第21話 挑戦者の一手
開幕直後、神谷は前回の対戦とは明らかに違う動きを見せた、様子見をほとんど挟まずRexの機動力を活かして一気に距離を詰める、その踏み込みに会場がどよめく。
「おおおおっ!!」
相馬が叫ぶ。
「行った!!神谷選手最初から行ったぁ!!」
前回の敗北で最も苦しめられたのは中距離だった、Frostが最も力を発揮する距離、だからこそ神谷はそこを戦場にしない。
ダッシュ。
小技。
投げ。
さらに前ステップ。
エリックも即座に対応するが神谷は止まらない。
大原が頷く。
「狙いが明確ですね。神谷選手は中距離の主導権争いを避けています。」
「なるほど!!」
「近距離で勝負するつもりです。」
コメント欄。
『攻めてる』
『前回と違う』
『最初から飛ばすな』
『神谷仕上がってる』
画面中央。
神谷の連係が続く。
Rexの蹴りが刺さる。
さらに下段。
ガード。
投げ。
成功。
会場が沸く。
「うおおおおおお!!」
しかし次の瞬間だった。
Frostの設置した氷が画面端に残る。
神谷が踏み込んだ瞬間。
凍結。
「来たぁぁぁ!!」
相馬が絶叫する。
エリックは待っていた。
そこから始まる長いコンボ。
一発。
二発。
三発。
氷が砕ける。
追撃。
さらに追撃。
体力が消える。
観客席から悲鳴。
「減るぅぅぅ!!」
「五割近い!!」
神谷は黙ったまま画面を見る。
だが焦りはない。
(知ってる。)
(これは知ってる。)
前回も食らった。
だから驚かない。
起き上がり。
再び前へ。
また前へ。
さらに前へ。
コメント欄。
『折れない』
『メンタル強すぎ』
『また行くのか』
『神谷らしい』
相馬も笑っていた。
「いや神谷選手怖いな!!今のコンボ食らった後にまた前行くのか!!」
大原も頷く。
「迷いがありませんね。」
ラウンド終盤。
残り体力はほぼ同じ。
どちらが取ってもおかしくない。
神谷が飛ぶ。
エリックが迎撃を狙う。
しかし。
着地。
投げ。
成功。
観客席が爆発する。
「うおおおおおおおお!!」
神谷はそのまま起き攻めへ。
下段。
中段。
下段。
投げ。
崩れた。
コンボ。
最後の一撃が入る。
K.O.
会場が揺れた。
「神谷ぁぁぁぁぁ!!」
「先取ぃぃぃぃ!!」
相馬が立ち上がる。
「取った!!取ったぞ神谷蓮!!」
コメント欄。
『うおおおおおお』
『先取だ』
『前回と違う』
『これはあるぞ』
『リセット見えてきた』
だがエリックの表情は変わらない。
水を一口飲む。
そして静かに画面へ視線を戻す。
その姿を見た大原が呟く。
「ただ本当に怖いのはここからです。」
相馬も真剣な表情になる。
「そうなんですよね。」
「エリック選手は修正能力が異常です。」
神谷は一ラウンド取った。
だが試合はまだ始まったばかりだった。




