第16話 神谷蓮vsエリック・ウォーカー
REVOLT MAJOR 2026。
TOP8メインステージ。
会場の熱気は既に最高潮へ達していた。
大型モニターに映し出される次の対戦カード。
神谷蓮。
エリック・ウォーカー。
Winners Final。
勝者はGrand Final進出。
敗者はLosers Finalへの切符を手にする。
だが観客達が期待しているのはそんなトーナメント表ではなかった。
世界が注目する二人の天才。
同じ十七歳。
異なる国で生まれ、異なる環境で育ちながら世界大会の舞台でぶつかり合う新世代最強決定戦だった。
『きたああああああああ!!』『神谷頼むぞ!!』『エリック強すぎる』『実質決勝始まるぞ』『同世代対決熱すぎる』
ステージへ姿を現した神谷はいつも通り落ち着いていた。
歓声も歓呼も関係ない。
ただ試合をする。
そのためだけに席へ座る。
対するエリックも静かだった。
白石との激闘を終えたばかりだというのに疲労を感じさせない。
モニターを見つめる目だけが鋭かった。
「さあ始まります!!」
「今大会最高レベルのカードですね」
ROUND1。
開幕から神谷が前へ出る。
リー・ジェン戦とは違う。
今回は観察ではない。
自ら圧力をかける。
Rexの前ステップ。
小技。
投げ。
細かい連係でエリックへ触り続ける。
「神谷選手攻めます!!」
「Frostに準備をさせない判断ですね」
会場が沸く。
神谷が主導権を握る。
体力差も広がる。
あと一回。
あと一回通せばラウンドが終わる。
だが。
エリックはそこで崩れなかった。
防ぐ。
耐える。
待つ。
そして神谷の投げを読んだ。
投げ抜け。
距離が離れる。
その瞬間。
Frostの設置。
神谷の眉がわずかに動く。
まずい。
そう感じた時には遅かった。
氷が画面を支配する。
差し返し。
コンボ。
設置。
追撃。
さらに設置。
神谷の体力が一気に消し飛ぶ。
「減る!!減る!!」
「これがエリック選手です!!」
会場がどよめく。
そして最後はセットプレイからの下段。
KO。
ROUND1。
エリック先取。
『やばすぎるだろ』『あれで逆転するのか』『Frost怖え』『神谷でも止まらん』
神谷はモニターを見つめる。
強い。
今まで戦った誰とも違う。
少しのミスが即敗北へ繋がる。
それでも不思議と焦りはなかった。
むしろ楽しい。
世界の頂点が目の前にいる。
ROUND2。
今度は神谷が修正する。
設置前を叩く。
起点を潰す。
徹底してFrostへ自由を与えない。
差し返し。
対空。
確認。
全てが完璧だった。
「神谷選手読み勝っている!!」
「修正力が異常ですね」
エリックも押され始める。
神谷が画面端へ追い詰める。
そこから怒涛のラッシュ。
Rexの攻撃が途切れない。
最後は暴れを潰してフィニッシュ。
KO。
会場が爆発する。
『神谷うおおおおお!!』『これだよこれ!!』『適応始まった!!』『日本最強!!』
1-1。
最終ラウンド。
観客全員が立ち上がる。
実況席も緊張していた。
どちらが勝ってもおかしくない。
試合は序盤から激しくぶつかり合う。
差し返し。
投げ。
暴れ潰し。
カウンター。
世界最高峰の攻防。
そして終盤。
神谷が流れを掴んだ。
体力リード。
残り時間二十秒。
あと少し守れば勝てる。
観客席から日本コールが響く。
「REN! REN! REN!」
神谷も勝利を意識した。
だがその瞬間。
エリックが仕掛ける。
誰も予想しなかった位置からの飛び込み。
神谷は迎撃する。
だが。
届かない。
絶妙にズレていた。
エリックの攻撃が刺さる。
カウンター。
設置。
最大コンボ。
会場が悲鳴を上げる。
神谷の体力が消えていく。
残り一割。
それでも神谷は諦めない。
最後の読み合い。
全員が息を呑む。
神谷は投げを読む。
エリックは暴れを読む。
先に動いたのはエリックだった。
Frostの中段。
ヒット。
KO。
数秒。
誰も声を出せなかった。
そして次の瞬間。
会場が割れんばかりの歓声に包まれる。
「決まったあああああああああ!!」
「エリック・ウォーカー!! Grand Final進出です!!」
『マジかよ』『神谷負けた』『でも強すぎた』『神試合だった』『これ決勝でもう一回見たい』
神谷は画面を見つめたまま静かに息を吐く。
負けた。
悔しい。
だが終わりではない。
まだ敗者側が残っている。
まだ世界一への道は消えていない。
エリックは立ち上がり神谷へ手を差し出す。
神谷もそれを握り返した。
短い握手。
だが互いに相手を認めるには十分だった。
大型モニターに表示される。
GRAND FINAL
ERIC WALKER
そしてもう片方は空欄のまま。
そこへ辿り着く最後の一人を決める戦いが始まる。
敗者側では白石凛、レオン、パク・ミンソ、アレックス・ロドリゲス、朝倉玲司、リー・ジェンが生き残りをかけて激突していた。




