第36章:魔術の授業(その三)
「よし、それじゃあ、あなたの体に本当に魔術回路があるかどうか確かめましょうか」
ディナはゆっくりと座っていた場所から立ち上がった。ドレスについた見えない埃を払うように軽く叩き、頷きながら僕を見た。
その言葉を聞いて、足にバネがついたように跳ね起きた。僕は大興奮で空中に両拳を突き上げた。
「よっしゃあ! ついに僕が魔術師かどうか証明する時が来たぞ!」
「そんなに嬉しいの?」ディナは片手で口元を覆い、僕の子供っぽい無邪気な反応を見て指の隙間からクスクスと笑いを漏らした。
「もちろんですよ、先生! もし僕が魔術師じゃなかったら、将来の計画も、さっき先生が教えてくれた難しい理論も、全部無駄になっちゃうじゃないですか」
「へぇ? リアムはもう将来の計画まで立ててるのね? 偉いわ、偉い偉い」
ディナの柔らかい手が僕の頭に乗せられた。彼女は僕の金髪を優しくくしゃくしゃと撫で回し、誇らしげな笑顔を向けた。
「当然です。男なら、自分の未来の道は自分で決めなきゃね」僕は胸を張り、少し生意気で誇らしげな表情を作ってみせた。
『それに……前の人生みたいに後悔するのはもうごめんだからな』
『大学に行って、教室に座って、そして帰るだけ。教授が言ってる内容が頭に入ってるかどうかなんて全く気にもしなかった。卒業した後に自分が何になるかなんて一度も考えずに、ただ日々をやり過ごしていた。ここであんな間違いを繰り返すつもりは絶対にない』
「でも安心して、リアム。心配しすぎよ」ディナは胸の前で腕を組んだ。
「あなたはエルフだもの。間違いなく魔術回路を持っているはずよ」
「エルフといえば魔術、ってことわざもあるくらいだからね」
「あなたはハイエルフじゃなくて普通のエルフみたいだけど、それでも魔術回路を持っている確率はものすごく高いわ。それはなぜかというと……?」
ディナは小首を傾げ、僕の答えを促すようにわざと途中で言葉を切った。
「エルフの種族は、人間と比べて魔術の才能に目覚める確率がはるかに高いからです」
僕は迷うことなく言葉を引き継ぎ、完璧な正解を答えた。
「ちゃんと私の説明を聞いてたみたいね」ディナは満足そうに目を輝かせた。
「当然です。ディナ先生の言葉は一言も聞き逃していませんよ。黒の森で初めて出会ったあの瞬間から今まで、先生の言ったことは細部に至るまではっきりと覚えていますから」
僕は背筋を伸ばし、自信に満ちた目で彼女を真っ直ぐに見つめた。
『ちょっと待て。今のはなんだ!? くそっ、恥ずかしい! なんで僕の口から急に、そんな安っぽい口説き文句みたいな言葉が出てきたんだ!? ディナに変なガキだって思われたらどうするんだ!』
「そう言ってもらえてすごく嬉しいわ」ディナは再び頷き、その頬はほんのりと赤く染まっていた。
『ディナ先生は……地球にいた頃に知っていた女の人たちとは、全く違うタイプの女性だな』
『美しくて、性格も振る舞いもとても優しくて親切だ。戦闘でも頼りになるし、料理もできるし、頭も良くて、いつも思いやりに溢れるオーラを放っている。ライトノベルからそのまま飛び出してきたような、絶対的なメインヒロインの定義そのものだ』
「はい、これ」
ディナはローブのポケットを探り、僕の顔の前に真っ白な一枚の紙を差し出した。
僕は彼女の手からその紙を受け取った。眉をひそめながら、それを指で裏返してみる。
『どこからどう見ても、ただの普通の紙だよな? まあ、ディナの本のくすんだ紙や、冒険者ギルドの掲示板に貼ってあったボロボロの依頼書と比べると、手触りはかなり高級な感じがするけど』
『でも……先生がこんな白紙を僕に渡してどういうつもりなんだ?』
「あなたの手に持っているのは『魔術紙』よ。主な機能は、その人が魔術回路を持っているかどうかを検出するための触媒ね」
