十九話 エリックと飢える者
人は何に飢えるのだろう。
金か。
力か。
それとも、誰かに思われることか。
森の奥には、飢え続ける魔物がいるという。
食らい、奪い、再現し、
満たされることなく強くなり続ける存在。
一方その頃。
金貨85枚に目を輝かせる男がいた。
「グヘヘ」と笑いながら、
自分が何に飢えているのかも知らずに。
飢えは、形を変える。
炎を喰らい、力を奪い、
恐怖を糧に、怪物は進化する。
だが忘れるな。
人は、思われている限り、一人ではない。
これは——
飢える者と、
飢えを知らない馬鹿と、
そして“思われること”を恐れる少女の物語。
森は静かに、
その答えを待っている。
「なぁ?“ハイオーク”についてなんか知ってるのか?」
「うーん。路銀のために受けたけど……正直どんな魔物なのか……」
リサは首を傾げる。
「オークについては知っていますけど……。」
ここで少しオークについて説明しておこう。
この世界のオークは軍隊を作って旅人を襲う魔物でオークはとにかく硬い、生半可な魔法では倒し辛い。
こういう時こそ“前衛”が必要なのだが、彼らはそれに逆張りして魔法使いだけで倒そうとしている。
「オーク……昔僕達と戦ったが、中々苦戦したものだ。」
「平気なんですか?それ?」
リサは少し心配になる。
——ザッザッザッ
湿った森の地面を踏みしめる音だけが続く。
夕陽が木々の隙間から細く差し込み、二人の影が長く伸びていた。
ハイオークの生息域に近づくにつれてリサの顔が曇ってくる。
「死にませんよね?」
「急にどうした?」
「少し弱音吐かせてください。」
リサはフゥーと息を吐いた。
「また一人になってしまうのが怖いんです。」
「なぁ?人が本当に一人になる時っていつだと思う?」
エリックは急に話題を振る。
「…… 弱音を吐けなくなった時でしょうか?」
「それもある……しかし違う。」
エリックは柔らかく笑う。
「誰からも思われなくなった時だ。いいか?リサ、お前はもう一人じゃない。思ってくれる人がいるから。」
その横顔を、夕陽が橙色に染めた。
「だから、リサも僕のことルンタのこと、ずっと思っててくれないか?」
風が吹き抜ける。
リサは少しだけ目を伏せてから、顔を上げた。
「あなたのような人を忘れるわけありません。」
その声は、もう震えていなかった。
——ザッ。
二人の歩幅が、揃う。
奥へ奥へ進んでいくと、森の木々が根こそぎなくなっている。
——グォォォオ
地を這うような声。
いる。
「リサ、近くにいる。今なら引き返せるよ?」
「馬鹿にしないでください。思われる限り私は死にませんから。」
リサは覚悟を決める。
「ダレダ……?オレ……ハ……ウエテイル。」
姿を現したハイオークの姿は禍々しいものだった。
左半身は鱗で覆われ、右手にはクロスボウ、左手はに竜の爪、左足はオーク由来のがっしりとした足。
——そして背中には大剣が刺さっていた。
(これがハイオーク……。今まで戦ってきたどの魔物よりも……)
——怖い
リサは恐怖に体が支配されそうになる。
「エリック行くよ。」
「炎の直線」
リサは遅刻魔戦時よりも洗練された炎を放つ。
(私はあの時とは違う。)
ハイオークの皮膚を軽く焼くだけで大したことではないようだ。
——ギギギ
クロスボウの弦が軋む音が、森全体を締め付けた。
そしてハイオークがクロスボウを引く。
——ズドン
ハイオークがリサに向かって魔法の矢を放つ。
防御陣が展開する。
淡い光が幾重にも重なる。
——一瞬、止まったように見えた。
次の瞬間、
音もなく砕け散る。
肩から血が伝う。
(矢のしていい威力じゃないだろ……。)
エリックは痛みを息を吐いて誤魔化すが衝撃で膝が半歩下がってしまう。
「モロイ……コレナラ……クエル!」
ハイオークは突進で距離を詰める。
(速い……!あの巨大であのスピード?)
エリックとリサは地面を転がって回避したがハイオークの通った道は陥没していた。
(即死級の大技……くらえない。)
エリックは肩を抑えながら立つ。
(僕は、軽い回復魔法しか使えない。こんな大怪我は傷を和らげることが精一杯だ。)
(エリックが、押されてる……!隣に立つなら!)
「燐光炎極」
リサはついに合成魔法を自分のものにした。
(前回、自販機魔獣に放った時と魔力の配合を最適化した。少しは魔力消費を抑えられてるはず……。)
リサはエリックの前に立って白い炎を放つ。
白い炎は右腕を焼き尽くし、クロスボウを破壊した。
(届く!届くぞ!私の魔法が効いている……!)
リサは前回の半分の魔力消費で放つことができた。
短期間での成長スピードは、エルフ、魔法使い合わせても群を抜いている。
今の彼女は一級魔法使いでありながら特級に届く可能性を秘めている。
「フー……ウマカッタ……。キチョウナ……ミギウデ……ヲ……ウシナッタノハ……ザンネンダガ……。」
ハイオークの、焼かれたはずの腕に白い炎が包み込む。
「シロイ……ホノオ……ハ……クッタ!」
ハイオークの固有魔法“飢える者”食べた物を体に再現する魔法。
彼の特徴は全てこの固有魔法による物、そしてハイオークが“食べられる”と思ったものは全て対象となる。
(白い炎が……。効いていない?)
——いや正確には効いていないわけではない。
白い炎が、逆流するようにハイオークの肉へ吸い込まれていく。
“食われている”のは、炎の方だった。
「久しぶり!マチルダだ!」
「マチルダ殿……何話ぶりだ?」
「うるせぇ!」
「師匠も大人げないですよ〜。」
「作者!出番よこせ!」
「出番に飢えてる……。」
「拙者は次主役らしい……。」
「マウントかな?後で◯ろ◯ぞ!」
「丸つける位置……。」
「と言うことで次回」
「「鮫と物の価値」」」
「さ◯?」
「そこにつけなくていいですよ師匠。」




