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クレッシェンドの花  作者: 合歓野白雪
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22.大混戦バトルロワイヤル

「「うぅー、にゃぁー……!!」」


ブルルッと身震いすると双子猫は大きくなった。覚醒ってわけじゃないけど、自分の意思で大きくなるの初めてなんじゃない? できること増えて強くなったね、よしよし。


「えっ、ノルン?」

「ルノンも?」

「あれ、言ってませんでした? その子たち人乗せられるくらいには大きくなれるんですよ?」

「初めて見た……さっき大きくなってくれればよかったのに」


それはたしかに。抱えられて飛ばずに済んだだろうしね。


「主さまー、私今できるようになったの」

「私も」

「今……今かぁ……じゃ、しょうがないね」

「今度乗せてくださいね」

「主さまなら喜んでー!」

「むしろ乗ってほしいよ?」


ぜひとも乗ってあげたらいいと思う。私の時はどっちに乗るかで喧嘩して、結局順番ねということで落ち着いた。二匹とも毛並みすっごくいいから乗り心地最高だと思うよ。


「わー、久しぶりにその姿見たねー。人の姿にはならないの?」

「「人の姿?」」

「今大きくなれるようになったくらいだもん、さすがにまだじゃない……?」

「無理ー」

「私も出来なーい」

「てゅろも大きくなれないの?」

「ワタシも……無理です……」


てゅろは小さい体を更に縮めるようにして囁くように言った。

紅兎の言い方はちょっと意地が悪かったけど、実際シャトランの七十二柱の星霊は全て人型をとれる。ちょっと羽とか耳とか尻尾とかがあったりするので完璧に人間に見えるわけではないけど。


「力の使い方をもっとわかってくれば、出来るようになりますから。じゃ、始めますよ?」

「何でもあり?」

「あり。死なない程度なら」

「よーし、ういな頑張っちゃう」

「わたしも……「紅兎は本当に殺しかねないんだから抑えてね」はぁい」


一応釘は刺したし。それでは。

ふわっと飛び上がって、指先に火球を構える。地面に向けて撃ち出す。

────ドンッ!!

軽い爆発が起こり、直前で回避したもの、その場に踏ん張ったもの、うっかり吹っ飛ばされたものと様々だったけど、それで私はバトロワの開始を宣言。


「やったなー! ヴォーパルブラスト!」

「ふっ、ヴォーパルブラスト」


紅兎と撃ち合いをしていると背後(うしろ)からノルンが引っ掻いてきた。


「しゃしゃしゃっ」


それを避けると死角からルノンが冷気を吐き出してきた。


「にゃーお」

「ちょっと、寒いかな?」


翼でガードしながらチラッと下を見ると、需璃さんと雨以名がライラと対峙している。始まって五分も経っていないのだが息が上がり始めている。対してライラは涼しい顔で半身で剣を構える。

やりにくいよね、そうだよね。ライラの能力は星霊にも星霊姫(レジーナ)にも相性が悪い。私もあまりタイマンはしたくない。

そう、彼女の能力はマジックキャンセラー。全ての星霊術を無効化してしまう。

ただの体術で戦うしかない。武器だってライラは剣を持っているんだから有利にはなれない。というか星霊姫は術で戦う人が多いのでなかなかライラに敵う者はいないはず。


おっと、猫たちと下の戦いに気を取られて忘れてた。なんと繭さんが氷で足場を作って接近してきている!


「フィンブルバースト!」

「あら、繭さん冷たいな。じゃあ熱ーい思いをお返しするね? バーンストライク!」

「……っ! オーロラヴェール」


ブワッと蒸気が立つ。そこに紅兎も突っ込んできた。こっそりと怜音も。


「ちょっとー! 二人でイチャイチャしないで!」

「スパイラルマスカレード!」

「ファントムナイツ」


光の大渦と闇の騎士の軍勢がごちゃごちゃと襲いかかってくる。


「ほらぁ、咲闌ちゃん。わたしの思いも受け止めて?」

「もちろんだよ。ブラックロックシューター・マルチショット!」

「では怜音ちゃんにもどうぞ。サイレントスコア」

「わわわっ。イノセントシャイン」

「ワタシも……えいっ」


てゅろいたの!? ちっちゃいから見えなかった……えっ!

