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幕間  『初めての吸血~モナちゃんの場合~』

 大やけどを負って寝込む事3日、ようやく包帯が取れて傷も治ってきた。

 勇者の加護があるとはいえ流石に無理をし過ぎたと思う。

 怪我が痛んでトイレにも行けない生活だったので、吸血鬼三姉妹にかなり迷惑をかけてしまった。

 

 「あのー、もう治ったから自分で食べられます」

 「駄目だよっ! ハルマーは安静にしてないといけないんだから!」


 モナちゃんは特に俺に対して過保護になってしまい、今もスプーンで俺にスープを飲ませている。

 つきっきりで看病してくれていた手前、俺も強く拒否する事は出来ずおとなしく口を開けてやられるがままになる。

 結局その日のご飯は全て彼女があーんをして食べさせてくれた。


 「それじゃあ体も拭いちゃうから、服脱いでっ!」

 「いやいや、それはさすがに自分で出来ます!」

 

 ベッドから飛び起きると、体の無事をアピールする。

 しかしモナちゃんはものすごい腕力で俺の体を押さえつけるとベッドへと押し倒した。

 3日間寝込んでいた為、体がかなりなまっており俺はあっさりと組み伏せられる。

 少女は鋭い眼でこちらを見ながら俺の服を次々と脱がせていく。


 「ちょっ、タンマタンマ!」

 「ハルマーは怪我人なんだから、モナに任せてっ!」


 少女の手が俺の股間を覆う最後の布に手をかけた時、部屋の扉がバタンと音を立てて開いた。


 「モナ! そこまでなのだわ!」


 金髪の幼女はモナちゃんに駆け寄ると、ぐいっと引っ張って俺から引き離す。

 モナちゃんは強い力で抵抗しようとしたが、魔法で押さえつけられているのか身動きが取れない。

 俺は股間を手で隠しながらアリナさんに質問する。


 「アリナさん、どうしてここに?」

 「魔力の大きな変動を感じ取ったのだわ」

 「魔力の?」

 「ええ、恐らくモナはあなたを吸血して自分の眷属けんぞくにしようと考えているのだわ」


 よく見るとモナちゃんの顔は紅潮しており普段隠れている牙が2本伸びていた。

 白い牙は鋭く尖っており、新鮮な血液を欲して禍々(まがまが)しいオーラを放っている。


 「この子は興奮するとすぐに吸血をしたがる癖があるのよ。今まで拾ってきた人間も皆、彼女の餌食になりかけたのだわ」

 「過去にも俺みたいな人間がいたんですか?」

 「ええ。自力でここまで来たのはあなたが初めてだけど、大体はガラクタに混じって転移してくるわね。吸血しようとする度にこうやってわたくしが助けていたのだけど、大半は怖がって元の世界に逃げ帰っちゃうわね」


 吸血鬼に吸血されるとほとんどは絶命し、グールへと変化する。

 今まで館に来た人間達は死の恐怖を感じ取ってここを離れたのだろう。

 だが、彼女は一つ勘違いをしている。

 俺はその事を指摘した。


 「あのー、俺吸われても大丈夫ですよ。魔界でも何度か吸われた事ありますし」

 「ええ!? でもあなたは生きているのだわ」

 「勇者の加護はあらゆる病原菌や呪い、怪我に対しての抗体を持つ。アリナさんもご存じのはずです」

 「それじゃあ……」

 「俺の血はガンガン吸っちゃってくれて大丈夫です!」


 驚いたアリナさんは、モナちゃんを拘束していた魔法をうっかり解除してしまう。

 解き放たれた吸血鬼は真っ直ぐに俺のところに飛んでくると、首筋に抱き着いた。


 「お世話になりましたし、食料の提供くらい任せてください!」

 「食料? ハルマさん、彼女がする吸血はそっちじゃないのだわ」

 「モナちゃんはお腹が空いてるんじゃないんですか?」

 「いいえ、食事用の血は輸血パックでまかなっているって説明を受けたはずなのだわ。吸血鬼の吸血が満たすのは、食欲と性欲。今回は後者なのだわ」


 アリナさんはそう言うと静かにその場を立ち去った。

 ふと視線を下に向けると、いつの間にかモナちゃんが服を脱いでこちらに馬乗りになっている。

 息を荒げた吸血鬼は口元から垂れた涎を手で拭うと、俺の体に倒れ込む。


 「おい! ちょっ、今度こそタンマ! こういう事はもっと改めてやるべきだと俺は思うぞ!」

 「ふふふ……ハルマーの血、おいしそう……」

 

 聞く耳を持たない少女は俺の体を下から上に向かってペロペロと舐めまわす。

 どこから吸おうか熟考しているようだ。

 顔はすっかり紅く染まっており、熱い吐息が俺の体をくすぐる。

 

 余談だがサキュバスは吸血する際に自身の唾液を送り込む習性がある。

 この唾液にはアドレナリンを過剰分泌させる効果を持つ成分が含まれている。

 アドレナリンは、興奮させることで吸血の際の痛みを和らげてくれる効果を持つ。

 そう、興奮してしまうのだ。


 少女は俺の口を口でふさぎ込むと、口腔内にトロリと唾液を垂らし入れる。

 柔らかく温かい少女の舌が俺の口の中を蹂躙じゅうりんする。


 「……ぷはぁ」


 少女が口を離すと、俺の体には既に変化が訪れていた。

 瞳孔が開き、息が荒くなり、そして股間の聖剣が抜刀され上段の構えをとる。

 

