11話 翌朝
ぐっすりと眠り、ふと目覚めた。
コロリと転がり仰向けになって、一番最初に私の視界に入った古風なベッドの天蓋をジッと見つめる。
「……っ⁉」
(アレは何かしら?)
バーンウッド伯爵夫人の部屋のベッドには、天蓋なんて無い。
――私は見慣れない場所で寝ていた。
自分が置かれている状況が掴めず、しばらく固まっていると……不意に前夜のことを思い出し。私はガバッ! と身体を起こした。
昨夜。嫁ぎ先の伯爵邸から実家のガーメロウ邸へ行く途中。私たちは突然、四人組の男たちの襲撃を受け、命の危険にさらされた。
『アデル、このままガーメロウ邸へ帰るのは危険だ。襲撃が失敗したと分かれば明日にでもピエールが、夫の権利を主張して妻のお前を連れ戻しに来るはずだ』
昨夜の襲撃を企んだのが私の夫ピエールなら。クロヴィスの言う通り私を連れ戻しに来る。……そして私は間違いなく殺されるか、どこかに監禁されてしまうだろう。
『そんな! だったら別邸へ行きましょう、クロヴィス!』
『いや、別邸ではすぐに、ピエールに見つかってしまう。……だからオレの実家へ行こう! あそこで時間稼ぎをして、その間にこれからの対策を練るんだ』
夫のピエールも別邸の場所を知っている。ガーメロウ邸にアデルがいなかれば、とうぜん別邸まで捜しにくるだろう。
『クロヴィスの実家⁉ で、でも……あなたはお父様に絶縁されているのでしょう?』
『お前を守るためだ。オレが頭を下げて何とかするさ。少しだけ居心地が悪いかもしれないが……お前の命には代えられない』
「……」
(クロヴィスが私のせいでお父様に責められ、追い払われるのではないかと心配したけれど)
私たちがこのお屋敷に着くと、クロヴィスのご両親は深夜にも関わらず、この客間を用意して受け入れくれた。
そして私を自分の実家に預けたクロヴィスは、捕まえた襲撃犯たちを引き渡した王都騎士団(王都の治安維持を守る騎士団)の本部へ出かけてしまった。
襲撃に関する情報を聞きに行ったのだ。
ベッドを下りて裸足のまま窓際に行き、光を遮る分厚いカーテンを端に寄せて窓を開く。朝の陽射しを浴びながら、私は清浄な空気を胸いっぱいに取り込んだ。
「ボンヤリしてはいられないわ。クロヴィスは夜通し私のために走り回ってくれている。私もやれることをしなければ!」
(昨夜、襲撃されて良く分かったわ)
――命を狙われて危険にさらされるのは、私一人ではないと。私を守ろうとするクロヴィスやドニの方が、私よりも何倍も危険なのだ。
私とピエールの夫婦の問題は、けして私個人の問題には留まらず。周囲の者たちを巻き込んで起きている。
祖父を亡くした悲しみに暮れ、何もしないで立ちどまっていたら……遺産だけではなく、自分の命と一緒に大切な人たちまで失うかも知れない。
使用人たちの詰所で鐘がなるしくみの、壁ぎわに垂れさがる紐を見つけて引き。私は着替えを手伝ってもらう使用人を呼んだ。




