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25 ヴァンパイアの特性。


「なるほど、《ゲート》から突然現れた謎の吸血鬼に、これまたいきなり噛みつかれて、お主は吸血鬼にされてしまったと、そういうわけなのだな?」


「お、おう……」


 荒唐無稽な話だと言うのに、あっさりと理解してのけたシバさんに、太平は些か拍子抜けをした。まぁ、自分自身が喋る犬なのだから、こういう常識はずれに対する対応能力は高いのだろう。反対に、イクはポカーンとした表情のまま、シバさんの尻尾をもふもふしていた。

 

「ふむふむ、確かに首筋に犬歯で噛まれたような痕はあるな……。チッ、美女に首筋を噛まれるなど……羨まし……けしからん!!」


 シバさんは太平の首筋にある微かな傷跡の臭いを嗅いで回った。


「うーむ、微かに残る美女の口臭……。これでご飯三倍は食べられるわ!! おっと、そんなことを言っている場合ではなかったな。ヴァンパイア化されたということは、太平、お主の口の中にも犬歯が生えておるわけか?」


 言われるまで気が付かなかったが、確かに太平は口の中に違和感を感じていた。大きく口を開き、歯をなぞるように指をはわせて確かめてみると……チクっと指先に刺さるような感触を感じた。急いで鏡の前に駆け寄り、自分の口の中を見てみると……そこには立派な犬歯が生えていた。

 

「なんてこった……。カッコイイじゃねえか!!」


 太平は犬歯を誇らしげにしながら、何度もポーズを取っては鏡を見つめ続けた。


「うむうむ。太平よ、お主にもわかるようだな、犬歯の素晴らしさを……」


 シバさんは太平の横で大きく口を開いては、自分の犬歯を誇らしげに太平に見せびらかす。シバさんの口臭は大層臭くて、太平は思わず顔をそむけた。

 そんな二人のやり取りの中で、一人疎外感を感じている幼女が一人。

 

「わたしには無い……。しょんぼり……」


 どれだけ口の中を探してみても、イクには犬歯などはえてはいなかった。落ち込んでしまったイクは、部屋の隅で体育座りをして、ドナドナを歌い出すという、なかなかに高度な落ち込みっぷりを発揮していた。


「さて、ヴァンパイアになったということは……」


 シバさんに邪悪な笑みが浮かび上がる。それと同時に、窓から差し込む太陽光を、何処からともなく取出した虫眼鏡で凝集させては、こっそりと太平の手のひらに向けるのだった。


 ジリジリジリ、肉が焼ける匂いが部屋中に充満する。

 それが自分の肉が焼ける匂いだと、太平が気がつくのにそれほど時間はかからなかった。

 肉の焼ける痛みに、太平は垂直に飛び上がっては、天井に頭をしこたまぶつけた。そして大急ぎで流し台で冷やしに向かうのだった。


「なるほど、なるほど。確かに太陽光に弱い」


「はぁはぁ……」


 傷を冷やし終えて戻ってきた太平の手は、既に完治していた。


「そして、脅威の再生能力を誇る。まさに、ヴァンパイアのそれだな。あとは、十字架とにんにくを試してみれば……」


「試さんでええわい!」


 おもむろにシバさんの首根っこを捕まえては、いつもの様に宙吊りにしてみせる。


「や、やめぇえい、いつもならいざ知らず、ヴァンパアの力で首を絞められたら、吾輩死んでしまうではないか!!」


「おっと……。そうか、筋力もアップしてるんだったな」


 太平は力を緩めて、そのままシバさんを床の上に下ろした。


「ゲホゲホ……。首の骨を折られるかと思ったぞ!」


「いやいや、首の骨を折られるようなことをしなきゃいいんだろうが!」


 と、そこまでいつものコント的やり取りを終えた所で、太平に急激な睡魔が襲ってきた。


「あれ、あれれれ……。なんだ、まだお昼すぎだってのに、滅茶苦茶眠くなってきたんだが……」


「まぁヴァンパイアといえば夜行性だからな、そういうもんなんだろう」


「仕方がない……。俺もとりあえず寝るとする。どっちにしろ、このルルって人が起きないことには、話が進まないだろうからな」


 太平はふらついた足取りで自分の毛布の上に倒れこむと、そのままのび太の如く即座に深い眠りに落ちていった。

 

「……」


 ドナドナをひたすら歌い続けていたイクは、眠りに落ちた太平を見ると、その横で身体を寄せ合うようにして一緒に眠りについた。といっても、イクはただスリープモードに入るだけなのだが。


「ふむ、そして吾輩だけが残ったわけなのだが……。マリ○カートでもやるか……」


 一人寂しくマ○オカートに勤しむシバさんの姿がそこにあった。 


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