『はぁ!? このコピー用紙みたいなただの紙で、魔術の才能を測るのか?』
『これは完全に予想外だ! ファンタジーの世界なら、もっとそれらしい測定方法があると思ってたのに。例えば、光る水晶玉に手を置いたら、空中に青いホログラムパネルがドラマチックに現れて、ステータスや戦闘力の詳細な数字がズラッと並ぶとかさ』
「どうしたの? なんで急にそんなにがっかりした顔をしてるの?」ディナは小首を傾げ、僕の反応に困惑していた。
僕は痒くもない後頭部を掻いた。
「あ、いや……魔術師になれる才能を調べるには、ガラスの魔球みたいな魔道具を使うのかなって思ってて。それに手のひらを当てると、青い光のパネルが投影されて、自分の力の詳しいステータスが数字で表示されるとか、そういうのを想像してたんだ」
「リアム……あなたの想像力って、本当に豊かで果てしないのね」ディナは再び口元を隠し、お腹の底から湧き上がるような笑いをこらえていた。
「そんな手順、あるわけないじゃない。あなたが説明したような魔道具は、この世界には存在しないわ。それに、もしそんな高度な道具があったとしても、値段が高すぎて私には絶対に買えないもの」
ディナはゆっくりと首を振った。
「それに、私が魔術師として知る限り、人の潜在的な力が数値化されてステータスとして表示されるなんて話、聞いたことも見たこともないわ」
「そうなんですね……」僕は短くため息をついた。ゲーマーとしての期待が現実によって打ち砕かれ、少しがっかりした。
「それじゃあ、この紙の仕組みはどうなってるんですか?」僕はその白い紙を空中で振り、小さなカサカサという音を立てた。
「やり方はとても簡単よ。その紙の繊維の中に、あなたの魔力を流し込むだけでいいの」
僕は眉をひそめた。
「どうやって流し込むんですか?」
「精神を集中させて。体内の血管を流れる温かい水の流れを想像するの。そして、その想像上の水の流れを、今手に持っている紙に真っ直ぐに向かわせるのよ」ディナは真剣な口調で指示を出した。「もしこの基本的な視覚化に失敗して、紙が何の反応も示さなかったら、それはあなたが魔術回路を持っていないという絶対的な証拠になるわ」
「この紙は反応的な機能も持っていて、あなたが持っている基本属性に合わせて物理的な状態が変化するのよ」
ディナは一つずつ、その確率について段階的に説明し始めた。
「もしあなたの生まれ持った基本属性が『水』なら、紙はずぶ濡れになるわ。もし『火』なら、黒焦げに燃える。もし『土』なら、テクスチャが崩れて泥のようにドロドロになる。もし『風』なら、紙は真っ二つに切り裂かれるわ」
彼女は少しの間言葉を区切り、僕がその情報を吸収する時間を与えた。
「次に……もし『雷』なら、紙は硬くしわくちゃになってから黒焦げになるわ。もし『光』なら、紙は丸まってボール状になり、明るい光を放つ。そしてもしあなたの属性が『闇』なら、紙は跡形もなく塵となって崩れ落ちるわ」
「それから、もしあなたが派生属性を持っているなら、紙はその派生属性の特徴を表す視覚的効果を生み出すわ。もしあなたの才能が『治癒魔術』なら、紙の繊維から小さな木の芽が生えて、魔法的な再生効果を示すのよ」
ディナは小さく息を吸った。
「もしその九つの反応のどれも起こらなかったら……残念だけど、あなたは魔術回路を持っていないということになるわ」
「待ってください、先生みたいに複数の属性を持っている場合はどうなるんですか? 使用者が二重属性を持っていると、紙はどう反応するんです?」僕は好奇心に駆られて尋ねた。
「二重属性の場合、紙の物理的な反応は、使用者が持っている属性の数に比例して分割されるの。実際に例を見せてあげるわ」
ディナは僕の握りからその白い紙をそっと引き抜いた。
僕はディナが持っている紙に集中して目を向けた。
シュォォォッ!