力を放ったてゅろの体がぱあっと強い光に包まれて、怜音と同じくらいの大きさの少女になった。


「てゅろ?」

「大きく、なれましたよ……もっと役に、立ちたいの」

「主! 乗ってー」

「! はい!」


あらら、怜音とてゅろVS繭さんとノルンになっちゃった。ルノンもいつの間にか死遼虹と戦闘に入ってる。

そうなると……


「やっぱり二人だね?」

「わたしは嬉しいよ? さぁ、愛し合おうよ!」

「……一番が出来たって言ったら怒る?」

「愛してるから、許さない! 咲闌ちゃんが愛する人なんか愛してやらないんだからぁっ!」

「力ずくでも認めさせてあげるよ。今は紅兎の力は使わない。不死鳥の力だけにしてあげる。どれくらい私が熱い思いを抱いてるのか、とくと味わってもらおうかな」

「何をしてでもわたしだけ見てもらうんだから! ルナティックアロー! ジェスターズバイス!」

「そら、おいでよ。ハーティエルブロッサム!」


紅兎とタイマンになっちゃうよねー。そう、愛と愛のぶつかりあい。

私、咲闌の一番は繭さん。でも、シャトランの一番は貴方だったもんね? そして紅兎になっても咲闌を一番に愛してくれてるんだもんね?

嬉しいよ。愛してる。だからいっぱいぶつかろう。愛で殴って愛で蹴って。私の愛を認めさせる。一番じゃなくても、愛してるんだよ。


「って、痛(い)った!?」


翼が一枚斬り裂かれた。慌てて後ろを振り返ると、地面にちょうど着地しながら私を見て微笑むライラと目が合った。


「楽しいからと油断はいけませんね、咲闌様」

「あっ、ちょっとあんたわたしたちの愛し合い邪魔しないでよ!」

「っていうか知らない間にみんな倒しちゃったの……たしかにちょっと油断してたわ」


翼を修復させながら降りる。紅兎もついてきた。他のみんながあちこちで倒れているのが見えた。まあ、仕方無いか。星霊姫になって日が浅い上に術なしで挑むような相手じゃないしね。むしろ致命的な怪我を負わさなかったライラを褒めてもいいくらいだ。

ただし、紅兎は不服だろう。私もさすがに不完全燃焼だ。


「ねぇ、咲闌ちゃん。先にこいつやっちゃっていい? 邪魔されたのすっごくムカついてるんだよね」

「手伝いいらない?」

「いらない。ハンデだと思うなら周りでダウンしちゃったみんなを回復でもしてあげてたらいいよ。自分も回復するんでしょ?」

「あら、優しいね。そうするわ。紅兎、ライラ。終わったら声かけて。勝った方が私と勝負よ」

「かしこまりました」

「わたし勝つから! 待ってて咲闌ちゃん」

「はいはい、頑張って」


とはいえ術が使えない以上純粋に肉弾戦。剣を使う分ライラの方が若干有利?

ま、私との時間に水を差されて怒りのボルテージMAXな紅兎が負けるともあんまり思っていないけど。不利な分は気合いでカバー、みたいな。

二人が頑張っている間にみんなを回復していく。斬られた翼も治した。


「あ……咲闌ちゃん……? 終わったんですか……?」

「まだ。ほら」

「あら……」

「勝った方と私が戦(や)って、そこで終わり。さ、みんななるべく離れてて」

「うー、悔しい」

「純粋な星霊となりたての星霊姫と覚醒しきってない星霊。しかもマジックキャンセラーの能力(チカラ)相手じゃまださすがに勝てないよ。年単位で修行いるんじゃない?」


雨以名だけは悔しがっている。うん、負けず嫌いなのはいいこと。ちょっと相手が悪かったね。

繭さん需璃さん怜音は雨以名よりも基本が術頼りなこともあって無理だった、というのがわかってしまっている。ビシソワーズ家、マジックキャンセラーいないといいんだけど。


「あ」


ふと二人を見ると、ちょうど紅兎の拳が綺麗にライラのお腹に入ったのが見えた。ライラはよろめいて、剣を支えになんとか立っていようとしたけれど、限界だったらしい。倒れた。


「体力バケモノめ……」

「は……さすがに、こんなにやったの久しぶり……はぁ……咲闌ちゃん!! 勝ったよ!!」

「お疲れ様。続きするでしょ?」


慈愛の笑みで聞くと、「もちろん!」と返ってきたのでぐいっと腰を抱いてキスして力を与えてやる。対等じゃないと、戦っても意味がない。


「ん……いいよ、もう」

「ちょっとはマシになったでしょ」

「うん、だから、ヤろ?」

「今度は邪魔もなく、存分にね?」

「うん!!」


ちなみにその後約六時間戦ってた。さすがに疲れた。でもお互いの愛を認めさせるには時間が足りなかった。また今度ね。

いやほら、暗いし。観客(ギャラリー)が呆れた顔をしだしちゃったからね。


「次は二人っきりで、ね?」

「そう、だね」


くすくすくす。笑い合う私たちを見てみんなは呆れを通り越してドン引きしてる。繭さんだけは、なんだか複雑そうな顔だったけれど。

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