりにしていた……次はどうなるかわからない。)
——エリック殿の隣に居続けたい。
「拙者はまだ強くならねばならぬな。」
ルンタはそっと去ろうとした。
『おい!待てよ!』
空気に飲まれ声を潜めていたクサナギが声を上げる。
『あんた、すげぇよ。半分の刀身で戦いぬいたんだよ。』
クサナギがルンタの手元に勝手に入り込む。
『あんた、丁度刀壊れただろ?俺っちを使ってくれ、俺っちはあんたに惚れたんだ。』
「……まじかよ。」
『そっちの意味じゃねぇ!』
ルンタが答えを言う必要はなかった。
——ルンタ草薙の剣獲得
「……なんで連続主役貰ってんだよ。」
「そうだよルンタ、ルンタが主人公と錯覚する人が増えるよ!」
「エリック殿、リサ殿、作者の動向だから仕方ない……。」
「あと作者的に拙者が一番好きらしいぞ。」
「……主人公の僕じゃないのかよ。」
「か弱くて可愛い私じゃないの……?」
((か弱い……?))
「あれ?俺、リサをか弱く作ったつもりは……」
——ズボ
「その魔法久しぶりだな。作者も見事にかかってる」
(語り部の一言:読者も被害者です)
「次回」
「「繋ぐ命と青い炎」」
「作者もう一度言ってみて?」
「リサ様はか弱くてcutieです」
「なんで英語?」




