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クレッシェンドの花  作者: 合歓野白雪
24/34

23.走って!飛んで!

「そういえば今地図持ってるの誰?」

「あ、ういなずっと持ちっぱなしだった。はい」

「最初がここの花の館で、この山道上がってきて……法の館と檻の館。更地にしちゃったけど」

「むしろクレーターになってますよ……」

「誰も残ってなかったら花の館も潰しても良かったんだけど」

咲闌(さら)は案外暴君な女王だったの? 発想がちょっと過激なんだけど」

「そんなつもりは……ねえ、どうだった?」


地図を見ながらわいわい。え、私が暴君? そんなはず……教えて私の可愛い子たち!


「シャトラン? どっちかっていうと争いごと嫌いなタイプだったよ。咲闌ちゃんになったら性格変わったんじゃなーい? だって記憶持ってるだけの別人、なんでしょ?」

「咲闌様のご性格かと」

「でも、シャティ様って自分の守りたい人とか星霊とか傷つけてくる奴には容赦なかったと思うけどねー」

「いや、結局どっちよ、ルノン?」

「考え方はシャトラン様っぽくはないよー。でも敵に容赦しないっていうのは似てるのかなぁ」

「誰よりも強いけど、力の使う場面は弁えてたー」

「暴君……って感じではなさそうですね? ふふ、少々過激なのは咲闌ちゃんの性格ってことかしら」


繭さんも過激って思ってたの……ちょっと凹んでいいかな、私。

苦い顔をしている私に、ライラが一言。


「そんな貴方でも好きだから、みんな一緒にいるのでしょう。大丈夫ですよ、咲闌様」


うんうん、やっぱりよく私を見てるし気遣い出来ていい子……


「それで、どなた様がご本命ですか?」


待って今私が褒めたの全部取り消して。何をぶっ込んでくるの!?

ほら繭さんがちょっと恥ずかしそうにしてるし、需璃さんはそれ見てじとっとこっち睨んでるし!


「わたしに決まってるよねー? ね? 咲闌ちゃん?」


紅兎(こと)の圧強いし……わかってるくせに……本命は繭さんだよ……

でも今それ言ったら紅兎にも需璃さんにも殺されそうな気がする。

やめてください。さっきまで戦ってたんでこれ以上体力消費したら明日に響くから……もう……

ライラはわざとなの? 私、主よ? ひどくない?


「あれっ、これ次の館って地図の反対側じゃない?」


その言葉に全員の視線が地図に戻る。

雨以名(ういな)、ナイス! 意図してやったんじゃないと思うけど気が逸れた!


「本当ですね、これ……雨の館ですか? この法と檻の館が地図のこっちの端の方にあるから、真逆です」

「えー、めっちゃ歩きそう」

「需璃さん……忘れました? 乗って欲しい子がいるでしょう」

「あ」


はた、と気がついたように需璃さんはルノンを見る。ルノンは目を輝かせている。


「主さま、乗る? いいよ、役に立てて嬉しい」


当然そうなるとノルンも黙ってはいない。繭さんをじーっと見つめている。


「いいんですか……?」

「さっき戦ってる時も乗ってたもん。普段だって主は乗っていいのよー」

「じゃあお言葉に甘えて」


しかしこれでは雨以名と死遼虹(しんりこう)とライラはどうにもならない。ひたすら走るという脳筋みたいなことをしなくてはならなくなる。

ちなみに私も紅兎も怜音(さとね)もてゅろも飛べるから除外。


「あれー……」

「すいません飛べなくて……」

「ルノンに一緒に乗る? 大丈夫でしょ、ルノン?」

「大丈夫ー」

「じゃ、お願いしまーす」


ライラはどうしよっかな。紅兎は多分抱えたがらないし、私が抱えようとしたら断りそうだし。一人で走ってきそう。

なんて考えてたら繭さんが手を挙げた。


「ご一緒にいかがですか……?」

「私などがご一緒してもよろしいのですか?」

「繭さん、いいの?」

「ノルンが大丈夫なら……」

「いいよー」

「だそうなので、どうぞ」

「ありがとうございます。……ああ」


何? ちらっと目配せしてきたと思ったら、私にだけ聞こえるように、


「道中きちんとお守りいたしますから」


って。いや、さすがすぎるほどに目いいね……気づいてるんじゃない!


「これ一日じゃさすがに着きそうもないですね」

「うーん、いくら早く行きたいっていっても無理しても……とりあえず移動三日で休息一晩、予備で一日ってことでどうです? 体に負担かからず急ぐって意外と大変ですし」

「「「「異議なーし」」」」

「はい、じゃあもう寝ましょう。私疲れましたし」

「そりゃあんだけ戦ってればね……」

「その前にみんなの回復してあげたじゃないですか」

「それ以外の時間が長いっつってんの」


ゆっくり眠って、起きて。

空を駆けて、あるいは飛んで。

途中で「特訓!」なんて言いながら雨以名が死遼虹とライラと一緒に木の上を移動し始めたけど。ついていけてるから別にそれはいいんだけど。特訓って、忍者かなんかにでもなる気なの?

空にいたところで空を飛べる星霊獣というものはいるわけなので、サクッとスパッとそれらを倒しつつ、適当なところで休んで。

地図を見ながら進んで、それを繰り返して、ぴったり三日。

雨の館を見つけた。その名の通り、館の真上にだけ土砂降りだ。


「なるほど雨だ」

「遠くからは見えなかったのに、近づいたら途端に見えましたね」

「そういう術なんでしょ。でも鬱陶しいね。ライラ、これ消せない?」

「かしこまりました」


パチン。ライラが指を鳴らすと、すうっと雨が止んで虹がかかった。お見事。拍手。


「綺麗な虹ですね」

「お気に召しましたか?」

「はい……!」


繭さんが喜んでくれたことがどうやら嬉しいらしい。私の喜びに直結するというのをよくわかっている。

胸に手を当てる騎士の礼で応えていた。

紅兎はちょっとむすっとしているけれど、できることも違うし、そもそも繭さんに喜んでほしいなんて思ってないんだからこればっかりはどうしようもない。


「じゃ、とりあえず一晩休んで明日の朝入りましょうか」

「あはは、また目の前で休むのかって思われてそうだね♪」

「取れる時に休息は取っておかないと。なんか言ってくるなら全部の館に転移装置つけてないそっちが悪いって言い返しておこう。あいつら自分だけ転移しちゃうんだから」

「そういえば咲闌ちゃんとか術でできないんですか?」

「転移の術って、一回自分で行ったところじゃないとダメなんですよ」


便利だけどその制約があるせいで私はその術を使っていない。使えなかったから。

ま、道中も特訓ということにしておこう。戦闘経験積むのも大事だから、ほら。

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