十五話 終演と脱出
——宴会も終盤に差し掛かる。
『そろそろ、会も終演だ!残さず食えよ!』
ドラが豪快に肉を食べる。
『そうだ、お前ら、なぜ、このダンジョンに来たのだ?』
ドラがエリックに聞く。
「僕たちは、楽園を目指してる。」
——一人と一頭の間に風が吹く。
「なんだ、笑わないのか?」
エリック酒を一口飲む。
エリックは眠ってしまったリサをそっと撫でる。
リサは嬉しそうに笑う。
『人のでっかい夢を馬鹿にはしねぇよ。』
ドラは静かに言った。
『楽園……名は知っている。12個の地図の破片、12個のアーティファクトを集めないと辿り着けない、全ての魔法が集う地……。』
ドラはマヨネーズたっぷりの唐揚げを頬張りながら言う。
「しかも、国に一つずつしかない……。ある国も全く検討がついていない……。」
エリックは肩を落とす。
『エリック、その状態で旅してたのか?』
「あぁ。無謀だろ。」
エリックは自嘲気味に言う。
『なら、少なくとも知っているアーティファクトの場所がある。』
「……!」
『そこは、西の魔法都市“キョウト”にある清水寺の最深部にある“草薙の剣”だ。』
キョウトはアサクサに注ぐ日本の中でも有数の魔法都市。
キョウトは魔法のなかった時代を守る文化が強く根付いていて、今も数多く残っている。
『楽園を目指したものの最初の鬼門だ。』
「取りに行くだけだろ?もう既に取られてるかもしれないぞ。」
エリックは残り少なくなったジョッキを軽く傾け、考えるように泡を眺める。
ドラは骨つき肉をかじりながら、にやりと笑う。
『いや、誰にも取られていない……。』
エリックは酒を注ぎ、ゆっくりとジョッキを傾ける。
「何でだ?」
『草薙の剣は、認めた強い剣士にしかつかない、めんどくさい性格でな……。』
ドラは骨をポイっと捨てる。それをすかさず別のドラゴンが拾い捨てる。
『多分、お前達を認めないだろう。』
「はぁ?認められねぇのかよ。」
エリックは泡を揺らす。
『本当にめんどくさくてな、今まで何人も取りに行ったが、全員認められなかった……。』
「じゃぁ、認めさせればいいんじゃないなぉ?」
起きたリサがゆったりと喋る。
『お嬢ちゃん、そう簡単な話じゃねぇんだよ。あいつは本当にうざくて、めんどい。』
(ドラがこんなに念を押すくらいめんどくさいのか……。)
しかしエリックは笑っていた。
「面白い!余計認めさせたくなった!」
「話は聞いた。拙者が手懐ける。」
いつのまにか隣に座っていたルンタが、ジョッキを軽く揺らしながら言う。
『ガハハハ。やっぱ若者はこうでないとな!明日には出るだろ?寝てる間に、道を開けておく!明日に備えて今日は休め。』
そう言い残しドラは去った。
こうして愉快な宴会は終わり、皆は帰路についた。
笑い声はまだ耳に残るが、夜の空気に溶けていく。
少し寂しくもあるが、彼らには帰るべき場所がある
——それぞれの、心の居場所が。
——翌日
朝という感覚はエリック達はなかった。
かろうじて目覚まし時計が鳴ったため朝とわかった。
(忘れてたけどダンジョンの中かここ……。)
エリックは腕を大きく伸ばす。
「うーん。頭痛い……。」
リサは二日酔いで完全ダウンしている。
「エリック殿、リサ殿、おはようございます。」
ルンタは朝食を用意していた。
フレンチトーストを焼く音、バターがジュワッと溶ける香り。
コーヒーの蒸気が立ち上る。
「お前、料理できるのか?」
「戦の時に、食べ物がなくなっては困るからな。今はこの体だから、何でも作れるぞ。」
ルンタはエリックにはフレンチトーストをリサにはお粥を出した。
「リサ殿は二日酔いだろうから食べやすいものにしたぞ。」
「……ありがとう。」
リサは頭を抑えながら席に着く。
「じゃあ食うか。」
「「「いただきます。」」」
ルンタはフレンチトーストを優雅にコーヒーと共に食べる。
その姿は元武士とは思えない。
「ドラさんの話だともう地上に出られるらしい。」
エリックはコーヒーを一口飲む。
「昨日の流れ的に拙者も同行することになっているが……エリック殿達はそれでいいのか?」
ルンタはコーヒーのカップをゆっくり回す。
「はぁ?何今更言ってんだよ!僕たちのパーティじゃ前衛いなかったし、それに今まで会った剣士の中で一番強い。」
エリックはコーヒーとフレンチトーストを同時に流し込む。
「僕は、お前が必要だ。」
——一瞬。
間が開く。
「“必要”か……。言われたのは殿以来だな。」
ルンタは握り拳を前に突き出した。
エリックも突き出す。
「了承ってことだな。」
二人は熱いグータッチを交わした。
三人が外に出ると光が刺してエリック達は目を瞑る。
エリック達が目を開けるとそこには目を疑う光景が広がっていた。
(穴、空いてる……。) (まだ酔ってるのかな?私)(真か?)
『ガハハハ。起きたか!昨日の夜のうちに我が家に伝わる秘技“破壊光線”で天井を開けた!』
(もう、無茶苦茶……。でも、)
「ありがとう!ドラさん。」
『ガハハハ!礼はいらん。そうだ、エリック……。』
ドラはエリックに魔法式のメモを手渡した。
『友の印だ。過去に一度その魔法をあげたことがある。』
『“髪をビシッと決める魔法”だ!これを持ってれば私とエリック達のズッ友だ!』
リサはハッとした。
『さぁ行け!楽園の到着の報告待ってるぞ!』
エリック達は他の竜に乗せられて空へ旅立つ。
(あの、カインに見せてやりたかったな。)
「ルンタ、パーティに入ってくれてありがと。」
「いいんだ。拙者が必要なのだろ?」
「というか、楽園について語るのは久しぶりですね……。」
「そうだった!旅の目的楽園に行くことだった!」
「「「作者が、忘れんな!」」」
「Aø が登場してから路線が怪しくなって……。」
「まぁ急に旅関係なくなったなって思ったけど……。」
「まぁ拙者の加入理由と“草薙の剣”というアーティファクトの存在を何とかひっくるめられたではないか。」
「僕天才!」
「「「調子乗んな!」」」
「ボコボコに言われたところで、次回」
「「「英雄と馬鹿」」」
「……これ、いじめじゃなくて団結力だよな?」




