森は危険なので移動したい①
肉を焼いて食ってたら結局狼来ました――☆
「同じやり方でやっつけるのって何かちょっと罪悪感あるよね」
また適度な岩を見つけては腰掛けるエルザ。風に美しい金髪をなびかせて太ももを晒す碧眼の綺麗系美少女は、それだけならば上品な雰囲気さえ醸し出しているように見えるが、実際は暇を持て余しているだけである。どこかの第三者がビジュアルだけ見れば間違いなく世界が獲れるって思うことだろう。何の世界を獲るのか知らないし、残念なことに思考は単細胞の脳みそ筋肉寄りであるが。
「急だったから仕方ないよ。新しいこと試すにしても、もっと落ち着いて余裕がある時にするべきだと思うし」
狼をポンポンと素材に変えていくヘルガ。桃色の髪を二つに結って風に遊ばせる可愛い系美少女は、髪に近い桃色と白をベースにした清楚なドレスを身に纏っており、本来血生臭くてあまり好まれないであろう行為と裏腹に庇護欲をそそる雰囲気を醸し出している。どこかの第三者がビジュアル諸々を見れば間違いなく世界が獲れるって思うことだろう。何の世界を獲るのか知らないけど、こちらは理知的に思考を巡らす参謀タイプである。つまりこっちは残念ではない。
「で、そろそろお日様が傾いてきちゃったわけなんですよ」
「そうですねぇ」
「このままだと野宿ってことになっちゃいそうなわけなんですよ」
「防御できるとは言え、野宿はちょっと不安が大きいですからねぇ」
「ヘルガさん、家って作れないっすかね?」
「……まぁ、そう来るとは思ってましたとも」
「……ちなみにその狼、ヴィーゼンヴォルフって言うらしいよ」
エルザ は じょうほう を うりつけよう と した!
「うん知ってる」
「なんでッ!?」
しかし ヘルガ に こうか は なかった!
「これ、わかる?」
ヘルガは自分の右目辺りを指さす。そこには重なった魔法陣らしきものがはっきりと見えた。つまりヘルガも簡易分析が……
「できちゃった☆」
「なんでッ!!?」
「きっともともとが簡単なスキルだったんでしょう? 簡易ってついてるくらいだし標準的なものなんだと思うよ。嗜み的な?」
「……わ、私の専売特許が……これで役に立てると思ってたのに……」
エルザ は しおしお の ぐずぐず に なった!
「充分役に立ってるから! それに、まだ今日の今日でしょう? そんなに焦る必要ないってば」
「……うっ、うぅっ、まさか同じことができちゃうなんてぇ……」
「逆に考えましょう。私にできたこともエルザにできる可能性があると」
「……そうか! そうだね!」
エルザは防御魔法を使おうとした! だがうまくいかなかった!
「……ぬっ、まだまだァ!」
エルザは呪われていそうなバトルアックスで木を伐採しようとした!
木は斜めにズバッと切れてそのまま横に倒れた! 正しい伐採だ!
いや正しくないし結構これも大概チートなんだけど。
「……うっ……ううっ……ママぁ……ヘルガママぁ……!」
「ごめんなさい、残念だけどあなたを産んだ覚えはないのよ」
「うぅっ……ママ、刷り込みって言葉知ってる?」
「知らないしママじゃないわぶっ飛ばすわよ」
「ママ……刷り込みって言葉だけでも覚えて帰ってね……」
「賢い子ね……あなたならきっと一人で野宿でも大丈夫だわ」
「……ごめんなさい許してください」
※倒した木はスタッフ(ヘルガ)がしっかり素材にして片付けました。
「で、どうするかってお話なんですよ」
「私から提示できるのは二案」
エルザの進言に、ヘルガは持ち合わせの最適解を提示する。さくさく決めていかないと本当に野宿になってしまう。何か作るなら明るい内に済ませてしまうのがセオリーというものだろう。多分。
「案その一、そのまま建ててみる。とりあえずそれっぽいクラフトを試して家か、ダメでも最悪テントのようなものを建てる」
「それ一択じゃないの?」
「案その二、穴を掘って地下にシェルターみたいなものを造る。ちょっとずつ穴を掘っていけば天井がそれなりに高い建物も無理せず造れるかもしれない」
「なるほど、さっきの穴掘った感じで作るのね」
「今のところ私が思いつくのはこれくらいかな? どっちが良いと思う?」
「案その三、それらの複合ってのは?」
「……うーん、欲張りたいのはわかるけど、手間は減らしたいのよね……」
「まぁ、そうだよねぇ。地下に作ったら明かりが入ってこないかなと思って半地下みたいなのを想像したんだけど……」
「あぁ、そういうこと! ごめん、確かに採光は考えないといけないね……」
ヘルガは視野狭窄になっていたことを少し後悔した。エルザの言っていることはもっともであるのに、どうせまた欲張りたいのだろうと一蹴しようとしてしまった。これは友達として恥ずべき行いである。
「え? あ、気にしないで良いって! 私は口出すくらいしかできないからさ、思いついたことを言ってみただけなんだって」
「本当にごめん……。今度からちゃんと話を聞くようにするから……」
「そ、そう? そう言ってもらえると私も嬉しいよ。わかってくれてありがとう、ヘルガママ」
「……案その四、私は勝手にやってあなただけ野宿」
「ごめんてぇ! それだけは勘弁してぇ……」
「次言ったら頭締め上げるからね……」
「……はぁい、ごめんなさぁい……」
「ぴぴぴぴ……」
ふたりのくだらないやり取りに、やれやれ、と言いたげなアストレアもどこか楽しそうだった。
※09/08 6話を①~②に分割、加筆微修正しました。




