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LETHAL -俺だけが見える勝利の一手-  作者: 龍崎
第三章 海外遠征編 ― 世界を喰らう拳 ―

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第8話 ラスベガスへ

REVOLT MAJOR 2026まで、あと一日。


夏休みに入った静かな午後、神谷蓮は自宅の自室でモニターと向き合っていた。カーテンの隙間から差し込む日差しは少しずつ傾き始めていたが、神谷は時間の流れを気にすることなくコントローラーを握り続けていた。


画面の中ではRexが何度も同じコンボを繰り返している。


失敗。


修正。


成功。


そして再現。


それを何百回と繰り返していた。


だが以前とは違う。ただ技を成功させるための練習ではない。


実戦を想定しながら、一つ一つの選択肢を確認していた。


プレッシャーゲージの使い方。


差し返しからの最大リターン。


起き攻めの継続ルート。


防御から攻撃へ切り替える判断。


相手の癖を読んだ後にどう圧力をかけるか。


黒崎に言われた言葉が頭の中に残っている。


――キャラを動かすな。相手を動かせ。


その意味が以前より理解できるようになっていた。


「よし」


コンボが綺麗に決まる。


もう一度。


成功。


さらにもう一度。


成功。


神谷はコントローラーを机の上に置いた。


不思議なほど焦りはなかった。


もちろん世界大会への切符が懸かった大会だ。


緊張しないわけではない。


だが今はそれ以上に大きな感情があった。


手応えだった。


皇との対戦。


桐生達との対戦会。


RAVEN’S NESTでの日々の練習。


雨宮、真田、黒崎との特訓。


その全てが無駄ではなかった。


Rexというキャラクターがようやく自分自身の武器になり始めている。


以前なら大会前日は不安ばかりだった。


勝てるのか。


本当に世界に通用するのか。


そんなことばかり考えていたはずだ。


だが今は違う。


「どこまで通用するかな」


自然と笑みが浮かぶ。


世界の強豪を相手に、自分のRexがどこまで戦えるのか。


それを試したい。


そんな気持ちの方がずっと強かった。


翌朝。


RAVEN’S NESTのメンバーは空港へ集まっていた。


REVOLT MAJOR 2026へ出場する選手達はここからアメリカへ向かう。


神谷が到着すると、真田や雨宮、黒崎達は既に揃っていた。


「眠そうだな」


真田が笑う。


「少しだけです」


「大会前日にやりすぎたか?」


「ちょっとだけです」


周囲から笑いが起きた。


そんな中、神谷はあることに気付く。


「あれ、九条さんはいないんですね」


雨宮が頷いた。


「ああ、九条さんは来ないよ」


「ですよね。そういえばもう出場権持ってましたね」


神谷は納得したように頷く。


今年のCSJCで準優勝を果たした九条迅は、既にWORLD BREAKERS CHAMPIONSHIPへの出場を決めている。


すると真田が肩をすくめた。


「だから今回は完全に観戦側だな」


「今頃のんびりしてそうですね」


「間違いなくな」


再び笑いが起きる。


すると黒崎が続けた。


「皇も来んぞ」


「皇さんもですよね」


「当然じゃ。今年の王者じゃからのう」


今年のCSJCを制した皇恒一もまた、既にWORLD BREAKERS CHAMPIONSHIP出場権を獲得済みだ。


日本最強と呼ばれる二人は、既に武道館で行われる世界大会の舞台へ駒を進めている。


神谷は改めてその事実を実感した。


少し前までなら遠すぎる存在だった。


配信や大会映像の中で見るだけだったトッププレイヤー達。


だが今は違う。


皇とは実際に対戦し、その強さを肌で感じている。


もちろん差は大きい。


それでも以前のように、ただ憧れるだけの存在ではなくなっていた。


「楽しみか?」


雨宮が聞く。


神谷は迷わず頷いた。


「はい」


不安がないわけではない。


海外勢との対戦経験も少ない。


何が起こるかも分からない。


それでも今の神谷の胸にあるのは恐怖より期待だった。


自分のRexがどこまで通用するのか。


積み上げてきた努力は本物なのか。


その答えを確かめられる舞台が待っている。


やがて搭乗案内のアナウンスが流れた。


選手達が立ち上がり、それぞれ荷物を手に取る。


真田は神谷の肩を軽く叩いた。


「世界相手に暴れてこい」


「はい」


黒崎は腕を組んだまま言う。


「勝とうとするな。見て、読んで、適応しろ。それがお前の強さじゃ」


「分かってます」


雨宮も笑った。


「ラスベガスでもいつも通りやればいい。お前なら大丈夫だ」


神谷は力強く頷く。


そしてキャリーケースを引きながら搭乗ゲートへ向かった。


アメリカ・ラスベガス。


世界中の強豪が集結するREVOLT MAJOR 2026。


WORLD BREAKERS CHAMPIONSHIPへの切符を懸けた最大級の戦い。


神谷蓮の新たな挑戦が、今始まろうとしていた。

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