【番外編 reverse 3 どんぐりの仲間たち】
大阪池田。
喫茶どんぐり。
くま子と本田とアプリの三人が、ランチを食べていた。
「こぎゃんレトロな喫茶店ばようなお知っとったね。前にも来たことのあっと?」
本田がサンドイッチを食べながら答えた。
「うん。僕はえっと……三度目かな?」
「ゆっくりしていってね」
女将さんが、コーヒーのお代わりを持ってきた。
その時だった。
店の前に、派手な虎柄のディオと黒のジョグが並んだ。
ドアが、勢いよく開いた。
「アプリのオッサン! よく来たな!」
トラ子とユッタとセイラが、どんぐりの中へ飛び込んできた。
「誰?」
くま子が呟いた。
トラ子とユッタがアプリの両隣に座った。
セイラがユッタの隣に座った。
本田が、くま子に紹介した。
「この三人は旅で知り合った三人だよ。トラ子とユッタと……えっと……この子だけ知らない子!」
一人だけ名前を呼ばれなかったセイラが、改めて自己紹介した。
「角島のセイラです。初めまして」
「アプリのオッサン! ようまた大阪池田まで来てくれたなぁ! ユッタが昨日からオッサン、オッサン、ホンマうるさかってんで。今夜こそユッタ抱いたってや!」
トラ子がアプリをユッタへ押し込んで、二人を密着させた。
くま子が、呆れて呟いた。
「オッサン! 未成年保護条例違反ばしよっとじゃなかね! オッサンのそばにおったら、本田くんまで悪影響の及ぶバイ! 本田くん! アプリさんとつるみなんな!」
六人が、笑った。
女将さんも、微笑んでいた。
*
一同はどんぐりの女将さんに別れを告げて、走り出した。
先頭はアプリとくま子。
少し離れてトラ子とユッタとセイラ。
さらに遅れて、本田が殿を務めた。
アプリリアRS50とメッキのゴリラが、イナイチを北上していく。
虎柄のディオと黒いジョグと白いヴェルデが続く。
プレスカブが、マイペースで後を追う。
*
道の駅伏見で休憩を取った。
六人が、缶コーヒーを飲んでいた。
「ここは伏見って言うんだね。今年からは日ハムの伏見が阪神に行っちゃったのが本当に悲しいよ」
「ホンマ、日ハムは頭イカれてんのか? 正捕手ばーんってトレードで出すとか、甲斐出したホークスみたいにボロボロ崩壊すんの分かってへんねんなぁ。アホちゃう?」
「甲斐の話はよせ! 本当に頭に来る!」
ユッタの顔が、みるみる青ざめていった。
「もう野球はこりごりなのよ……」
セイラが、ユッタの背中をさすっていた。
くま子が、キョトンとしていた。
*
大津で琵琶湖の南端が見えた。
栗東を過ぎると、鈴鹿峠へ向けて登りが始まった。
六台が、深い緑の中をカーブを描きながら登っていく。
RS50が唸った。
ゴリラのツインカムが回った。
プレスカブが、淡々と登った。
峠を越えると、伊勢平野への下りが始まった。
*
四日市の工業地帯に入った。
夕方の光に照らされたコンビナートが、左右に広がっていた。
巨大なプラントと煙突が、夕陽の中に黒くシルエットを作っていた。
六台の小さな原付が、その景色の中を走り抜けていった。
*
木曽三川に差し掛かった。
揖斐川、長良川、木曽川を渡った。
水面が広く、空が広かった。
橋の上から、どこまでも続く水と光が見えた。
本田が走りながら思った。
(池田から、ここまで来たんだ)
*
十八時過ぎ。
名古屋市南区、笠寺。
笠寺観音の門前町の灯りが見えてきた。
名鉄笠寺駅の明かりが見えた。
六台が、アハロの前に並んだ。
*
アプリリアRS50。
HONDAゴリラ。
HONDAディオ。
YAMAHAジョグ。
SUZUKIヴェルデ。
HONDAプレスカブ。
六台が、夕日に照らされて並んでいた。
大阪を走った。
幕末も旅した。
四国を回った。
角島まで走った。
熊本から関門を越えた。
それぞれの旅の埃を積んだ六台が、今、同じ場所に並んでいた。
原付たちが、得意げに輝いていた。
笠寺観音の鐘が、遠くで鳴った。
六人が、アハロの扉を開けた。




