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花紋様の宝石姫  〈魔の森でスローライフ始めます〉  作者: おかき


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3/11

3話 パーティー解散の危機

セルスは心が満たされるのを感じていた。

自分の腕の中に綺羅を閉じ込め、震える可愛い黒兎は私の様子を伺っているのだから。


「私はこれでも綺羅さんより二歳歳上ですよ?」


セルスの言葉に綺羅の目が丸くなった。


(目がまん丸になった。やはり可愛い……)


「私は女性に関心がなく、好意を寄せたのも恋をしたのも貴女が初めてです。確かに私の容姿に擦り寄る女性もいますが、興味はありません。それに、綺羅さんに伝えた言葉は初めて口にしました。誰にも向けた事はありません。ですので、女誑しではありません」


綺羅は目をパチパチさせ驚きを隠せていない。

セルスはクスリと笑い、綺羅を抱きしめた。


「私の恋心を奪ったのです。逃がしません」


セルスの言葉の意味を理解するまで綺羅は少し時間がかかった。


(もしかしなくて、ヤンデレ?)


ヤンデレはお断りしたいけれど、セルスは寂しい綺羅の胸の内にスルリと入ってきた。

綺羅はほんの少し、セルスに関心を持ってしまっている事を自覚した。


(まだ恋ではない。けれど、セルスさんの魔力はとても心地よいのよね)


その事実だけを綺羅は受け入れた。


「セルスさんはこれからどうされるのですか?」


綺羅の質問にセルスは綺羅の美しい黒髪を撫でながら答えた。


「ダンジョンには潜りますが、準備をしなければなりません。一旦森を出てからまた来ます」


セルスの言葉に少し寂しそうにする綺羅に気が付いた。


「次に来るまで結界から出ないようにしてくださいね。今は普段より人が森に多く出入りしていますし。綺羅さんの存在はまだ知られない方がよいので」

(まぁ、私にとって。ですが)


自分の存在はあまり良くないのだと思い、セルスの言う通り暫くこの家でじっと過ごすことに決めた。


「仲間を連れて帰りますが、二日後くらいにまた来ます。くれぐれも結界から出ないようにしてくださいね」


セルスは綺羅の頭をポンとすると、来た道を帰って行った。


「なんだか、上手く言いくるめられた気がするのだけれど……」


少しモヤモヤを抱える綺羅だが、自分の存在を知られない方が良いのは、自分の能力を知っているので納得するしかなかった。


他人を鑑定出来ないけれど、自分を鑑定は出来た。


名前

 川口 綺羅 二十四歳


種族

 人族(女・未婚・恋人なし)


この世界の呼び名

 花紋様の宝石姫


スキル

 鑑定

 緑の手

 錬金術


ギフト

 神の手


うん。わからない事が多い……。

それに恋人なしと、未婚の文字はいらない。


「セルスさんなら私の能力の意味が分かるかしら……」


まだセルスを信用しきるのは早計と、暫くは自分の能力を隠す事にした。


森の結界に触れ強化をする。

とりあえず、人はセルスさん以外は絶対に入れないようにした。


「よしっ!」


二日後までにやる事をやってしまおうと、綺羅は家の中に入って行った。




森を歩くセルスはとても上機嫌。

綺羅と知り合い、仲良く?なる事が出来た。


「綺羅さんは本当に可愛かったですね」


口元が勝手に緩んでしまう。

笑みを浮かべ湖に戻ると、パーティーの三人がセルスを見て走ってきた。


「遅いから心配したぞっ」


剣豪のアレクセルがセルスの肩に手を置き無事に戻った事に安心して息を吐いた。


「それよりダンジョンは見付かったか?」


セルスが問いかけると、三人は首を降る。


「本当にあるのかしら?」


「やはり噂に過ぎなかったのかもな」


そんな話をするなか、セルスがパーティーメンバーに話をする。


「ダンジョンがあるかもしれない場所を見つけたが、誰かが結界を張ったのか魔法がいくつも仕掛けられていた。私が何度か様子見をして解除しようと思う。

時間は少しかかるから、三人で依頼でもうけて日を過ごしてくれ」


セルスが嘘の話を伝えた。

綺羅がダンジョンの場所を知っているので、直ぐにでも行けるのだが。

綺羅と交流を深めたいセルスは時間稼ぎのための嘘の話をしたのだ。


「私はセルスと一緒に森にいくわ」


ヒーラーのエレンが一緒に行くと言い始めた。


(冗談じゃない。エレンと一緒なんて、ごめんだ)