突然、僕の目の前で魔術的な現象が起きた。風も火の気もないのに、白い紙の半分が、まるで見えないカミソリで切り裂かれたかのように、鋭い風切り音とともに綺麗に切断された。同時に、残りの半分は一瞬にして炎に包まれ、赤く燃え上がって灰になった。
ディナは残った紙の灰を草原の風に吹き飛ばし、僕を見つめた。
「ね? 今自分で見たでしょう?」
『なるほど……』
『理論上はすごく簡単そうに聞こえる。ただ自分の魔力をこの紙の繊維に流し込むだけでいいんだ。でも、実際にやるとなると全く別の話だ! ディナはこの紙に向かって動く温かい水を想像しろって言ったけど、僕の脳はまだ、血管の中でそんな神秘的なエネルギーを「感じる」方法を理解するのを拒絶している!』
僕はディナから新しい魔術紙のシートを受け取った。
両手でその紙の両端をしっかりと握りしめ、中央の何もない白い空間にすべての意識と視線を集中させた。極度の集中で顔がこわばる。
『集中しろ、リアム。集中だ。目を閉じて、感じるんだ。
そのエネルギーを想像しろ。勢いよく流れる温かい川を視覚化するんだ。ファンタジー小説の主人公たちが魔法を唱える時、どんな風に想像していたかをそのまま実行しろ! エネルギーを引き出して、押し出すんだ!』
ドクン。
心臓の鼓動が、一拍だけ遅くなったように感じた。
突然、奇妙なくすぐったいような感覚が左胸から這い上がってきた。胸郭の中で「何か」が目覚め、野生的に動き始めるのを感じた。
科学的な理屈でそれをどう説明すればいいのかは全く分からない。しかし、僕の直感が反応していた。その「何か」は生きているように感じられ、心臓から激しく送り出される温かい血流のように僕の神経経路を這い上がり、腕の組織を通り抜け、最後には紙を握っている指先へと流れ着いた。
「わあぁ……」
息が喉に詰まった。僕は極限まで目を見開き、今まさに手の中の紙に起きている不条理な現象を、信じられない思いで見つめていた。
目の前で、ディナが少し開いた口を片手で覆った。彼女の緑色の瞳は大きく見開かれ、隠しきれない驚愕の色を放っていた。
「私……リアムが私と同じように、少なくとも二重属性は持っているだろうとは予想してたわ。でも、まさか三つの属性を同時に発現させるなんて……? エルフという種族の生まれ持った才能、本当に侮れないわね」ディナが呆然と呟く。
僕はディナの驚嘆の呟きを無視した。
僕のすべての五感、すべての注意は、手の中の物体に完全に向けられていた。目は涙で潤み、溢れんばかりの感情の渦で満たされていた――爆発するような喜び、純粋な幸福、魔術の才能を持っていたという安堵感、そして魔術の奇跡に対する畏敬の念。
手のひらの魔術紙は、劇的にその姿を変えていた。正確に言えば、同時に三つの異なる物理的反応に分かれたのだ。
三分の一は鋭く切り取られている。もう三分の一は炎に包まれて黒焦げになっている。そして最後の三分の一は、まるで水の入ったボウルに浸されたかのようにずぶ濡れになっていた。
『信じられない! 僕……成功したんだ!』
『僕には本当に、三つの基本属性が同時に備わっていたんだ……火、風、そして水!!』
「それじゃあ、先生……この才能の使い方を教えてください」僕は熱意でまだ少し震えている両手を強く握りしめながら懇願した。
「ええ……あなたが魔術回路を持っていることが確認できたし、しかも三つの属性を同時に持っているんだから、その力の使い方を教えるわ」
「水属性については、私はそこまで得意じゃないんだけど、基礎魔術くらいなら分かるわ。昔、魔術学校で少しだけ学んだことがあるから。だから、水属性については私にあまり期待しすぎないでね」
『魔術学校?』
「分かりました、先生」
「偶然にも、あなたは私と同じ二つの属性――火と風――を持っているわ。私はその二つをかなり使いこなせるけど、中級レベル止まりよ。最近は、学校にいた頃に比べて魔術の能力を上げる練習をあまりしていないから」
