第29話 新たな時代
決勝戦終了後も会場の熱気はまったく冷めることがなかった。
数千人規模で始まったCSJC2026。
全国から集まった強豪。
海外から参戦したトッププレイヤー。
その頂点を決める戦いは、ついに幕を下ろした。
大型モニターに最終順位が映し出される。
【CSJC2026 最終順位】
優勝 皇恒一(PHOENIX)
準優勝 九条迅(RAVEN’S NEST)
3位 パク・ミンジュン(韓国代表)
4位 龍天宇(中国代表)
5位タイ 黒瀬詩音(NOVA eSports)
5位タイ アレックス・リード(アメリカ代表)
7位タイ 桐生蒼真(PHOENIX)
7位タイ 神谷蓮(RAVEN’S NEST)
順位が表示された瞬間、会場から大きな拍手が巻き起こった。
ルーザーズブラケットでは数々の激戦が繰り広げられた。
黒瀬詩音は神谷を破った後も勢いそのままに勝ち上がり、日本女子最強の実力を証明する戦いを続けたが、あと一歩のところで韓国の天才パク・ミンジュンに敗北。
一方のアレックス・リードも桐生蒼真を退けるなど圧倒的な強さを見せたものの、中国王者・龍天宇の前に力尽き、両者とも堂々の5位入賞という結果で大会を終えた。
神谷は客席から順位表を見上げる。
7位。
大会前の自分なら想像もできなかった順位だ。
だが。
悔しさしかなかった。
優勝した皇。
準優勝の九条。
世界と渡り合ったパクや龍天宇。
その背中はまだ遠い。
圧倒的に遠い。
ステージ上では表彰式が始まる。
まずは三位。
韓国代表パク・ミンジュン。
若き天才は観客の拍手を受けながらトロフィーを受け取る。
続いて四位。
中国王者龍天宇。
長年アジアシーンを支えてきた絶対強者にも惜しみない拍手が送られた。
そして準優勝。
九条迅。
会場から割れんばかりの歓声が響く。
絶対王者をあと一歩まで追い詰めた獣王。
敗れはしたものの、その激闘は間違いなく今大会最高の名勝負だった。
最後に。
優勝者発表。
『CSJC2026優勝!! 皇恒一選手!!』
紙吹雪が舞う。
照明が輝く。
観客全員が立ち上がる。
歓声。
拍手。
祝福。
その中心に立つ皇は、それでも静かだった。
大きく喜ぶこともない。
派手なパフォーマンスもない。
ただ静かにトロフィーを掲げる。
その姿はまさに王者そのものだった。
『以上をもちましてCSJC2026全日程終了となります!!』
実況が締めの挨拶を始める。
観客たちも満足そうな表情を浮かべていた。
だが。
その時だった。
ステージ中央へ大会プロデューサーが現れる。
『皆さん、本日は最後に特別なお知らせがあります』
会場がざわつく。
そして大型モニターが暗転した。
『まさか……』
『来るのか!?』
次の瞬間。
見慣れないシルエットが映し出される。
会場が静まり返る。
映像が始まった。
黒いグローブ。
鋭い視線。
しなやかなステップ。
そして高速の拳。
残像すら見えるほどの連打が相手を襲う。
大型モニターに名前が表示される。
《Rex》
会場が爆発した。
『うおおおおおおお!!』
『新キャラだぁぁぁ!!』
『マジかよ!!』
映像は続く。
Rexは近距離制圧型ボクシングファイター。
飛び道具を持たず、接近戦だけで戦う超攻撃型キャラクターだった。
高速ステップ。
圧倒的なラッシュ性能。
Kaiを思わせる戦闘スタイル。
しかし性能はさらに尖っている。
そして固有システム。
《プレッシャーゲージ》
攻撃を当てるたびにゲージが上昇。
移動速度。
火力。
必殺技性能。
すべてが強化されていく。
Kai以上の機動力。
Kai以上の火力。
Kai以上の崩し性能。
理論値だけなら環境最強候補。
Sランク候補とまで噂される性能だった。
もちろん弱点もある。
飛び道具なし。
防御性能は低め。
ゲージ管理必須。
そして極めて高い操作難易度。
扱える者だけが強さを引き出せるキャラクターだった。
『やばすぎる!!』
『絶対使う!!』
『環境変わるぞ!!』
『明日からランクマ地獄だろ!!』
観客席は大盛り上がりだった。
実況も興奮気味に叫ぶ。
『なんとRexは明日のアップデートで実装決定!!』
『CSJC終了と同時に新シーズン開幕です!!』
神谷はモニターを見つめる。
Rex。
初めて見るキャラクター。
だが直感で分かった。
強い。
そして。
面白い。
敗北の悔しさは消えない。
だがその悔しさを抱えたまま前へ進める理由ができた。
新たな環境。
新たなライバル。
新たな戦い。
CSJC2026は幕を閉じる。
しかし。
神谷蓮の挑戦は、ここから再び始まるのだった。