「私は一人で森に行く。何かがあっても私はエレンを援護はしない。魔法に関わる対処をするのだ。エレンが魔物に襲われても手を貸さないが?」


エレンはヒーラーであり、攻撃魔法は一切使えない。普段はパーティーの真ん中か安全な場所に下がらせてアレクセルとセルスが魔物と対峙する。

その間は、索敵のスレーナがエレンを守っている。


確かにヒーラーはパーティーには必要ではあるが、セルス本人は回復魔法が使えるのでエレンを必要としていない。

アレクセルとスレーナに必要だから組んでいるだけ。


なのに……。


エレンがセルスに惚れているのは、全員が気がついている。

色恋禁止で四人は誓約書を結びパーティーを組んでいる。

セルスは単独の冒険者。

アレクセルとスレーナは元々同じパーティーメンバー。

エレンはパーティーに入っては抜けてを繰り返していた。


(直ぐに恋愛関係を求めるエレンは、冒険者の間で扱い難い人物とされている。調和を乱す者は実力があろうと外される)


セルスとアレクセルがエレンをパーティーに入れたのは、スレーナがエレンが一人でいるのは可哀想だと連れてきたからだ。

セルスはエレンが自分を見た瞬間、態度を変えたので『色恋禁止』の誓約を付けたのだ。


セルスの機嫌が悪くなったと気が付いたアレクセルが、エレンに無理についていかないように説得していた。


「はぁー」


セルスは一人先を歩き、パーティーは魔の森を後にした。


セルスの不機嫌は街に帰ってからも続いた。

せっかくの綺羅との幸せな感情を目の前の女が台無しにしたからだ。


街に帰りギルドで魔の森の深層部に入らないように報告をあげた。

ダンジョンに魔法が仕掛けられている事。

セルスでも解除に時間がかかる。と、報告をする。


Sランクの冒険者からの報告により、ダンジョンへ近付く事が禁止された。


セルスは一人で探索に向かうため、残る三人が明日からの依頼がないかを探していた。

セルスは少し離れた場所で綺羅に何かお土産を持って行こうかと考えていた。


(まずは、ダンジョンの準備をしておくか)


三人にはダンジョンに潜る準備はしておくと伝え、宿に戻り準備を進めるつもりでいた。


「セルス!やっぱり一緒に行きたいわ。いいでしょう?」


セルスの背後からエレンがそう声をかけた。


「一緒には行かないし、連れて行かない。そう言ったはずだが?」


「自分の事はなんとかするから、一緒がいいの」


甘えた声で伝えるエレンに苛立ちが増す。

(こいつ、いらないな。スレーナが頼み込むから同意したまでだ。それに、俺一人でもダンジョンに潜れるしな)


「アレクセル。俺はパーティー抜けるわ」


セルスの言葉に、急いでエレンを追って来たアレクセルは焦り始めた。


「駄目だ!お前が抜けたら困る」


セルスの腕を掴み、必死に引きとどめるがセルスはアレクセルの手を振り払った。


「ならば、暫く別行動した方がいい」


セルスは苛立ったままギルドを出て行った。

苛立つ気持ちのまま、セルスはダンジョン準備のために商会に入ろうとした。


「セルス!待って!」


スレーナが走って追いかけてきた。

スレーナの事は嫌いではないので、一応立ち止まり向き合った。


「ごめん……私があの子をパーティーに入れたから……」


「そうだな」


スレーナが謝罪するも、その通りなので否定はしない。


「エレンをセルスについて行かないように何とかするから。それより、森で良いことあったでしょう?魔力が温かかったから、機嫌が良かったよね?」


(だから索敵者は嫌なんだ……)


「良いことはあった。今は話せないけどな」


「いつも退屈そうだったから心配はしてたんだー。良いことあったなら、良かったね」


スレーナは笑顔でセルスに伝えた。


「そうだな……」


色のない退屈な毎日を過ごしてきたが、綺羅と出会い明日が楽しみに思う事を初めて知った。

また誰かに会いたいと思う事も。


「エレンが無理についてきたら、俺は抜ける」


セルスの真剣な表情に、スレーナは首を振る。


「セルスは抜けないで。エレンがセルスについて行ったらエレンをパーティーから追放するから」


アレクセルとも話し合ったらしく、次にやらかしたらパーティーから外れてもらうと決めたようだ。


綺羅と会っていると知ったら必ず邪魔してくるだろう。

綺羅を傷付ける可能性もある。


排除出来るならそれで良い。

セルスはとっくの昔にエレンに見切りをつけていたので、気にもとめなかった。


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