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【番外編 reverse 5 after and after】

 バンテリンドームでのヤクルト三連戦が終わり、一同はアハロを旅立った。


 ゴリラとRS50が先頭を走った。

 少し遅れて虎柄のディオとジョグとヴェルデ。

 殿をプレスカブとジャイロXが務めた。


 七台が、笠寺の路地から出ていった。


   *


 アハロを出て三日後。


 東京。目黒。


 ブリリアタワーズ目黒の前に、七台が並んだ。


「本当にここで合ってますよね……?」


「間違いなかよ。ちゃんと住所は合っとるもん。ここの最上階たい。ピンポン押してみよっか?」


 くま子がインターフォンを押した。

 オートロックが開いた。


   *


 最上階の部屋で、ミーハーが待ち構えていた。


「くま子! 久しぶり!」


「ミーハー! ほんのこて、どぎゃんしとったと!? 久しぶりなか〜っ!」


 一同が部屋を見渡した。


 達磨だった。


 様々な大きさの高崎達磨が、あちこちに飾られていた。

 どの達磨の瞳にも、( ︵ ︵ )ニッコリとした目が入れられていた。


 アプリが、静かに立ち上がった。


「俺たちは先に宿に戻る……」


「うちらもせっかく東京まで来たんやし、原宿とか行ってくるわ……。この家……っちゅうか……いや、なんでもない……」


 アプリを追いかけるようにトラ子とユッタとセイラが小走りでタワマンから出ていった。


 ミルミルだけは、達磨寺の目の前に住んでいるためか、全く動じていなかった。


「ミーハーさん、随分と高崎達磨を気に入ってくれたのね? 本当に嬉しいわ〜」


「やっぱり達磨は高崎達磨よね! 凄く良いの! 高崎産は!」


 くま子が、本田へ耳打ちした。


「本田くん……高崎達磨ってなんなん? そいどん、どぎゃんしてミーハーは、こぎゃんたくさん達磨ば集めとっと? キャノンボールの終わってから、いったい何があったと……?」


「皆でミルミルさんの家に遊びに行った時に、ミルミルさんの家の目の前にある達磨寺でハマったみたい……」


 くま子が、話題を変えようとミーハーへ声をかけた。


「そいぎんたミーハー! JRのCMば見たよ! 凄かよね! いきなりJRのCMとか、ほんのこて売れっ子になったたいねーっ!」


「E235系は山手線・横須賀/総武快速線、E233系は中央線・京浜東北線・埼京線なんかで使われてるでしょ? これらは全部kawasakiなのよ! 私がkawasakiに乗ってるからってkawasakiがスポンサー契約してくれたのよ! これがkawasakiなの! SUZUKIのOEMとか必要ないのよ! kawasakiは都内にどれだけ貢献してるか知れば、鈴菌なんて泣いて謝って来るわね! 私にはkawasakiがいる限り、JRのCMは私が死ぬまでずっと私なの!」


 ( ︵ ︵ )ニッコリ達磨に囲まれたタワマンの最上階で、ミーハーがキャノンボールを走っていた頃と全く同じ熱量でkawasaki信仰を語っていた。


 くま子もミルミルも本田も、なんだか安心した。


 本田がくま子に耳打ちした。


「鈴菌さんを誘わなくて良かったね」


「ん。ミーハーと鈴菌さんは、混ぜ合わせっとは絶対ダメたい! どぎゃんしたっちゃ、会わせたらいかんバイ!」


 三人は様々な( ︵ ︵ )ニッコリ達磨に囲まれながら、ミーハーとの再会を楽しんだ。


   *


 同じ頃。


 中目黒のジンギスカン ふじや。


 アプリとチャンプが、久しぶりに向かい合っていた。


「確かにそれは興味深い話ですね……」


「記事にするのか?」


「残念だけど記事には出来ないなぁ。でも、小説としては面白いかもね。幕末は常に人気あるジャンルだしね。ウチの出版社は小説部門もあるから、担当に話してみても良いかな? 本当に私がこの事を書いても良いの?」


「小説になるなら、好きにすればいいさ。証拠の手紙はアハロのコックが持ってるはずだ」


「はい。近々、顔だしてみますね! まあ、アプリさんの話だけでも、かなり小説書く上では役に立ちますよ。スマホに残ってる映像も見事だし! それにしても、龍馬の脱藩をアプリさん達が成し遂げたなんて凄い事だと思いますよ! からくり馬があったからこそ龍馬は旅立つ踏ん切りがついたんでしょうね!」


「そうかもな。二十八歳までニートをしていたやつが、旅立つって事は本当に勇気のある行動だと思う」


 チャンプが、ノートに何かを書いた。


 しがない雑誌社のライターが、幕末の物語を書こうとしている。


 それが、今のチャンプにとって一番やりたいことだった。


   *


 アプリのスマホが鳴った。


「どうした?……あぁ、今は中目黒だ。……ふじや……。あぁ」


 電話を終えて、チャンプへ頭を下げた。


「すまん。今から子供らがここに合流したいそうだ」


「あぁ、マスツーリングの仲間かい? 小説のネタを頂いたんだ! 私が奢るから遠慮せずにどんどん呼びなよ!」


 数十分後、トラ子とユッタとセイラが飛び込んできた。


「アプリのオッサン! えらい豪華な晩メシ食うてるやんけ! うち、ジンギスカンなんて食うたことないわ! うちらも食うてええのん?」


 チャンプが、笑顔で追加のオーダーを入れた。


 東京の夜が、更けていった。


   *


 翌朝。


 日本橋。


 朝日が登り始めた橋の上に、七台が集まった。


 日光街道へ向けて走り出す前に、二人が見送りに来ていた。


 AV50に乗ったミーハーと、ペリカンジョグに乗るチャンプだった。


 ミーハーのジェットヘルメットは、見事な達磨柄に塗装されていた。

 達磨の瞳は、全てニッコリしていた。

 皆の旅立ちを、微笑んで応援しているように見えた。


 チャンプは、そのヘルメットから視線を外していた。


「行ってらっしゃい!」


 ミーハーが言った。


 七台が、日本橋を走り出した。


 ニッコリ達磨が、その後ろ姿を見送った。


 小説の最初の一行を、チャンプはまだ書けていなかった。

 でも、今なら書けそうな気がした。


 七台の排気音が、朝の東京に消えていった。



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