 「えへへー……ハルマーも元気になってきたねぇ……」

 「おい、さすがにこれ以上はまずい」

 「生意気言うお口は塞いじゃうぞっ」


 少女はそう言うと俺の口を再びキスでふさぎ込む。

 2度目の唾液の注入が行われ、頭がぼうっとする。

 どろりとした唾液はどこか甘く、俺の思考力を奪う。


 「ぷはぁ……ハルマーのお口おいしいぞー」

 「ハァ……ハァ……」


 体に力を上手く込めることが出来ない。

 まるで全身の筋肉が麻痺まひしているようだ。

 吸血鬼の少女は俺に魅了チャームの魔法をかけると、うっとりと微笑む。

 

 「まずは指先からちょっとだけ味見……」


 少女は俺の右手を掴むと自身の小さな口の前まで持ち上げる。

 そしてチロチロと舌を出すと、俺の指先を丁寧に舐めだした。

 

 「はむっ……んっ……んむ……」


 ピンク色の舌を使って少女は器用に俺の指を掃除していく。

 指の間を舐められるとくすぐったく、体に電撃で痺れたような感覚が走る。

 たっぷりと唾液を塗り付けた後、少女は指先に小さくキスをしてから牙をむいた。


 「それじゃあ……ハルマーのお味を……」


 かぷっ。

 人差し指の先の方に小さな切り傷が付けられる感覚。

 アドレナリンの効果で痛みこそないが、刃物のように鋭い牙によって切られ出血する。

 少女は指先からしたたる赤い鮮血を、伸ばした舌で上手に受け止めた。


 「……おいしい」


 数滴の血液をワインを味わうように舌の上で転がして風味を味わう。

 勇者の加護によって先ほど作られた傷跡は既に消えてしまった。

 モナちゃんは残念そうな顔をして傷の塞がった指をペロペロと舐める。


 「次はもっと太い血管を……」


 舌なめずりした吸血鬼は俺の体の上に四つん這いになってまたがる。

 ただし先ほどとは向きが違う。

 俺の眼前には一糸纏いっしまとわぬ少女の柔らかそうなお尻があった。

 少女は頭を俺の腰の方へ向けて四つん這いでのしかかっているのだ。


 その体勢は色々まずいって。

 俺は口を開こうとするが、上手く言葉が発声できずヒューヒューと喉から空気が出るのみ。

 体の麻痺は声帯にまで達していたらしい。


 「さて……どこを吸おうかな」


 少女は腰を持ち上げて俺の下半身を物色する。

 俺の目の前に危険な光景が広がり、思わず目をつぶる。

 もぞもぞと動く少女の柔肌が俺の体を刺激し、股間の一部分が更に元気になる。 

 目を閉じて視界を遮った事で、その他の五感が活発に働く。


 「やっぱり太い血管だよね……」


 そう呟くと、牙を立てて俺の太ももに噛り付いた。

 固い筋肉に覆われた太ももだが、鋭い牙によって簡単に貫かれる。

 刺さる瞬間、体に激痛が走り思わず目を見開く。

 

 「……んむっ……んぐっ……」


 少女は眼前で腰を振りながら吸血していた。

 血を吸うたびに彼女の体は多幸感に包まれ、ビクンビクンと小さく痙攣する。

 修行によって鍛えられた太ももの筋肉は少女の牙をガッチリと締め付け、細くなった刺し傷から高圧で血液を流し込む。


 「……んぐっんぐっ……ぷはぁ! いっぱいだぁ」


 顔を赤らめた少女は満足そうにそのままうつぶせになる。

 豊かな双丘が俺の下腹部に当たり、押し潰される感覚が伝わってきた。

 発汗した少女の体はほんのりと湿っており、むわっとした少女の香りが鼻腔びくうをくすぐる。


 「そろそろメインディッシュかな」


 少女は俺の体の上でごろんと向きを変えると、顔をこちらへ向ける。

 あどけない少女の顔が眼前にきて、温かい吐息が俺の頬をくすぐる。


 「吸血鬼といえば……ここだよね」


 モナちゃんは口を大きく開けると、俺の首筋に噛り付いた。

 太ももを刺された時に慣れたので意外とすんなり受け入れることが出来た。

 血液が首を伝って吸引されていく感覚がはっきりと分かる。


 少女は俺の体を抱きしめ、柔らかい自身の肉体を全身にすりつけてくる。

 俺は血が少なくなっていき貧血によって頭がクラクラするが、少女の体を抱き返した。

 せめて意識を失うまでこうやって抱き合っていよう。

 薄れゆく意識の中、少女の満足そうな笑みを最後まで見ていた。

吸血回その1です。

今後もキリがいい所でこうやって幕間として吸血回を設けていく予定です。

次回はサイクル通りシルヴィアさんの通常回になります。

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