「まずは、魔力操作から教えるわね」
「魔力操作?」僕は眉をひそめて小首を傾げた。
「そうよ。魔術師の最も基本的な技術を教えるわ」
「さっきあなたがやったこと――紙に魔力を流し込むこと――それも魔力操作の一種なのよ」
「先生、この魔力操作の技術って、本当にそんなに重要なんですか?」僕は眉をひそめ、抑えきれずに半ば不満げな声を出してしまった。
「もしそんなに重要じゃないなら、この部分は飛ばしてくれませんか?」
『正直に言うと、早く先生がいつもやってるみたいに、火や風を出す魔術を学びたいんだ』
僕のせっかちな態度を見て、ディナは深くため息をつき、肩を落とした。
「聞いて、リアム」
「この技術を習得しなければ、魔術は使えないわ。魔力操作は魔術師の土台なの。これがなければ、あなたが魔術の呪文に注ぎ込む魔力は制御不能になってしまう」
「制御不能な魔術は非常に危険よ――使用者にとっても、周囲の人々にとってもね。攻撃の方向をコントロールできなくなるし、それは数ある結果の一つにすぎないわ。だから、この技術は絶対に学ばなければならないの」
『……なるほど。この技術が魔術師にとってこれほど重要だとは知らなかった』
「先生、この技術を甘く見ていてすみませんでした」僕は少し頭を下げ、耳の先が恥ずかしさで熱くなるのを感じた。
「大丈夫よ」ディナは頷き、片方の口角を薄く上げた。
「じゃあ、あなたに一つ質問があるわ」
「あなたにとって……魔術って何?」
僕は一瞬言葉に詰まった。
『魔術とは……何か?』
『現象を現実にすること――科学的には不可能かもしれないことを、超自然的な手段を使って達成すること?』
『たぶん、そんな感じだよな?……』
僕の困惑した表情を見て、ディナは長いため息をついた。
「魔術とは、人間や他の種族が、本来なら自然に起こるはずのない自然現象を操作し、創り出すことを可能にする能力よ」
「それが魔術と呼ばれるものよ」
「魔術を使うためには、魔力が必要なの。そしてすべての生き物――『アンデッド』のような死んだ生き物でさえも――魔力を持っているわ」
「魔力はこの世界のどこにでも存在するエネルギーよ。空気中にも、土の中にも、海にも、山にも、砂漠にも、そしてすべての生き物の体内にもね」
ディナはゆっくりと手を動かした。彼女の指は、開けた空気と僕たちの頭上の広い空を指し示し、そのエネルギーがいかに無限に僕たちの周りを流れているかを表現しているかのようだった。
「もし人が魔力を使い果たせば、その人は死ぬわ」
「もし人が魔力を持たずに生まれれば、空気中の魔力による魔力中毒で死んでしまうの。普通に空気を吸うことができないのよ。生き続けるためには、特殊な魔道具を使わなければならないわ」
「そういう人っているんですか?」と僕は尋ねた。
「いるわ。稀だけどね。でも、確かにそういう人は存在するの」
「それはすごく不運な運命ですね」
それを聞いてディナは一瞬黙り込んだ。
「説明を続けるわね」
「私たち魔術師は、体内にある魔力を使って魔術を具現化するの――魔術回路を通して送るのよ。魔術回路は橋渡し役として機能し、魔力を魔術現象に変換するの」
「だから魔力操作は重要なの! この技術をマスターすれば、こんなことだってできるようになるわ……」
ディナは突然振り返り、僕たちを覆い隠している巨大な木の幹へと歩み寄った。僕は体を捻って彼女を追った――
――そして次の瞬間、僕は信じられないというように目を見開いた。
「うわっ」
「どう? 凄いでしょ?」
「ただ凄いだけじゃない――これは狂ってるよ!」
僕は飛び起き、木に張り付いて立っているディナから目を離せなかった。まるで重力を無視することが彼女の自由であるかのように。
「どうやってそんなことしてるの!?」
『クソッ、カッコよすぎる! じゃあ、魔術を使えば、スパイダーマンみたいに壁を這ったり歩いたりできるのか!? この世界には物理法則の限界なんてないのか!?』
