第12話 各チームの反応② NOVA eSports
国内屈指の人気を誇る女性プロチーム。
NOVA eSports
競技シーンで結果を残しながらも配信活動にも力を入れており、若い世代から絶大な支持を集める人気チームだった。
所属メンバーの多くが人気配信者でもあり、女性だけで構成された格闘ゲームチームとして高い知名度を誇っている。
その日もチームハウスの共有スペースでは、神谷蓮の加入発表配信のアーカイブが大型モニターで再生されていた。
動画が終わる。
最初に口を開いたのは白石凛だった。
人気配信者でありNOVA eSportsの看板メンバーの一人。
「本当にプロになったんだね」
椅子にもたれながら呟く。
隣では神崎結衣がスマホを見ながら笑った。
神崎結衣。
雑談配信と格闘ゲーム配信で人気を集めるチームの中心メンバーだ。
「むしろ遅いくらいじゃない?」
「それは分かる」
凛も頷く。
「あの大会終わった時点で絶対どこか取ると思ってたし」
向かいでは長い黒髪の女性が笑う。
天羽みお。
NOVA eSportsトップクラスの登録者数を誇る人気ストリーマー。
明るい性格とトーク力でファンから支持を集めていた。
「でもRAVEN’S NESTは納得かな」
「だよね」
神崎も頷く。
「強くなりたいなら最高クラスの環境だし」
すると横でお菓子を食べていた小柄な少女が手を挙げた。
月城あかり。
チーム最年少。
将来を期待される若手選手だった。
「神谷くんって配信するのかな?」
「するみたい」
神崎が答える。
「週二回らしいよ」
「あー」
月城が納得したように頷く。
「めっちゃ神谷くんっぽい」
「分かる」
凛も思わず笑った。
「毎日配信とか絶対無理そう」
「ゲームの話以外しなさそうだし」
天羽も続ける。
「雑談枠始めて五分で終わりそう」
部屋に笑いが広がった。
⸻
その時。
窓際で静かに配信を見ていた女性が口を開いた。
高瀬彩音。
NOVA eSports格闘ゲーム部門キャプテン。
安定感抜群の実力でチームを支える存在だった。
「でも本当に強いよ」
全員がそちらを見る。
高瀬は腕を組みながら続ける。
「StarLiveの試合全部見返したけど、適応力が異常」
「やっぱり?」
神崎が聞く。
「うん」
高瀬は頷く。
「一回見せた行動が次のラウンドで通らなくなる」
「うわぁ」
月城が苦笑する。
「嫌な相手だ」
「かなりね」
高瀬も苦笑した。
⸻
するとその隣で静かにコーヒーを飲んでいた女性が口を開く。
部屋の空気が少し変わる。
黒瀬詩音。
NOVA eSports格闘ゲーム部門エース。
国内女子ランキング1位。
数々の大会優勝経験を持つ女性プロシーンの絶対的エースだった。
「私もそう思う」
その一言で全員の視線が集まる。
黒瀬はモニターに映る神谷の姿を見ながら続けた。
「今の時点でもトップ層と戦える」
「そんなにですか?」
月城が驚く。
黒瀬は頷いた。
「まだ粗さはある」
「でも伸びる」
「こういう選手が一番怖い」
女子シーン最強クラスのプレイヤーによる評価。
その重みは大きかった。
⸻
すると神崎がニヤニヤしながら凛を見る。
「でも一番気になってるのは凛じゃない?」
「は?」
凛が眉をひそめる。
「また始まった」
天羽が笑う。
「だって大会で戦ったじゃん」
「それはそうだけど」
「また戦いたい?」
神崎が聞く。
「別に」
即答。
だが返答が早すぎた。
月城が笑う。
「怪しい」
「怪しいね」
天羽も乗っかる。
「怪しくないから」
凛は即座に否定する。
しかし誰も信じていない。
「さっきからアーカイブずっと見てるし」
「見てない」
「見てた」
「見てない」
「見てた」
子供みたいな言い合いが始まる。
部屋が笑いに包まれた。
⸻
神崎が再び聞く。
「で、実際どうなの?」
凛は数秒黙る。
そしてため息を吐いた。
「……まあ」
全員が身を乗り出す。
「ちょっとは戦いたい」
その瞬間。
「言った!」
「認めた!」
「やっぱり!」
三人の声が重なった。
凛は額を押さえる。
「うるさいな……」
「だって分かりやすいし」
神崎が笑う。
「負けたまま終わるの嫌でしょ?」
その言葉に凛は反論しなかった。
StarLive Fighting Festival。
あの大会で神谷蓮に敗れた。
悔しくないはずがない。
だからこそ。
もう一度戦いたい。
それは競技者として当然の感情だった。
凛はモニターに映る神谷蓮を見つめる。
RAVEN’S NESTへ加入した期待の新人。
そして自分がもう一度超えたい相手。
凛は小さく笑った。
「次は負けないから」
その呟きに気付いた者はいなかった。
だがNOVA eSportsのメンバーたちもまた、神谷蓮という新たなライバルの存在を強く意識し始めていた。




