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箱庭のテラフォーミング【カオル編】流浪のエンジニアと、世界のバグ  作者: 大神みや
第2章 泥まみれの正解と、あやとりの街

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幕間:観測者と家族

砂埃を上げて走り去ったトラックを見送った、その日の夜。


メルフドの街。


先生の家の地下室では、冷たい青色の光を放つコンソール画面が密かに起動していた。


通信の向こう側にいるのは、彼らに指示を出していた上層部――「イザベル」と呼ばれる存在だった。


『どうして彼女を行かせたの? あなたたちのタスクは、カオルをその街に繋ぎ止めることだったはずよ』


感情の起伏が読めないイザベルの問いかけに対し、コンソールの前に立つ先生とママは、静かに並んで顔を見合わせた。


恐れる様子もなく、先生が穏やかな声で答える。


「カオルは、私たちの大事な娘です」


「ええ。娘が、自分の好きな人のところへ行きたいと言ったら……親として、それを止めることなんてできませんよ」


ママも微笑みながら、画面に向かってはっきりと告げた。


システムへの明確な反逆。


しかし、スピーカーから返ってきたのは、拍子抜けするほど軽い声だった。


『……まぁ、いいわ。思い通りにはならなかったけれど、結果的に物語が面白くなるなら、私はそれでいいの』


イザベルのその言葉を最後に、通信はふつりと途切れた。


青い光が消え、再び静寂が戻った地下室で、二人は肩の力を抜いた。


彼らは与えられた役割を放棄したが、その顔に後悔は微塵もなかった。


「いつかまた……カオルが彼を連れて、ここに遊びに来てくれたらいいな」


「ええ、本当に。その時はきっと、アイシャも大喜びするわね」


ふふ、と二人は静かに笑い合った。


頭上の天井の向こうからは、今日も一日泥まみれになって遊んだアイシャの、穏やかな寝息が微かに聞こえていた。


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