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異世界[知らない場所]で、私[金髪碧眼美少女]とあなた[桃髪ツインテ美少女]がやりたいこと・やりたくないこと~バディでのりきる!ゆるゆるサバイバル生活~  作者: てついち
私とあなたと知らない人

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なんか寂しかったからくっつきたい

 この度、かねてより建設中でありました『おじさんぼくじょう』ですが、本日をもって無事に竣工と相成りました。ちなみに着工日も同日です。施工期間は三十分ほどです。皆さまのご理解とご協力、誠にありがとうございました。


 まったくどういうことだってばよ。


 かくて厩舎内には、満を持して六匹のおじさんが解き放たれたのである。しかし、おじさんたちは濡れて麻痺ったままのしょぼおじなので、全員が敷いてある草の上に横たわっている。これでは牧場始まって以来の営業の危機だ。まぁ客が来る予定もないし、こんなものを見に来られても困るのだが。


「これ、麻痺ってどれくらいで解除されるのかね?」


「初めて使ったからわかんなーい」


「そっかー」


「とりあえず、家(うち)の改修して、ご飯をちゃんと食べてからもう一回様子を見に来ようか」


「りょ」


「ところでエルザお姉さん」


「なにー?」


「なんでそんなに後ろからくっついてくるの?」


 エルザはヘルガの後ろに回って、胴のあたりに腕を回してがっちりホールドしていた。身長はエルザの方がやや高いので、雰囲気的には妹を抱えているような状態ではある。中身は別として。


「フッ、今日はちょっと君を離したくない気分なのさ」


「……そういうもんなの?」


「そういうもんなの!」


 ヘルガはため息をひとつつくが、ちょっとだけ満更でもなさそうな顔をしてから、子供をあやすように言った。


「まぁ、どうぞご自由に」


「へへへ、そうする~」


 言っていることは軟派なキザ野郎なのであるが、やっていることは弟か妹ができて嫉妬が始まった時の上の子みたいだな、とヘルガママは思った。なので好きにしてもらうことにしたのだが、そうすると嫉妬対象の下の子は六つ子のおじさんたちになってしまう。果たしてそれはいろいろと大丈夫なのだろうか?


 ヘルガママ的には、おじさんたちを赤子扱いすると嫌悪感がすごいのと、絵面がちょっとアレ過ぎるので、そこらへんは綺麗さっぱり忘れることにした。



♢



 今回のヘルガのお家(うち)大改修は、主に水回りの見直しであった。


 師(ヘルガ)曰(いわ)く、『おじさんぼくじょう』では、トイレはトイレ、滝は滝でそれぞれ独立した造りになっており、水には浄化作用が付与されている。そんでもって、不純物は流れた先で分離されるようになっていて、水だけ循環するような構造になっている。それを家の方にも備え付けてしまおう、ということらしい。


「つまり? どういうこと?」


「ずっと綺麗な水が回るようにしたってこと」


「そうすると、どんな良いことがあるの?」


「水のタンクが要らなくなって、シャワーは何もしなくても温水が出るようになります」


「なるほど! すごい! ヘルガすごい!」


 エルザはヘルガの頭をなでなでした。多分先の説明のことは頭に入っていないけれど、ヘルガがすごいってことはよくわかった。んで、改修してる間もずっとエルザはヘルガに引っ付いていた。よくまぁ邪険にされなかったものだ。


「褒めてくれるのは嬉しいけど、そろそろ離れない?」


「やだ!」


「そう……今日は随分と甘えん坊さんなのね」


「え、そう? ……キモかった?」


「別にそんなことはないけど……何かあった?」


「え? いや? 別に? 何もないですけど?」


 エルザはヘルガからさっと手を離すと、明後日の方を向きながら口笛を吹いて誤魔化そうとしたが、口笛が吹けなかったので全然誤魔化せなかった。


「ふふっ、何してるの」


「口笛吹けなかった……」


 口笛を吹こうとしていた口のままで喋るもんだから、エルザが一層しょぼくれて見えてちょっと面白い。


「落ち込まないで? これで元気出る?」


 ヘルガは正面から、エルザにストレートなハグをした。


「な!? ちょ!? え……!?」


 さっきまで散々後ろから貼り付いていたというのに、エルザはしどろもどろになった。結構直球に弱い。一方ヘルガはそれを知ってか知らずか、唐突に火の玉ストレートを投げてくる。これは投手の采配に打者が完全に抑え込まれた形だ。


「さすがに私もお腹空いてきちゃったなぁ~? 一緒に食べる?」


「あ……わ、私……」


 抱きついているヘルガの上目遣いが妙に色っぽい。きっと世界中の誰もが、こんなことをされたら一緒に食事に行くルートまっしぐらだ。彼女の視線には、何かこう、本能に訴えかけるものがあるように思う。


 しかし、忘れてはならない。エルザだってしっかりと本能に忠実に生きているということを。脳で考えず、脊髄で言葉を発することができるということを。


「……わた、私……!」


「ん~? なぁに~?」


 ヘルガの上目遣いと、答えを要求する口調に、エルザは己の本能のまま、脊髄から出るままの答えを、遂に口にするのだった。


「……私、今お腹いっぱいだったんだわ……」


 まぁ、そういうことですよね。ビバ脊髄反射。


「……そう言えばさっき食べてたんだったわね……」


「うん、ごめんね……でも横で見てるね……」


「え、別に見てなくても良いけど……」


「横で見てるね……」


「うん? まぁ好きにしたら良いけど……エルザ?」


「なぁに?」


「そろそろ離してくれないとご飯食べられないんだけど……」


「……離さない!」


【 ヘルガ は にげる こと が できない ! 】


「ちょっと待って!?」


「やだ!」


「離してって!」


「やだっ! 自分から飛び込むやつが悪い!」


「えぇ……?」


「あったかくてやわらかくていいにおいがするんだ!」


「急に何っ!?」


「だから離さないっ!」


「えぇ~……?」


 打者による強烈なピッチャー返しは、このあと五分ほど続いた。最終的にエルザは、ヘルガの防御魔法によって無理やり引っぺがされることになった。何事もやり過ぎには気を付けましょう。

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