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多摩の土手と、四葉の約束  作者: Fos B


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番外編:【ガラスの城の冷徹】

俺には妹が2人いる。俺は長男だ。

物心がついてから、父親は「自分が本当は医者になりたかったのに、おじいさんが破産してしまってせっかく大学に受かったのに諦めるしかなかった」と、自分ができなかった分を俺に押し付けてきた。

「将来はいい大学に入って成功しろ。自分が叶えられなかった夢を叶えろ。医者じゃなくていい、弁護士になれ。それで理不尽な奴らをやっつけてやれ」

父親はことあるごとに、そんなプレッシャーを俺にぶつけてきた。母親は母親で、ここは東京なのに田舎の生活習慣をそのままにして、「長男だから、長男だから」と、さらに俺を縛り付けた。

いくら妹たちと比較して自分が優遇されていようとも、その重圧は狂いそうになるほど耐えがたいものだった。

1番下の妹は、俺から見てもずる賢く、嫌な性格をしている。俺はなるべく関わらないように、見ないようにしているんだけど、母親はなぜかそんな妹の本性が見えないのか、やたらめったらに可愛がって甘やかしている。

すぐ下の妹は、いつも何かに怯えていて、見てるだけでイライラする。母親にもいいように使われ、父親にも一見かわいがっているふうに見えて、言うことがそのたび変わるおかしな父親のターゲットにされている。それに加えて、学校ではクラス中から詰められ、先生にもターゲットにされているみたいだ。

俺の友達がそんな噂話をしてきても、俺の心は微塵も動かなかった。

『自分がこんなに追い詰められているのに、なんで他人のことまでかばってやらなきゃいけないんだ? 自分のことは自分で守れよ、人を頼るなよ。俺のことは誰が守ってくれるんだ?』

だから、俺は「見てみないふりをしている」という自覚すらもう持たないようにした。勝手に周りが演じているドラマの中で、自分は名前もない脇役で、ただの通行人なのだと思い込むことにした。そうでもしないと、やってられなかった。

ずっとこういう息の詰まる状況が続いていたけれど、俺は大学に受かった。そして、わざと家から遠く離れられるような大学を選んだ。

父親が満足するような、母親が親戚や友達に自慢できるような大学を選び、その代わり仕送りも授業料も小遣いもすべて払わせた。大学を卒業したら、二度と家には戻らない。今までの精神的慰謝料だと思えば、これぐらいの投資は向こうにとっても安いものだろう?

「あとは妹たち2人で勝手に犠牲になってくれ」と思っていたら、すぐ下の妹が高校に入ると同時に、自ら家を出て行った。奨学金とアルバイトでやっていくのだそうだ。

――馬鹿だな。高校ぐらい、親にガッツリ慰謝料代わりに金を出させればいいのに、そんなに我慢できなかったのか。そういうところが甘いんだよ。世の中、頭が賢い奴が一番うまく立ち回れるんだ。1番下の妹を見習えよ。

まあ、俺にはもう関係ないけどな。そう冷めて、俺は家を出て行った。

もう干渉されないように、成績はある程度とって、ほどほどに連絡を入れた。「勉強が忙しくて帰れないんだよ」と嘘の言い訳をして、親はそれを簡単に信じるんだから、やっぱり馬鹿だなと思う。

すぐ下の妹はもうとっくに誰も連絡が取れない状況だし、まあ生きてるか死んでるかなんて知ったこっちゃない。勝手にやってくれ。俺は俺の問題だけで精一杯だからさ。

卒業と同時に、俺は家族と完全に連絡を断ってやった。

今、一番下の妹がどうなっているかは知らないけれど、まああのずる賢さなら、どこかでうまいことやってんだろう。

せいぜい、勝手に楽しい人生を送ってくれよ。俺は俺で、やっと手に入れたこの自由な世界で、誰にも縛られずに生きていくからさ。


《※今後、別の家族視点も書く予定なので、あえて完結状態のままにしておきます/不定期で追加します》


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