第27話 切られた一枚
神谷蓮が2-0で王手をかけた瞬間、会場は完全に神谷ムードに包まれていた、ルーザーズから勝ち上がりグランドファイナルをリセット、そのまま二連勝、このまま優勝まで駆け抜けるのではないかと誰もが思い始めていた。
「あと一本!!」
「神谷ぃぃぃぃ!!」
「優勝だぁぁぁぁ!!」
相馬優斗も興奮気味に叫ぶ。
「神谷選手あと一勝です!!あと一勝でREVOLT MAJOR 2026優勝です!!」
コメント欄。
『行けぇぇぇ』
『優勝見えてる』
『神谷強すぎる』
『あと一本!!』
だが次の瞬間だった。
エリックが再戦ボタンを押さない。
会場がざわつく。
「おっと?」
相馬が声を上げる。
「これは……?」
エリックはそのままキャラクターセレクトへ戻った。
観客席からどよめきが起きる。
コメント欄。
『来た』
『キャラ変更!?』
『マジかよ』
『決勝で!?』
大原が冷静に説明する。
「ルール上、前の試合に敗北した選手はキャラクター変更が可能です。」
「なるほど!!」
相馬もすぐ反応する。
「つまり今2-0で負けているエリック選手だけが別キャラクターを選べる!!」
神谷は席を立たない。
表情も変わらない。
勝者側である以上、選べることはない。
ただ相手を待つだけだった。
コメント欄。
『何出すんだ』
『Frostやめるのか』
『切り札か?』
会場全体がモニターへ注目する。
キャラクターセレクト。
Frostのカーソルが外れる。
その瞬間。
さらに大きなどよめきが起きた。
「おおおおおおっ!!」
相馬が立ち上がる。
「変えたぁぁぁぁぁ!!」
エリックが選択したのは《アーサル》。
巨大な王剣を操る騎士王。
長いリーチ。
高い安定感。
そして試合全体を支配する圧力を持つ強キャラクター。
コメント欄。
『アーサル!?』
『マジかよ』
『本命きた』
『切り札だろこれ』
『熱すぎる』
神谷は静かに画面を見る。
初めて見るわけではない。
だが今大会でエリックが使うのは初めてだった。
大原が分析する。
「おそらく試合の流れを変えたいのでしょう。」
「Frostは神谷選手にかなり適応され始めていました。」
相馬も頷く。
「つまり神谷選手が積み上げてきた対策を一度リセットする狙いか!!」
会場の空気が変わる。
2-0。
神谷優勢。
その状況は変わらない。
だが相手はトッププレイヤー。
何もせず負ける男ではない。
エリックはキャラクター選択を終える。
表情は変わらない。
焦りもない。
ただ勝つための選択をしただけだった。
神谷もレバーへ手を置く。
相手が誰であろうとやることは変わらない。
観客席から大歓声が響く。
画面に表示される。
REX
VS
ARTHAL
「うおおおおおおおおおおおお!!」
相馬が絶叫する。
「決勝戦でキャラ変更!!エリック・ウォーカー最後の一手だぁぁぁぁぁ!!」
コメント欄。
『激アツ』
『ここで出すか』
『神谷頑張れ』
『まだ終わらん』
神谷優勝まであと一本。
エリック崖っぷち。
そしてグランドファイナルは新たな局面へ突入した。




