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少女の生まれた王国に大好きな姉はもういない  作者: 逸斗


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出会う

共同本棚から適当に取った本を開いてみたが、文字の量に圧倒され、すぐに閉じた。それを何回も繰り返していくうちにこの時間が無駄であることに気づいてきた。暇で仕方なかった。


1週間ぐらい前、この施設から1人いなくなった。アリスという明るい女の子だ。誕生日パーティーで出会った夫婦と意気投合し、親のいなかった彼女はそのまま養子に入ったんだそうだ。突然引っ越してしまったことにもちろん困惑したが、仕方ないことだと渋々飲み込んだ。

 アリスと仲の良かったフローラはいなくなったことで暇だった。他の子もそんな調子だった。

施設の子が自由に読める共同本棚には、小さい子向けの絵本から、物語、雑誌のようなものまで様々ある。

外でする遊びに飽きてしまった私のような子供はここに溜まっていた。しかし、この施設にいる13人の子供の大半が小学校低学年から幼稚園ぐらいであるため、人はあまり多くなかった。

 別に施設の外に行ったりしてもいい。ただ、寒すぎる。ベルナルド王国の冬は足が埋もれるほどの雪が積もったりする。さすがに私にそんな中出かける気持ちはなかった。


そんなことを考えていたら30分が過ぎていた。意外と時間の流れが速くて嬉しかった。そろそろ共同本棚から立ち去ろうとしたとき、誰かに声をかけられた。久しぶりに聞く、低い声だった。


「お前さ、暇だろ?」


私は驚いてすぐに言葉を返せなかった。


「暇か暇じゃないかを聞いたんだけど」


バスターという男が話しかけてきた。彼もこの施設で暮らす子供の1人だが、ここでは珍しい15歳の中学生だ。

私は彼が話しているのを見たことがない。というか声すら聞いたことがなく、彼は自分の部屋から滅多に出ない。なんとなく存在は知っているという程度だ。


「暇…だけど。どうして?」


戸惑いながらそう返す私に、着いてこいと言うように私の顔を見たあと、背中を向けて歩き出した。


向かった先が彼の部屋だということは方向からすぐに分かった。部屋に着くと外開きのドアを開け、私を先に通してくれた。そのあと彼は念入りにドアを閉めた。お互いが腰を下ろしたとき、話し出した。


「フローラ…だっけ?お前11歳だろ?」


「そうだけど、急になに?」


「施設から出てけ」


初対面でそんなに言われて焦った。ただ、その言葉は邪魔だとか必要ないから出てけという意味でないように思えた。


「最近、12歳の女が居なくなっただろ?あの…名前は知らんが明るそうなあいつ」


アリスのことだ。


「お前は変だと思わないのか?」


私はもちろん突然引っ越すなんて変だとは思った。だが、小さい頃からこの施設で生きてきた私は簡単に他の家がおかしいなんて否定できないから、仕方ないことだと思っていた。


私の過去を探るように彼は話し始める。


「人が突然いなくなってしまう。そんな経験他にしたことないか?お前の短い人生でも何回かあるはずだ」


急にそんなことを言われて驚いた。頭に3人の顔がよぎる。


「あるけど…」


この話題の終着点がわからないまま返答した。否定したかったし、ないと思いっきり言いたかったが、どうしても頭に家族のことが思い浮かんでしまった。


「でも…私の場合急に引っ越すとかじゃない。突然の火災に巻き込まれただけなの。事故だよ事故!事故はどうやったって避けられないし、仕方ないよ!」


私の家族がよく知らない男の話に使われたくなくて早口で話した。


「確かにそれはそうだ。事故というのは仕方ないところもある」


受け入れられたことに少し驚いた。しかし、そんな思いを撤回したいとすぐ思った。


「でもそれがもし、仕組まれたものだったら?」

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