石はいいからお宝ほしい
エルザが追い付いたときには、既にヘルガは鍛冶場があったと思われる敷地内に入って何やら。色々観察していた。まぁエルザに見えるのは積み上がった石とか壁だった石とか生えている木とかである。あと転がっている石とか。
「何か面白そうなのあった~?」
という、頭の後ろで手を組みながらやってきたエルザに対して、ヘルガはちょっとだけしょんぼりしながら振り返った。
「……エルザお姉さん、さっきここには人がいっぱいいて賑やかだったって言ってたでしょう?」
「う? うん、言ったけど……」
「ここでこのお城の金属製品全部の調整や修理をしていたのよ」
「へぇ~、そ、そうなんだ……」
「お鍋とか包丁とか、鍵とかそういうものもここで修理とかしてたのよ」
「そ、それはすごいねぇ~……」
「これこそ昔の人がいたっていうロマンの証拠そのものでしょう?」
「あ、あぁ~、確かにねぇ……」
暖簾に腕押しな感じのエルザお姉さんに対して、ヘルガは大きなため息をつく。ふいごの跡とか金床石とか色々あるじゃろうに。
「はぁ……まぁエルザお姉さんがこういう遺跡に興味はないんだろうなとはわかってましたけどね」
「あはは……ごめんね……さっきも鍛冶場までは見てないからさ……」
つまり人の居た痕跡だけ見たところで、エルザの脳内ではこの場所の過去とは繋がらない=興味も湧かないということらしい。先程も元が影絵なれど途中から鮮明に〝そのもの〟のイメージに近いものを視ているわけだが、その辺が感覚として繋がるのはやはり同一の場所のみのようだった。
妙に難しいことを説明しても仕方ないのでお教えしよう。エルザちゃんはぶっちゃけこんなとこ見ててもつまんないってことなのだ。
「んもう、私もそれ視たい! みーせーてー!」
「み、視ようと思って視られるもんじゃないし……場所も選べないからぁ!」
「エルザお姉さんばっかりずーるーいー!」
肩を掴まれてゆっさゆっさされるエルザだが、ヘルガの揺すぶりが優しいのであんまりダメージはない。何だかんだでじゃれ合ってるだけである。猫か。
「それよか、何か拾っても良さそうな鉄のかたまりとかあった?」
「……ないわ。この辺に落ちてるやつもきっと歴史的に価値があるもの」
「……それ言っちゃうと残してある鉱石があったとしても、そっちにも価値付いちゃうんじゃないの?」
「う、正論で痛いところを……」
実際、遺跡として保存してあるような場所であれば、そうなることは間違いない。未使用な素材があったとて、なぜ未使用で捨て置かれたのか、流通の経路はどうであったのか等、歴史を知る上で欠かせない材料となるのだ。無論、それに価値をおく国家とか領主がいればの話ではあるが。
現代の地球人類に限って言っても、割とつい最近まで……まぁ今もだけど、過去の遺物など奪え壊せ塗り潰せとやってきた事実は決して忘れてはいけない。要は状況次第って感じっすね、ハイ。
「ただ、この遺跡がどう扱われているか、まだちょっと判断ができないのよねぇ……」
「廃墟になった後、誰も来てなさそうな感じはある」
そもそもが風化が進んだ廃墟ではあるのだが、拠点として再利用しようとした形跡や、盗掘を目的とした破壊痕らしきものは素人目で見ても存在していないようだった。そもそも防衛に主眼を置かれた城であるが故、屋外に金目のものなど何もないだろうが。
「……ところでなんで鍛冶場を見たかったの? まぁ、さっきのロマンうんぬんは一旦ちょっと置いといてさ」
「や、やっぱりこういうところを見て当時の製鉄技術がどれだけのものだったかを知るのはすごい貴重な知識になると思うのよ……!」
【 ヘルガ の め が およいで いる ! 】
「……ふーん、で、本音は?」
「……さっきも言ったけど、精錬とかやってる場所あったら鉱石たくさん残ってるはずだから色々使わせてもらおうかなーって思ってて……」
ヘルガは人差し指を口の前で突き合わせると言い訳がましくうりうりし始めた。可愛い。肩に乗っている鳥もどきは空気になった。
「ふーんふんふん、ヘルガさん、おぬしもワルよのぅ」
「へっへっへ、エルザお姉さんほどではありませぬよ」
「……で、目論見が外れたと」
「……はい。そもそも鍛冶場と精錬場って違うってことすっかり勘違いしてたっぽくて……」
【 ヘルガ は しおしお に なった !】
「精錬場……? まぁ、とりあえずここには鉱石はないわけね」
「まぁ、そういうことです」
珍しくしおしおしてるヘルガを可愛いなと思いつつ、エルザはとりあえず次の方針を固めることにした。目指すはお宝なのである。
「じゃあとりあえず奥に進もう! 建物残ってそうだし、誰も来てないならお宝もあるかもしれないし!」
「そうだね。少なくともここじゃお姉さんも退屈しちゃうし」
「なんだとぉー? そのとおりだぞーうりゃー!」
「いやぁー! お戯れを! お戯れをー!」
何か距離縮んだからってこのふたりいちゃつき過ぎじゃないっすかね。
「フスー」
ふたりのやり取りを見ていたアストレアはついに何も言わずにクチバシについている鼻孔からため息をついた。犬が飼い主に呆れた時みたいなやつ。
「……え、今アンタため息ついた?」
「ぴ」
「は、早く進めって?」
「ぴ」
ほんと先進んでくれよ。あんまりいちゃつかれてると地の文も中々困るんだよ……。




