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LETHAL -俺だけが見える勝利の一手-  作者: 龍崎
第2章 RAVEN’S NEST加入・大型大会編

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第9話 エース・九条迅

翌日の日曜日。


神谷蓮は昨日と同じようにRAVEN’S NEST本社を訪れていたが、今日は契約ではなく所属選手たちとの顔合わせが目的だったため、昨日とは少しだけ空気が違っていた。


案内された先は練習エリア。


大会で使用されるハイスペック機材が並び、奥には配信ブースや対戦スペースも設置されている。


「お、来たか」


最初に声を掛けてきたのは鷹宮蓮司だった。


その周囲には既に何人かの選手が集まっている。


「紹介しよう」


鷹宮が笑いながら言う。


「今日から正式にチームメイトになるメンバーだ」


最初に前へ出たのは明るい茶髪の女性だった。


「小鳥遊ひまりです。よろしく!」


「神谷蓮です」


「動画で見たより静かだね」


「よく言われます」


「私も結構言われる」


「いや絶対違うと思います」


「なんで!?」


周囲から笑いが起きる。


続いて眼鏡を掛けた青年が前へ出る。


「雨宮悠真です」


「よろしくお願いします」


「大会全部見ました」


「ありがとうございます」


「質問百個くらいあるんですけど」


「多いですね」


「まだ我慢します」


研究熱心という話は聞いていたが、本当にそのままらしかった。


続いて真田誠司。


藤堂玲奈。


相沢レン。


全員と挨拶を済ませていく。


そして最後に。


一人の男が壁にもたれながらこちらを見ていた。


身長は高い。


鋭い目付き。


チームジャージの上からでも分かるほど引き締まった体。


九条迅。


RAVEN’S NEST格闘ゲーム部門エース。


国内最強候補の一人。


「初めまして」


蓮が言う。


九条は短く頷いた。


「九条だ」


それだけだった。


少し沈黙が流れる。


すると九条が続けた。


「対戦しよう」


「早いな」


真田が苦笑する。


「顔合わせ終わっただろ」


「終わったな」


「まだ五分しか経ってないぞ」


「十分だ」


即答だった。


ひまりが呆れる。


「この人ほんとそれしかないから」


鷹宮も笑っていた。


だが蓮は特に嫌そうな顔をしない。


むしろ。


少し興味を持っていた。


国内トップクラス。


黒崎豪ですら認めるエース。


どのくらい強いのか。


純粋に気になった。


「いいですよ」


その返事を聞いた瞬間。


九条の目が少しだけ鋭くなる。


「今からだ」


「分かりました」


周囲がざわつく。


雨宮が小声で呟く。


「始まった」


「始まったね」


ひまりも頷く。


数分後。


対戦スペース。


チームメンバー全員が後ろで見守る中、蓮と九条が向かい合って座る。


キャラクター選択。


蓮はいつものメインキャラ。


そして九条が選んだキャラは巨大な体格を持つムエタイ使いだった。


長いリーチ。


圧倒的火力。


一撃の重さが特徴のキャラクター。


まるで王者のような風格を持つそのキャラは、九条の代名詞でもあった。


「始めるぞ」


試合開始。


ラウンド1。


開始直後。


九条は前へ出ない。


その場で立つ。


しかし。


存在感がおかしい。


ただ立っているだけなのに圧力がある。


一歩踏み込めば巨大な蹴りが飛んでくる。


そのプレッシャーだけで距離を支配していた。


「なるほど」


蓮はすぐ理解する。


距離戦が異常に強い。


そして次の瞬間。


鋭い中段蹴り。


画面端近くまで届く長いリーチ。


蓮はガードする。


だがそこで終わらない。


次は下段。


さらに前蹴り。


強烈な圧力。


まるで近付くことを拒絶されているようだった。


「うわ」


後ろで見ていた相沢が声を漏らす。


「始まったな」


黒崎が腕を組む。


蓮は少しずつ情報を集めていく。


蹴りの発生。


リーチ。


癖。


連携。


そして。


十五秒後。


初めて前へ出た。


九条の長い蹴りを空振りさせる。


差し返し。


ヒット。


コンボ。


歓声。


だが。


九条は表情を変えない。


次の瞬間。


カウンター。


強烈な膝蹴り。


蓮のキャラが吹き飛ぶ。


さらに追撃。


画面が揺れる。


体力が一気に削られる。


「重いな」


蓮が呟く。


その一言に九条が少しだけ笑った。


「だろ」


ラウンド終了。


九条勝利。


だが。


蓮の目は既に次を見ていた。


ラウンド2開始。


今度は蓮が動く。


序盤から積極的に距離を詰める。


牽制。


フェイント。


歩き。


ガード。


観察。


一つずつ情報を整理していく。


そして見つける。


九条の癖。


長距離戦で無意識に選ぶ行動。


プレッシャーを掛けるタイミング。


そこへ差し込む。


ヒット。


再びコンボ。


今度は蓮がリードする。


「おお」


雨宮が驚く。


「もう見つけた?」


黒崎が笑う。


「見つけたな」


だが。


そこで終わらない。


九条はさらに上だった。


一度読まれた行動を即座に捨てる。


別の択へ変更する。


さらにその先を読んでくる。


読み合い。


読み合い。


さらに読み合い。


気付けば試合は完全なハイレベル対戦になっていた。


長い蹴りが飛ぶ。


差し返す。


投げる。


抜ける。


暴れ潰し。


カウンター。


画面上で選択肢が激しくぶつかり合う。


周囲のメンバーも無言だった。


ただ試合に見入っている。


そして最終ラウンド。


体力は互角。


残り数秒。


九条が前へ出る。


圧力。


プレッシャー。


王者のような歩き。


蓮も下がらない。


真正面から迎え撃つ。


次の瞬間。


九条の巨大なハイキックが飛ぶ。


蓮は反応する。


ギリギリで回避。


差し返し。


ヒット。


だが。


そのさらに先。


九条はそれすら読んでいた。


必殺技。


巨大な膝蹴りが炸裂する。


KO。


試合終了。


数秒の沈黙。


そして。


「面白いな」


九条が言った。


初めて少しだけ笑っていた。


蓮も立ち上がる。


「強いですね」


「お前もな」


短いやり取り。


だが周囲は理解していた。


今の試合はただの歓迎戦ではない。


エースが認めたのだ。


新しいチームメイトを。


そして神谷蓮もまた、自分がこれから戦う環境のレベルを理解していた。


RAVEN’S NEST。


ここにはまだ強い相手がいる。


黒崎豪。


九条迅。


そして他のトッププレイヤーたち。


ようやく。


神谷蓮の新しい挑戦が本当の意味で始まったのだった。

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