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十六話 英雄と馬鹿

歴史は、だいたい勝者が書く。


滅んだはずの里も、

黙認された支配も、

“仕方なかった”の一言で片付けられる。


世界は合理的だ。

勝てば正義。

生き残れば真実。


だが——


それでもどこかで、

竜は生き延び、

教師は黙って見逃し、

英雄はイケメン論争でへこむ。


本当に世界を救うのは、

完璧な存在ではないのかもしれない。


圧倒的な武力でも、

神話級の剣でもなく。


少しバカで、

少しチョロくて、

それでも誰かを笑わせてしまう存在。


魔導列車は走る。


滅んだことになっている世界の上を。

黙認され続けた平和の上を。


そして今日も、

モテない英雄は京都へ向かう。


——歴史に書かれない物語の続きへ。



竜達はグングンと空へ昇っていく。


音をどんどん置いていき、やがて地上に躍り出た。


道行く人は目を丸くし、理解が追いついていない。


「ついた……。久しぶりに地を踏み締めた……。」


エリックは息をつく。


そこは偶々、研修監督室だったのでアユミが腰を抜かす。


「お前ら生きてたのか?」


アユミは驚きを隠せない。


「……地下には竜の里がありました。」


「竜の里……?そんなもの数百年前に()()()だろ?」


アユミは息を整えながら言う。


そう、竜の里は数百年前、七冠のΩ(オメガ)によって壊滅させられた……。


——歴史上では


しかし、ドラの父や様々な力があって里の一部をあのダンジョンの中に移転させることに成功した。


そのため現在もあり続けるのだ。


さらに、七冠の支配下には魔族統治国家も存在していた。

圧倒的な武力と技術で人々を従わせ、街や国の大部分は既に魔族の支配下にある。


人間は管理され、民の多くは心を失い、王や上位の魔族以外は差別される国。


ここもまた、アユミを含む全人類黙認をし続けた。


——勝ったからだ。


「……まぁいい。何故()()もいた?」


「三日?三日も迷ってたのか?」


「あんたらねぇ、身に危険があったら私が怒られるのよ。」


「まさか、あんな強いS級(エスクラス)がいるとは思わなかったけど……。」


アユミはあたまをかく。


「避難用の魔法式も渡したよね?」


「あっ……。」


「忘れんな!」


アユミは呆れる。


「……こっちもな()()なんだ。生徒の安全も守れない教師は必要ないんだよ……。」


「いいか?卵ども、無茶と冒険は違うんだ。たまには逃げることも覚えろ。」


アユミはコーヒーを啜りアユミは思い出したように言った。


「あと……エク、お前、どっかで見なかったか?」


(バレた……?まずい大講義会が始まって旅立つのに遅れる……。)


「えっ、み、見間違いでは……。」


エリックは明らかに視線を逸らす。


(嘘つくの下手すぎません……。)


「見間違いですよ。会っていたとしたら試験開始の時に気づきますよ。」


リサは二日酔いの回らない頭で芝居を打った。


「まぁ、そうだよな、あの、“英雄エリック様”はもっとイケメンだもんな!あぁ私の顔の好みなんだよな。」


エリックの顔つきが変わった。


「実は僕……エクって偽名使ってたけど本当は……んんん!」


エリックは低い声で口説こうとしたがリサに口をチャックで閉める魔法で閉じる。


前回の仕返しだ。


「すみませんね、あなたの言う英雄はこんなにチョロい訳ないじゃないですか?」


「そうだ。英雄はもっと誇りがあって、容姿で一喜一憂はしない()()()()()ならな。」


リサとルンタが愛想笑いしながらエリックを引きずり出す。


「最後にキョウトの行き方を教えて。」


「キョウト……。かぁ、魔導鉄道を使うのがいいぞ。」


「近くに新新宿駅(しんしんじゅくえき)がある。そこからキョウト方面に乗れば三十分でつく。」


(駅名……。)


リサはアユミにお礼を言って去った。


エリックは魔法を解除したが悲しげな背中で後を追った。


(……やっぱりあいつ、英雄エリックだろ。)


アユミはとうに気づいていた。


しかし事前のマチルダの頼みで別人ということで扱っていた。


(それにしてもあれほど、バカだったとは……。)


アユミは研修監督室の抜けた穴を修理する。


(まじで……こんなやつに救われたのかこの日本って国は、面白いなほんとに……。)


アユミは呆れてしまう。


しかしそれと同時に笑みが溢れる。


(本当の英雄は武力だけじゃない……最高にバカでくだらない、そんな姿が人々を笑顔にする……。そんなやつのことか?)


アユミはコーヒーを一口飲み、静かに笑った。


——魔導列車内


——ガタンガタン


「別に……イケメンは否定しなくてよかったじゃん……。」


エリックは完全に萎えて背中を丸めている。


「はぁ……。このままバレてたら、列車には乗れてません。」


リサはエリックの背中をさする。


「エリック殿はでも一般から見たらイケメンでは?」


「……モテねぇんだよ!」


エリックはルンタを睨みつけた。


その目は一瞬だけ、戦場を知る者のそれになる。


ルンタは固まってしまう。


「なんでもない……。」


——ガタン


列車の駆動音が殺意を元に戻した。


リサがコツン、とエリックの額を指で弾く。


「英雄がイケメン論争で凹まないでください。」


「痛った!何すんだよ……。」


エリックはついに体育座りで丸まってしまった。


「……こんなのが英雄でいいですか?」


——ガタンガタン


こうして、モテない英雄、お母さんのようなエルフ、余計なことを言ってしまったサイボーグ、を乗せて魔導列車は次の都市“キョウト”へ向かっていった。


(…… こんなのでいいんですよ。)

「うわーん」


「出オチすぎ!」


「うわーん」


「流石にリサ殿も言い過ぎじゃなかったのか?」


「うわーん」


「……ちょっとだけ、ね。」


「うわーん」


「……。」


「うわーん」


「「エリックのセリフ“うわーん”だけ!」」


「ということで次回、」


「「夕焼けとキョウト」」


「「「うわーん!」」」

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