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LETHAL -俺だけが見える勝利の一手-  作者: 龍崎
第四章 プロリーグ開幕編

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第33話 見る力

九条迅と皇城龍之介。


大将戦が始まる。


控室。


黒崎豪は静かにモニターを眺めていた。


隣には神谷蓮。


視線は画面に向いている。


だが黒崎が見ているのは試合だけではない。


蓮が何を見ているのか。


何を考えているのか。


そちらの方だった。


試合開始。


序盤から激しい差し合い。


九条は前に出ない。


かといって下がらない。


絶妙な距離を維持している。


皇城も同じ。


お互い探り合い。


小さな牽制。


一歩。


半歩。


その積み重ね。


会場は静かだった。


派手なコンボはない。


だがレベルが高い。


黒崎は横目で神谷を見る。


案の定。


真剣な顔をしていた。


「蓮」


「はい」


目は画面のまま。


「九条は何をしとる」


神谷は少し考える。


「様子見ですかね」


黒崎は首を振る。


「半分正解じゃ」


神谷が少し考える。


試合は続く。


その間も神谷は画面から目を離さない。


そして。


「情報を集めてる」


黒崎は笑った。


「そうじゃ」


一本目。


九条勝利。


会場が沸く。


だが黒崎は別のことを話す。


「若い選手は急ぐ」


神谷も聞いている。


「早く勝ちたい」


「早く攻めたい」


「早く倒したい」


黒崎は湯呑みを置いた。


「じゃが本当に強い奴は急がん」


神谷が黙って聞く。


「相手を知ってから勝つ」


その言葉を聞いた瞬間。


神谷の視線が少し変わった。


黒崎には分かった。


何か考え始めた。


二本目。


皇城が取り返す。


一対一。


流石だった。


世界基準。


簡単には崩れない。


会場も盛り上がる。


『レベル高ぇ!』


『どっちも強い!』


黒崎は再び神谷を見る。


今度は自分から聞かない。


考えさせる。


それが大事だった。


三本目。


九条。


四本目。


皇城。


フルセット。


勝負は最終戦へ。


神谷が小さく呟く。


「九条さん攻めてない」


黒崎は聞いていた。


「でも勝ってる」


続く。


「いや」


神谷が首を振る。


「攻めてないんじゃなくて」


黒崎は黙る。


神谷が考える。


「攻める場所を選んでる」


黒崎は笑った。


「そうじゃ」


ようやく見えた。


試合を見る。


ではない。


試合を読む。


その入口だった。


神谷は元々才能がある。


反応も良い。


観察力も高い。


だが若い。


どうしても自分が戦う視点になりやすい。


だから今は見る力を育てる。


世界で勝つなら必要だからだ。


最終戦。


九条が僅かな隙を見逃さない。


差し返し。


コンボ。


KO。


試合終了。


RAVEN’S NEST勝利。


40-0。


会場が大歓声に包まれる。


九条が立ち上がる。


皇城も静かに席を離れる。


素晴らしい試合だった。


だが黒崎が見ていたのはそこではない。


隣。


神谷蓮。


試合終了後もモニターを見ている。


考えている。


学んでいる。


その姿を見て黒崎は少し笑った。


「どうじゃ」


神谷が振り向く。


「一つじゃ足りなかったです」


黒崎は吹き出した。


「そうか」


神谷は再びモニターを見る。


「いっぱいありました」


その答えが聞けただけで十分だった。


黒崎は湯呑みを手に取る。


若い芽は育っている。


焦る必要はない。


いつか。


九条を超え。


自分たちを超え。


もっと先へ行く。


その日を少しだけ楽しみにしながら、黒崎豪は静かに笑った。

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