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十七話 夕焼けとキョウト


「もしもし、マチルダ……?」


エリックは遠くの人と会話する魔法でマチルダに連絡する。

かつては“電話”と呼ばれていた技術に近い。


「朝からうるせぇな……。」


マチルダは寝癖が立ったまま言う。


寝ぼけた目を擦って続ける。


「俺に関しては今日退院する……。義手も届いたし……。」


「エリック様!僕も悔しかったんですよ!」


横で会話を聞いていたアヤが膝を叩く。


「“留学”に行く支度をしていた時に……。準備を早くしていれば……。師匠の大事な右腕を失わせてしまった。」


「気にすんなっていったろ。お前の夢は“誰にも負けない魔法使い”になることだろ。俺はそれの踏み台になればいい。」


マチルダははっきり言った。


「でも師匠。僕の固有魔法は、物体を切る魔法(セクアトルム)ですけど……。ハサミ程度の切れ味しかありません……。」


(何か引っかかる……?)


リサは謎の違和感が喉に引っかかる。


「で?お前らはどこへ行くんだ?」


マチルダは欠伸を噛み殺して言う。


「僕たちは今、西の都市“キョウト”に行く。」


「へぇ〜。観光か?」


マチルダはまだ頭が回っていないのか、ぽかんとした表情で返した。


アヤはその様子を横目で見て、少し苦笑する。


「師匠……。楽園(エデン)ですよ……。」


「あぁ。そうか、アーティファクトの一つ“草薙の剣(くさなぎのけん)”を取りに行くんだな……。

平気なのか?戦争時代にすこしかじったくらいの剣術で……。」


「心配はない。」


エリックは右隣のルンタを映した。マチルダは全てを理解して


「安心だな。サイボーグ、この馬鹿を頼むよ。」


「おまかせあれ。馬鹿を制御するのは拙者だ。」


「おい!馬鹿じゃねぇぞ!」


エリックは八つ当たりでルンタを叩いた。


——ガタン、と列車が揺れる。



——15分後キョウト駅に到着した。


扉が開くと一斉に乗客が駅から出ようと押し寄せる。エリック達は人の波を押し除けてなんとか駅から出る。


「す、凄かったですね、エルフの里では見たことのない人の数でした……。」


「戦はもっと人が多かったなぁ……。」


「老害の戦国バージョン?」


「ツッコミがツッコミしてない……。」


リサは何事もなかったようにあられを頬張る。


——ガリガリ


リサは駅の売店で小袋の八つ橋を手に取り、にっこり笑う。


「こっちの味も気になる……」


エリックは横目で見ながらため息。


「また食うのか……」


リサは満点の咀嚼音を響かせながらキョウトの街を歩く。


「うまそうだ……とりあえず宿を探してそこを拠点にしてダンジョンを攻略の準備を進めよう。」


エリックは食欲を振り払うために思考を巡らせる。


「そうだな。それにしても、街並みが拙者の生きていた時代によく似ている……。」


ルンタは懐かしさを覚え少しテンションを上げる。


「やっぱり、老害の戦国バージョン?」


ルンタから冷たく鋭い目線が飛んでくる


「リサ殿、輪切りにしてもいいか?」


「いいんじゃない?」


リサは知らねっとあられを気にせず食べる。


「ちょっ、ギャー。」


エリックはルンタに斬られそうになったが、何度も避け続けてその間に宿を見つけて一命を取り留めた。


宿に入る頃にはエリックだけボロボロになっていた。


(お客さん?どういう状況?)


しかし受付は職務に徹する。


「こんにちは、キョウト駅前宿屋です。ご宿泊ですか?」


「はい……。ゲボ……。」


エリックは掠れる声で言う。


「銀貨三枚です。」


震えるエリックの代わりにリサが代金を支払う。


エリックは木で作られた部屋につくとベットで死人のように横たわる。


「……少しやりすぎたか?」


「気づくの遅せぇよ……。」


——ドサッ


天井の木目がゆらゆらと揺れる。


列車の振動がまだ体に残っている気がした。


(キョウト……か。)


目を閉じる直前、楽園(エデン)の白い光が一瞬だけ脳裏をよぎる。


そして意識は沈んだ。


「……死んだのか!」


ルンタは本気で焦る。


「こんなことで死んでたら“英雄エリック”ではありませんよ。」


リサはそっと布団をかける。


リサ達が窓の外を見ると地平線に日が沈もうとしていた。


橙色の光が木目全体に広がりリサ達を優しく照らす。


「……綺麗ですね。」


リサは窓枠に頬擦りしながらうっとりする。


「あぁ……。リサ殿と面と向かって話すのは初めてかもな。」


ルンタはリサの隣にそっと寄る。


夕日がルンタの蒼い瞳を淡い橙に溶かす。


「リサ殿はどうして、エリック殿について行こうと思ったのだ?」


ルンタはリサの目をまっすぐ見る。


「それはね……。戦争で死んだ兄の大親友によく似ていたんですよ。馬鹿なところとか、自称イケメンなところ……。そして、」


リサは窓の外の橙色の遠くの空を見ながら言う。


「あいつは戦場では、迷わないんです。」


リサはルンタを見て真夏の向日葵のように笑った。


「…そうか。」


ルンタはエリックのほうをチラッと見る。エリックは寝相がとても悪くもう既にベッドから体をはみ出していた。


「馬鹿は放っておくとすぐ死ぬからな。」


「ふふっ……。ですね。」


二人は同時に、スースーと寝息を立てるエリックを見た。


「聞こえていたら面倒だったな。」


「ええ、きっと三日は自慢します。」


二人は小さく肩を揺らして笑う。


二人の影が、畳の上で少しだけ重なった。


「……夜景も綺麗だなリサ殿。」


「ええ、月が綺麗ですね。」


「……!リサ殿今何と?」

「えっ?だから月が綺麗ですねって……。」


「リサ殿、拙者でよろしいのか?」


「ルンタ何か勘違いしてない?」


「リサ殿は拙者に恋愛的に好いているのじゃないのか?」


「ルンタ……意外とロマンチストね……。」


「違うのか?」


「……と言うことで次回」


「「グレると聖剣」」


「ルンタ、人としては好きだよ。色んな意味で」

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― 新着の感想 ―
今ちゃんと読んでみてるけど、意外と結構おもろい
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