「魔力操作を使えば、こんな風に張り付いて歩くために、足の裏に魔力を流し込むだけでいいのよ」
ディナは静かに上に歩き出し、幹から枝へと移動し、まるで平らな地面に立っているかのようにリラックスしてそこに立っていた。
「それに、魔力操作を使えば、走る速度を上げたり、体への攻撃ダメージを和らげたり、暗闇でも物体をはっきりと見たり、敵の感知から自分の気配を隠したり、物理的な攻撃力を強化したり、水の上を歩いたりすることもできるのよ」
「それらはすべて魔力操作の利点よ。武術を使う者にとっても主要な教訓の一つだわ。ガレンだってこれらすべてできるのよ」
「つまり……」僕の声が弱まり、新たな認識が脳裏に浮かんだ。
「……だからあなたたちは、あの時何時間も走った後でも全く疲れているように見えなかったのか」
「これで説明がつくよ、どうしてゴブリンの巣にいた時、暗闇の中で敵がはっきりと見えたのかも!」
「全部、この魔力操作の技術のおかげだったんだね?」
「その通りよ」ディナは頷いた。
『そうか、今まで僕についてこられるように、わざと速度を落としてくれてたんだな。そしてあの暗視能力――あれはこの世界の人間が生まれつき持っている自然な身体能力だと思ってた。でも実際は……すべてこの技術のおかげだったんだ』
ディナは木の枝から飛び降り、全く衝撃音を立てることなく草の上に完璧に着地した。
彼女は僕に向かって両手を差し出した。
「私を攻撃してみて」
「え?」
「さあ、私の腕に向かってパンチを打ってみて」彼女は自分の右腕を叩いて促した。
「私のことは心配しないで、あなたのパンチじゃ私を傷つけることはできないわ」
「でも……先生にそんなことできないよ」
「いいから、やってみて」
彼女の顔の真剣な表情を見て、僕は唾を飲み込むことしかできなかった。右の拳をきつく握りしめ、短く振りかぶって、かなり計算された力でディナの右腕を殴った。
ドスッ!
僕のパンチはまともに当たった。しかし、ディナは何の反応も示さなかった。彼女の顔は無表情で、まるでそよ風を感じただけかのようだった。
「ほらね?」ディナは満足げな笑みを浮かべ、白く滑らかな右腕を見せびらかした。
「全然痛くないし、もちろん怪我もしていないわ」
『僕のパンチが弱すぎたのか?』僕は自分の拳を困惑して見つめた。
『でもそんなはずはない。普通の人間ならこれだけ強く打たれたら痛みを感じるはずだ。僕は自分のパンチの力には結構自信があるのに』
ディナは今度、僕の胸の前に左腕を差し出した。
「今度は、この左腕を殴ってみて。さっきの最初のパンチと全く同じ力を使ってね」
何も考えず、僕は再び拳を振り上げ、同じ力を保ったまま彼女の左腕を殴った。
バシッ!
「痛っ!」ディナは小さく悲鳴を上げ、反射的に左腕を引っ込めて素早くさすりながら、痛みに顔をしかめた。
「ああ、先生! 大丈夫ですか!?」僕はパニックになり、罪悪感に満ちた顔で一歩前に出た。
「ごめんなさい! あんなに強く殴るつもりじゃなかったんです!」
「だ、大丈夫よ、リアム。落ち着いて」ディナは痛みをこらえながらも、軽く手を振った。
「これで、実際の証拠と違いを自分の目で確かめられたでしょう?」ディナは両腕を並べて僕の前に差し出した。
最初に僕が殴った右腕は、無傷できれいなままだった。一方、左腕には、痣になりそうな薄い赤い発疹が現れ始めていた。
「最初のあなたのパンチの時、私は魔力を流して右腕の皮膚組織に集中させ、物理的な耐久力を強化したの。その結果、あなたのパンチは私の防御を全く突破できなかった」とディナは左腕の赤い発疹を優しくさすりながら説明した。
「でも、あなたの二回目のパンチの時、私はこの左腕に一滴の魔力も流さないようにわざとしたの。結果は? 私の普通の腕は、あなたの物理的な衝撃からくる痛みに直接反応したわ」
