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LETHAL -俺だけが見える勝利の一手-  作者: 龍崎
第2章 RAVEN’S NEST加入・大型大会編

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第6話 予想より早い返事

RAVEN’S NEST本社の最上階にあるオーナー室では、鷹宮蓮司が大型大会終了後から山積みになっている資料へ目を通しながら、次々と入ってくる連絡やスケジュール調整の対応に追われていたが、その忙しさの理由の一つには間違いなく神谷蓮という存在があった。


大会終了直後から格闘ゲーム界隈は神谷蓮一色と言っても過言ではなく、無名の高校生が国内トッププレイヤーたちを次々と倒して優勝したという事実は想像以上の衝撃を与えており、業界関係者やスポンサー企業だけでなく、他チームのオーナーや選手たちまでが神谷蓮の動向を気にしている状態だった。


当然ながらRAVEN’S NESTもすぐに動いていた。


鷹宮自身がゲーセンへ足を運び直接会いに行ったのも、その才能を絶対に他所へ渡したくなかったからだ。


大会映像を見た時点で欲しいと思った。


実際に会ってさらに欲しくなった。


そして黒崎豪から届いた評価によって、その考えは確信へ変わっていた。


『獲れ』


『絶対に逃がすな』


長年数多くの選手を見てきた黒崎がそこまで言うのだから間違いない。


神谷蓮は今後の格闘ゲーム界を背負う存在になり得る。


だからこそ鷹宮は返事を待っていた。


焦らせるつもりはない。


だが他チームが動いていることも分かっている。


一週間後かもしれない。


二週間後かもしれない。


あるいはもっと長引くかもしれない。


そんなことを考えながら資料へ視線を落としていた時だった。


デスクの内線電話が鳴る。


鷹宮は手を止めて受話器を取った。


「はい」


『受付です』


「どうした?」


『神谷蓮様からお電話です』


その瞬間、鷹宮の思考が止まる。


神谷蓮。


今まさに頭の中で考えていた相手だった。


「……神谷?」


『はい』


思わず笑ってしまう。


予想外だった。


メールでもない。


担当者経由でもない。


本人が会社へ直接電話をかけてきたらしい。


「繋いでくれ」


『かしこまりました』


数秒後。


回線が切り替わる。


『神谷です』


聞き覚えのある落ち着いた声だった。


本当に本人だった。


「ははっ」


思わず笑いが漏れる。


『?』


「いや、まさか会社へ直接電話してくるとは思わなくてね」


『連絡先知らなかったので』


「ああ、なるほど」


鷹宮は納得した。


確かに名刺も渡していない。


連絡先も交換していない。


普通なら困るところだが、神谷蓮は会社の電話番号を調べて直接かけてきたらしい。


妙に彼らしい行動だった。


余計な遠回りをしない。


考えた結果、一番早い方法を選ぶ。


大会で見せたプレイスタイルとどこか似ていた。


鷹宮は自然と笑みを浮かべながら椅子へ深く座り直した。


「それで、今日はどうしたのかな」


本題を聞く。


すると返事は驚くほど早かった。


『RAVEN’S NESTに入りたいです』


たった一言。


だがその言葉によって鷹宮の中にあった様々な不安が一気に消えた。


予想していたより遥かに早い返答だった。


高校生である以上、家族との相談もある。


進路の問題もある。


悩む時間が必要だろうと思っていた。


だから最低でも数週間は覚悟していた。


しかし神谷蓮は違った。


迷った結果なのか、最初から決めていたのかは分からない。


だがその声には迷いがなかった。


『もしもし?』


神谷の声で我に返る。


「ああ、聞こえている」


鷹宮は静かに息を吐いた。


そして心の底から安堵していた。


「そうか」


短い返事だった。


だがその言葉には様々な感情が詰まっていた。


欲しかった選手。


逃したくなかった選手。


未来を任せられるかもしれない選手。


その本人が自ら加入の意思を伝えてくれたのだ。


「ありがとう」


自然とその言葉が出る。


電話の向こうで神谷が少し不思議そうにしている気配が伝わる。


だが鷹宮は気にしなかった。


この数日、他チームの関係者やスポンサーから何度も連絡が来ていた。


神谷はどこへ行くのか。


話は進んでいるのか。


獲得できそうなのか。


その全てに曖昧な返答しかできなかった。


しかし今は違う。


本人の口から答えを聞いた。


それだけで十分だった。


「理由を聞いてもいいかな」


そう尋ねると神谷は少しだけ考えたあと答える。


『強くなりたいからです』


その返事を聞いた瞬間、鷹宮は思わず笑ってしまった。


やはりそうかと思った。


給料でもない。


知名度でもない。


プロという肩書きでもない。


神谷蓮が最初に考えたのは強くなることだった。


『黒崎さんとも対戦しました』


「ああ」


『もっと強い人たちと戦いたいと思いました』


それを聞いて鷹宮は改めて確信する。


この少年は本物だ。


強さへの欲求が純粋すぎる。


だからこそ伸びる。


だからこそ恐ろしい。


「ますます欲しくなるな」


思わず本音が漏れる。


『もう決めましたけど』


神谷の返答に鷹宮は声を出して笑った。


確かにその通りだった。


そして一通り話したあと、今後の予定について説明を始める。


未成年である以上、契約には保護者の同席が必要になる。


活動内容。


学業との両立。


報酬。


スポンサー契約。


説明すべきことはいくらでもある。


「今度の休みは空いているかな」


『大丈夫です』


「それならご両親も含めて一度本社へ来てほしい」


『分かりました』


「契約の話もその時に全部説明する」


電話の向こうから了承の返事が返ってくる。


その声を聞きながら鷹宮は自然と笑みを浮かべていた。


神谷蓮。


大型大会最大の発見。


そしてRAVEN’S NESTの未来を大きく変えるかもしれない存在。


その加入が、ようやく現実のものになろうとしていた。

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