第19話 猛虎
CSJC二日目。
ルーザーズトーナメント最終戦。
勝てば最終日進出。
負ければ敗退。
神谷蓮は対戦席へ腰を下ろした。
向かいにはPHOENIX所属、獅堂大河。
豪快な笑みを浮かべる男だった。
「ようLETHAL」
獅堂は笑う。
「面白い試合しようぜ」
神谷は静かに頷いた。
モニターにキャラクターが映し出される。
神谷のメインキャラクター――《Kai》。
対する獅堂のキャラクターは《タイタン》。
巨体を活かした投げ技と圧倒的な火力を持つプロレスラーキャラクターだった。
試合開始。
ラウンド1。
開幕から獅堂が前へ出る。
下がらない。
様子見もしない。
ひたすら前へ出る。
「っ!」
神谷が牽制技を置く。
だがタイタンはアーマー技で強引に突破。
そのまま掴む。
ジャーマンスープレックス。
体力が吹き飛ぶ。
会場が沸く。
「うおおおお!」
「獅堂だ!」
「始まった!」
獅堂は止まらない。
起き上がりへ重なる打撃。
暴れ潰し。
投げ。
また投げ。
神谷は防御を固めるが圧力が異常だった。
読んでも次が来る。
防いでも次が来る。
常に攻撃。
常に前進。
まるで恐怖という感情が存在しない。
「くそっ……!」
再び投げ。
KO。
ラウンド1獅堂。
観客席から歓声が上がる。
「獅堂ペース!」
「押し切れ!」
だが神谷は冷静だった。
深く息を吐く。
見えてきた。
獅堂は大胆だ。
だが雑ではない。
強引なようで計算されている。
だから強い。
ラウンド2。
再び攻め込んでくるタイタン。
しかし今度は違った。
神谷は一歩下がる。
さらに下がる。
無理に付き合わない。
飛び込み。
対空。
カウンター。
コンボ。
初めて獅堂の体力が大きく削れた。
「おっ!」
真田が声を上げる。
神谷はさらに距離を管理する。
投げ間合いへ入らせない。
焦らせる。
読ませる。
そして――。
タイタンの突進技をガード。
最大反撃。
体力が消し飛ぶ。
KO。
1-1。
会場が大きく沸いた。
「分からなくなった!」
「LETHAL対応してきた!」
獅堂は楽しそうに笑う。
「最高じゃねえか」
神谷も画面を見据える。
最終ラウンド。
勝負の時間だった。
開始直後。
獅堂の攻撃がさらに激しくなる。
投げ。
打撃。
アーマー。
突進。
全てを混ぜながら襲い掛かる。
神谷も応戦する。
コンボ。
差し返し。
対空。
読み合い。
一進一退。
互いの体力が削れていく。
残り三割。
残り二割。
そして気付けば両者体力はほぼ同じだった。
会場全体が息を呑む。
次の一撃で終わる。
獅堂が前へ出る。
神谷は読んだ。
投げ。
そう思った。
だが違う。
打撃。
反応が遅れる。
カウンター。
体力残り僅か。
観客が立ち上がる。
「終わった!」
誰かが叫ぶ。
だが神谷はまだ諦めていなかった。
獅堂が最後の攻めを仕掛ける。
タイタンが飛ぶ。
その瞬間だった。
「そこだ」
Kaiの昇龍技が炸裂する。
カウンター。
会場が揺れる。
さらにコンボ。
画面端。
最大火力。
全てを叩き込む。
体力ゲージが消える。
KO。
勝者――LETHAL。
会場が大歓声に包まれた。
「うおおおおおお!」
「勝った!」
「ギリギリ!」
「マジかよ!」
神谷は静かにコントローラーを置く。
心臓が速い。
手も震えている。
だが勝った。
獅堂は数秒画面を見つめた後、大きく笑った。
「強えな」
神谷は立ち上がる。
「ありがとうございました」
二人は握手を交わす。
そして獅堂は言った。
「次は負けねえからな」
神谷も小さく頷いた。
「自分もです」
こうしてルーザーズ最終戦は幕を閉じた。
数千人から始まったCSJC。
その中で神谷蓮は生き残った。
最終日。
TOP8。
日本最高峰の舞台は、ついに目前まで迫っていた。