「だから、もう理解できたでしょう? 戦闘の中で生き残るために、この技術を習得することがどれほど重要か」
『めちゃくちゃ役立つ技術だ』
『でもよく考えてみると……この世界の魔術師の存在って、ズルすぎないか!? 魔術の呪文を使って遠距離から凄まじい破壊力を持てるだけじゃなく、通常は近接戦闘の武術家の領域である身体強化の技術まで使えるなんて!』
僕は生唾を飲み込み、燃えるような眼差しでディナを見つめた。
「お願いします、ディナ先生! 今すぐ僕にこの魔力操作の技術を教えてください!」
「もちろんよ」
「で、でも……少し下がって、元の場所に戻って座ってくれないかしら」ディナの頬はほんのりと赤く染まり、彼女の目は僕の視線を避けた。
「顔が……近すぎるわ、リアム」
「あ――ごめん。分かった」
僕は元の場所に座り直し、先ほどの子供っぽい行動による恥ずかしさを和らげるためにゆっくりと息を吐いた。
「前に言ったように、さっき紙に魔力を流し込んだのも魔力操作の一種なのよ」
ディナは少し首を傾げ、薄い笑みを浮かべて尋ねた。
「はい」僕はゆっくりと頷き、彼女の言葉を肯定した。
突然、ある気づきが僕の頭をよぎった。
「先生の言いたいことは……そのプロセスを、自分の体の他の部分で繰り返すだけでいいってこと?」僕は身を乗り出して尋ねた。
「その通りよ。慣れるまで何度も繰り返してね」とディナは励ますような笑顔で答えた。
「最初は難しく感じるかもしれないけど、継続的に練習すれば必ず結果が出るわ」
彼女はシートの上に優雅に足を組んで座った。
「私がさっきやったみたいに、すぐに木に張り付いて歩けるようにならなくてもいいわ。まずは、特定のポイントに流す魔力の量をコントロールしようとすることから始めてみて。例えば……この手のひらにね」
ディナは手を差し伸べ、彼女よりも小さな僕の手のひらをとても慎重に握った。
「こんなに小さくて温かい……」と彼女は呟いた。彼女の親指は無意識のうちに、僕の手のひらを優しく撫でていた。
「あのう……」僕は小さな声を出し、彼女の行動を見て突然耳の先まで熱くなるのを感じた。
「あっ! ごめんなさい!」ディナは驚いてハッとした。彼女は慌てて手を引っ込め、その顔は茹でダコのように一瞬で真っ赤になった。
「そ、それじゃあ、今から練習を始めるね」気まずさを紛らわせるために、僕はどもりながら言った。
僕はすぐにシートから立ち上がり、目の前の空いている芝生へと数歩進んだ。
「覚えておいて、この結界魔術の境界から絶対に出ないようにね」ディナは声のトーンを普通に戻そうと努めながら警告した。
「分かった」僕は力強く頷いて答えた。
「ディナ先生」少し立ち止まって、僕はもう一度呼んだ。
「この練習を始める前に、一つだけ聞いておきたいことがあるんだ」
「何?」ディナは振り向き、再び集中した眼差しで僕を見た。
「ゴブリンやオークは、この辺りにもいるの? つまり、この結界の外に?」
「もちろんいるわ。ゴブリン、オーク、トロール、オーガまで……彼らはまるで害虫のように、黒の森の中だけでなく、この世界の大陸中の至る所に散らばっているのよ」とディナは説明し、僕たちの魔法の保護ドームの外に広がる広大な草原に向かって軽く手を振った。
「だから気をつけて、私が作った結界の境界線を絶対に越えないようにね」
『やっぱりそうだ。彼らの生息地は均等に分布している。黒の森での彼らの個体数がこれほど多い理由は、あの地域が人間の居住地のないエリアだからに違いない。彼らは境界近くで働いている不運な女性冒険者や民間人を誘拐するだけで、寄生虫のように平和に繁殖できるんだ』
『ディナがさっき説明したように、あの巨大な壁は黒の森からの魔物の波を抑えるために特別に建てられたものだ。それと同時に……おそらくルーシ王国の領土と黒竜の支配領域を分ける絶対的な境界線としての役割も果たしているのだろう』
『もし魔物が黒の森にしか生息していないのなら、冒険者ギルドのような組織は、その森に直接面している国境の街でしか運営されていないはずだ』
『でも、僕は以前ディナに尋ねた質問を思い出していた』
『「ディナ、冒険者ギルドってヴェニンブルグの街にしかないの?」』
『「もちろん違うわ、リアム。冒険者ギルドはルーシ王国のすべての主要都市で運営されていて、他の国々にも広がっているの。これは魔術協会の直接の庇護下にある、巨大な多国籍組織なのよ」』
『「魔術協会の庇護下に?」』
『「そうよ。この組織は、大陸全土での魔物の脅威の増加に対抗するために、魔術協会によって設立されたの。知っての通り、私たち魔術師の数は非常に少ないわ。私たちだけでこの世界にいるすべての魔物を退治するなんて不可能なのよ。だから、各国の魔術師と軍の力をサポートするために、この冒険者ギルドという組織が約五百年前に正式に設立され、世界中のすべての国の承認を得て、全世界で公式に運営されているの」』
その事実がすべてを裏付けていた。魔物の生態系は大陸全体に広がっているのだ。
僕はゆっくりと右手を前に出し、空っぽの手のひらを見つめながら、魔力のエネルギーに意識を集中させようとした。
しかし、この疑問がずっと僕を悩ませ続けていた。実際、この魔物たちの起源はどこから来ているんだ? 彼らも地球の動植物と同じような生物学的進化のプロセスを経ているのだろうか? もし自然選択によるものだとしたら、どうして進化はゴブリンのような極端な寄生種を生み出すことができたのか?
学校や大学で学んだ進化生物学の理論では、生物が適応する主な目的は、子孫を残すための効率的な繁殖を通じて種を維持することだ。寄生生物は宿主に依存するが、ゴブリンはさらに一歩極端だ。彼らの種にはメスが存在せず、繁殖するためには進化論的に別の種族の子宮を絶対的に必要とする。
自然進化の論理に従うなら、メスのいない種族は最初から絶滅しているべきだし、少なくとも血統を維持し続けるために無性生殖や雌雄同体に進化しているべきだ。しかしゴブリンは、そのような独立した繁殖機能を全く持っていない。
では、彼らの宿主の限界はどこまでなのか? 彼らが使う子宮は、人間やエルフ、亜人のような高い知能を持つ人型の種族からのものでなければならないのか? もし彼らが森にいる猿のような野生の霊長類に種を強制した場合、ゴブリンの子孫はそれでも生まれるのか? もし答えが「イエス」なら、なぜ彼らはわざわざ武装した人間を襲い、誘拐するというリスクを冒す必要があるのか?
指が強く握りしめられた。
このゴブリンどもは、本当に胸糞悪い生き物だ。あの時の巣の中の光景を思い出すだけで……純粋な怒りで再び血が沸騰する。
僕がこの国を支配し、産業革命と軍制改革を成し遂げた暁には……絶対にこの害虫どもを完全に絶滅させてやる。一匹たりとも残さず、この土地から彼らの存在を消し去ってやる。
暗く、冷たく、容赦のない笑みが、ゆっくりと僕の口角に刻まれた。
ああ。「美しい場所」を作ってやろう。奴らのためだけの特別な場所を。毒ガス室を備えた巨大な強制収容所だ。奴らをただ駆除するだけでなく、僕の科学と軍事魔術の研究のための無限のモルモットとして利用してやる。ちょうど、第二次世界大戦でナチスドイツがやったように。奴らのような道徳心を持たない汚らわしい魔物に、人権なんて笑い話でしかない。
『でも、この夢は一人では実現できない』
僕は深く息を吸い、練習へと視線を集中させた。
そろそろ、自分自身の派閥を作り始めるべきだろう。これらの計画や陰謀も、ただ頭の中にしまっておくだけでは、すべて絵に描いた餅に終わってしまう。
おそらく、明日のゴブリン掃討遠征が終わったら、その第一歩となる礎を築き始めるつもりだ。絶対的な忠誠心を育むために、現在の僕の肉体と同じ年頃の路地裏の孤児たちを雇い始めることができる。ビジネスの基盤が安定し、十分な資金ができてから、組織の規模を拡大していくつもりだ。




